オタクはとにかく面倒くさい人種である。特に年季の入ったオタクは始末におえない。異常に古典を崇拝し、派生作品は新しければ新しいほど「本来の崇高な作品性が失せた」とか「最近の作品はただおもちゃを売りたいだけの販促番組」とか言っちゃう。
これは日本のオタクシーンにおいては、たとえば仮面ライダー、たとえばウルトラマン、たとえばガンダムを語る上で絶対に発生する問題である。特にガンオタって本当にこの傾向が強い。野球、宗教に並んで「ガンダムの話は下手にするな」みたいな風潮まで生まれるほどだ。(文:松本ミゾレ)
「ダブルオーとユニコーンは叩かれるどころか大人気じゃん」
先日、2ちゃんねるに「種以降のガンダムってだいたい叩かれてるけど基本的に面白くね?」というスレッドが立っていた。種とは2002年に放映されていた『ガンダムSEED』の略称である。これ以降もガンダム作品は次々に誕生してきたが、古くからのガンダムオタクの中には、この時期を境に「最近のガンダムは~」みたいなことを言うようになったようで。
スレッドにはSEED以降のガンダムについての擁護の声もある。いくつか紹介していきたい。
「ダブルオーとユニコーンは叩かれるどころか大人気じゃん」
「Gレコは映画に期待。毎回戦闘シーンちゃんと入れてクオリティも高かった」
「ガンダムは歴史だからなあ。起きてしまったんだから叩くこと自体が不毛」
「AGEはアニメも結構楽しめたけど、小説も結構良かった」
みたいな意見が実際に書き込まれている。これだけ見ると、「ああ、SEED以降の作品もしっかり評価されてるんだなぁ」という気になれるものだ。
SEED以降は、たとえ冨野監督が絡んでても認められないガンオタも……
一方で、スレッドの全体的な意見の傾向を俯瞰してみれば、好意的な声ばかりというほどでもない。中にはやっぱり、冒頭で書いたようなテンプレの老害めいたオタクの書き込みだってある。
そちらも挙げていこうか。
「SEED DESTINYはでっかい石が地球に落ちる辺りまではまだ良かった。フリーダムテロからはもうダメダメ」
「鉄血とAGEは最後まで見れない」「Gレコが許されたとか嘘だろ?」
「00をちょろっと観たウチの親父の感想『叫んでるばかりでつまらん』」
まあ、こっちもこっちで個人的には「分かる分かる(笑)」と言いたくなる意見もある。特筆すべきはガンダムシリーズの生みの親である富野由悠季が手がけて2014年に放映された『ガンダム Gのレコンギスタ』も軽くディスされてるところである。富野監督にも否定的なガンオタの存在というのは、いつ見ても結構な衝撃をおぼえるものである。
SNSでは、それこそ富野監督を口汚く罵っている人もちらほら見るが、毎回見かけるたびに「お前らな、そんなの言えるだけ幸せなことだぞ」と説教をしたくなる。
なんたってウルトラシリーズを生み出した円谷監督も、仮面ライダーの原作者の石ノ森氏も、随分前に鬼籍に入っている。原典を生み出した人物が今も現役で新作を作っているなんて、こんな贅沢なこともないだろうに……。
この手の争いについて書くと「じゃあお前の立場はどうなんだ」という話になるんだけど、僕の場合はもうこういう世代間の対立を何遍も見てきたので、今更参戦する気力はない。やれ「ウルトラシリーズは二期で死んだ」だの、やれ「仮面ライダーは七人ライダーまでが正史」だの、こういう話って昭和のころから続いている。終わりがないのだ。
だから僕としては本当にどうでもいい。元祖の『機動戦士ガンダム』にだって粗はあるんだし。結局こういう論争に囚われず、自室のガンプラショーケースに、ギャンとアルケーガンダムを一緒に飾れるオタク"が一番損をしないのだ。