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乃木坂46、加速するアジア進出 日本アーティスト初メルセデス・ベンツアリーナ2DAYS達成の軌跡

2019年10月27日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『夜明けまで強がらなくてもいい』(type-C)

 乃木坂46が、10月25、26日に中国・上海メルセデス・ベンツアリーナで単独ライブを開催した。収容人数1万8000人を誇る同会場では、これまでONE OK ROCK(2016年、2018年)や米津玄師(2019年)、花澤香菜(2019年)らが単独ライブを行ってきた。乃木坂46は昨年12月に上海メルセデス・ベンツアリーナで初の海外単独公演を開催。今回は2DAYSの公演となり、これは同会場において、日本人アーティスト初の記録である。


(関連:乃木坂46『真夏の全国ツアー2019』で目撃した“円熟と継承”が交差する景色


 乃木坂46が初のアジア進出を果たしたのは、2017年11月。シンガポールで開催された、約9万人動員の東南アジア最大級のJカルチャーイベント『C3 Anime Festival Asia Singapore』への出演だった。また、そのタイミングで英語圏、中華圏への情報発信を目的として、「Facebook」(英語・中国語繁体字)、「Weibo」(中国語簡体字)のアカウントを開設している。アジア進出の大きな足がかりとなったのは、同年に開催した東京ドーム公演(『真夏の全国ツアー2017 FINAL!』)の成功。『乃木坂46 meets Asia!~Singapore ver.~』(MUSIC ON! TV)の中で、東京ドームというゴールの先に見えたもう一つの夢が海外公演であると、当時キャプテンだった桜井玲香の口から語られている。


 2018年2月には香港で開催された『C3AFA HONG KONG 2018』に出演。同じく2月には、「乃木坂46公式HPの多言語化」として、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・インドネシア語・マレー語・タイ語の7言語に対応を開始した。そして、同年12月には上海メルセデス・ベンツアリーナで初の海外単独公演を、2019年1月には台北アリーナにて台湾単独公演を開催。両公演の座長を務めたのは齋藤飛鳥。ドキュメンタリー番組『情熱大陸』(MBS/TBS系)「乃木坂46・アイドル/齋藤飛鳥編」では、海外進出における齋藤の存在がいかに重要かが示されており、『乃木坂46 meets Asia! ~上海ver.~』(MUSIC ON! TV)では齋藤を支える存在に山下美月、与田祐希の2人がいたことが分かる。


 2011年、200万人を動員し大ヒットとなった台湾映画『あの頃、君を追いかけた』の日本リメイク版のヒロインを齋藤が演じた。2018年夏、映画と同時期にスタートしたのが、セブン-イレブン台湾のキャンペーンCM。乃木坂46が台北アリーナで公演を行った翌月、筆者が台湾に行った際、セブン-イレブンのレジ裏に貼られてあるタピオカのキャンペーンポスターに齋藤をメインとした乃木坂46メンバーが写っていたことに驚きを覚えた。台湾でセブン-イレブンは日本と同じくらい当たり前にあるコンビニ。台湾の電子マネーカード・icashと乃木坂46のコラボカードが1万枚限定で発売されると、1週間でその約8割が売れ、その後完売したという話もある。セブン-イレブン台湾へのCM出演は、現地で認知度を広めている大きなポイントの一つだろう。


 今年5月には齋藤がセンターを務める23rdシングル『Sing Out!』をリリース。クラップ、英語詞といったこれまでにない乃木坂46の楽曲路線に齋藤は「日本だけとは言わず、世界中で『Sing Out!』のブームが巻き起こったらいいねという願望があります」と語っている(参考:乃木坂46 齋藤飛鳥、新曲「Sing Out!」視聴会で明かした制作秘話「今までなかった楽曲の雰囲気」)。その思いは『真夏の全国ツアー2019』にも表れており、「Sing Out!」の演出ではフランス・パリのファンとの生中継映像がスクリーンに映し出された。10月には新番組『#乃木坂世界旅 今野さんほっといてよ!』(AbemaTV)がスタート。内容は伏せたものであったが、番組のスタートは『真夏の全国ツアー2019』から予告されており、「Sing Out!」の延長線上として、海外を意識したグループの姿勢が感じ取れる。


 そして、上海メルセデス・ベンツアリーナでの2DAYS公演。齋藤は自身がナビゲーターを務めるラジオ番組『POP OF THE WORLD』(J-WAVE)のコーナー「HARRY’S ENGLISH CLASS」10月19日の放送分にて、海外公演は改めて初心に返れる機会だと語り、日本語にもリアクションしてくれる現地のファンについて「近づこうとしてくれるので嬉しいですね」と話していた。


 前回の上海公演では、中国のSNS微博(weibo)にてメンバーが生放送を行ったりとフォロワーを増やす施策を行っていた。今回はメンバーによる開催までのカウントダウンとサイン入りチェキのプレゼントを実施。さらに、bilibili動画と提携して、約月1のペースで松村沙友理が生出演していた企画が、中華料理を通じて中国語を学ぶ異色の料理番組『沙友理的爱吃厨房』としてスタート。第1回のゲストに賀喜遥香、掛橋沙耶香を迎え、すでにコメントには中国語が溢れている状態だ。


 上海公演が終わった後も、現地での乃木坂46の熱狂は続く。東京で25万人を集めた乃木坂46のアートワーク展が『乃木坂46 Artworks だいたい全部展 EXTRA』として上海で11月3日まで開催。セブン-イレブン台湾のCMで馴染みの深い齋藤、秋元真夏、松村沙友理がPRを務めている。11月22日からは「乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2019」が上海で上演。乃木坂46のメンバーが主演を務める舞台としては初の海外公演である。


 アジア進出に成功した乃木坂46が、次に進む場所はどこなのか。2014年7月に初の海外イベントとして『JAPAN EXPO』に出演し、今年の『真夏の全国ツアー2019』にも登場したフランス・パリは、グループの次の現在地となる場所として有力な候補だ。「Sing Out!」の歌詞には〈水平線のその向こうは晴れてるのか? それとも土砂降りの雨か?〉という一節がある。その答えを見つけるための乃木坂46の挑戦はこれからも続いていく。(渡辺彰浩)