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平井堅、『4分間のマリーゴールド』主題歌で記録更新 ドラマを引き立たせるバラード曲の数々

2019年10月25日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

平井堅

 現在放映中の金曜ドラマ『4分間のマリーゴールド』(TBS系)の主題歌として、平井堅の新曲「#302」が起用されている。本作はキリエ原作の同名コミックの実写化。手を合わせた人の「死の運命」が見えてしまうという特殊な能力を持つ救急救命士・花巻みこと(福士蒼汰)が、ひょんなことから義姉・沙羅(菜々緒)の余命を知り、禁断の恋に落ちていく様を描く切ないラブストーリーだ。


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 そんなドラマに合わせ平井が書いた「#302」は、シンプルなストリングスのアレンジが心に沁みるミディアムバラード。自身も「“自らの身を削るほどに、焦がすほどに相手を想う気持ち”というところを共通項に、ドラマと並走するような、もう一つのラブストーリーを紡ぐつもりで書きました」と語る通り、胸を締め付けられるような切なさが楽曲のすみずみにまで満ちている(引用元:ソニーミュージック公式サイト)。タイトルの「#302」とは、カラオケボックスの部屋番号なのだろう。曲の中の“もう一つのラブストーリー”では、恋人と別れたばかりと思われる“君”と“君”に密かに想いを寄せる“僕”とのやり取りが、カラオケの小さな室内を舞台に展開する。〈ずるくてもいい 代わりでもいい 君の寂しさの一番近くにいたい〉という一節は、義姉に思いを寄せる主人公の姿とも重なり、今後ドラマが展開するにつれ一層共感を呼ぶフレーズとなるに違いない。


 平井がドラマ主題歌を手掛けるのは今作で18作目。TBSドラマでは2017年放送の『小さな巨人』の主題歌「ノンフィクション」以来、約2年ぶりのこととなる。また、本作の主題歌を務めたことで、“男性ソロ歌手として地上波ドラマの主題歌を務めた本数”が、福山雅治と並び最多となったことも発表された。いかに彼の楽曲がドラマの現場で求められているかの証だろう。


 そもそも三谷幸喜脚本で話題となった『王様のレストラン』(フジテレビ系)の主題歌「Precious Junk」でデビューを飾った平井堅。その後さまざまな作品に音楽で花を添えてきた彼だが、やはり真骨頂と言えるのがバラードだ。


 たとえば、人気コミックを実写化した医療ドラマ『ブラックジャックによろしく』(TBS系)の主題歌「LIFE is… ~another story~」。平井自身、「自分の人生観を注ぎ込んだ楽曲」と語る本作は、人間が持つ弱さと強さの両方にそっと寄り添うような歌詞が、医療現場の理想と現実に打ちひしがれながら成長していく主人公の姿ともリンクし、感動を呼んだ。『積木くずし真相~あの家族、その後の悲劇~』(フジテレビ系)では、すでにリリース済みだった「思いがかさなるその前に・・・」が制作側の強い意向で主題歌として抜擢。非行に走った娘とその両親との壮絶な人生を描いたセンセーショナルなドラマに対し、平井の慈愛に満ちた声はある意味救済の歌のようにも響き強いインパクトを残した。『JIN-仁-(完結編)』(TBS系)に起用された「いとしき日々よ」は、ヒロインの野風と咲の名を〈あなたに吹く風よ あなたに咲く花よ〉のフレーズに織り込み、ドラマとの相互関係を意識させる1曲。渾身のファルセットで歌い上げるサビは、歴史をモチーフにしたドラマに似つかわしい壮大さで視聴者を釘付けにした。さらに、中年を迎えた男女の運命の恋を描いた『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(フジテレビ系)の主題歌に選ばれたのは「half of me」。ピアノ弾き語りのシンプルなアレンジで歌われる楽曲が、切ない大人の恋愛を演出している。


 『4分間のマリーゴールド』の橋本芙美プロデューサーは、提供された「#302」に対し、「大切な人を想う、心に寄り添うこの曲のテーマが、ドラマをさらに高めてくれると確信しました」とコメントしているが、平井堅に主題歌オファーが殺到する理由もまさにこれだろう(参考:ソニーミュージック公式サイト)。彼の歌が持つストーリー性は、ドラマにさらなる“ドラマ性”を与える。特にじっくりと聴き込めるバラードは、物語の余韻を深く味わわせるにはうってつけ。語りかけるような情感を込めた歌唱スタイルは、物語の世界観を拡張し、ドラマの枠を超えて視聴者に感動を届けてくれる。『4分間のマリーゴールド』でも、そんな親和性の高さが存分に発揮されることを期待したい。(渡部あきこ)