トップへ

May J.が踏み出した挑戦への第一歩 デーモン閣下らとのコラボで見せた新たな表現

2019年10月25日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

May J.

 4月にリリースされたカバーアルバム『平成ラブソングカバーズ supported by DAM』において“平成”という時代を音楽で振り返り、新たな時代の到来を待ち構えていたMay J.。当時のインタビューでは「平成の自分を超えたいっていう期待もあるんですよね」と強い眼差しで語っていたことを思い出す(参照:May J.が語る、平成の歌を新たな時代に繋ぐこと「歌い継いでもらえる曲を生み出したい」)。その後、日本は“令和”の時代を迎え、彼女は自身の中に渦巻く期待を現実のものとするために最初の一歩を踏み出すこととなった。それが「NEW CREATION」(=新しい創造)と題された全国ツアーだ。


(関連:May J.が語る、平成の歌を新たな時代に繋ぐこと「歌い継いでもらえる曲を生み出したい」


 全11会場を巡るツアーの中で、9本目となる9月22日・Zepp Tokyo公演。1人でステージに登場したMay J.がアカペラで「Have Dreams!」のサビを歌い始める。伸びやかで美しいボーカリゼーションがライブという非日常の世界へと一瞬で誘っていく――そんな感動的な一幕を経て、「みなさん盛り上がる準備はできてますか?」という言葉をきっかけにライブ本編が勢いよく幕を開けた。フルバンドによるグルーヴィな演奏で「Be mine ~君が好きだよ~」「So Beautiful」というアッパーな2曲が届けられる。2人の女性ダンサーがステージに華を添え、間奏などではMay J.自身もダンスに参加。視覚をも刺激するライブならではのハイテンションなパフォーマンスが披露された。


 続いてのパートではアルバムでカバーした平成のラブソングたちをメドレーで。繊細な息づかいが胸を打つ「ハナミズキ」やボサノバ調の「PRIDE」、ピアノとボーカルのみで届けられた「M」、冬の凛とした空気感を一足早く歌声で表現した「雪の華」など、時を経てもなお色褪せることのない名曲たちがMay J.ならではの感性で丁寧に紡がれていく。その流れで、観客をステージに呼び込んで共に歌うというデュエット企画へと突入。これまでの公演同様、この日も客席から1人を選ぼうとしていたMay J.だったが……突如響いた雷鳴とともにデーモン閣下が降臨するというサプライズが! 東京公演だけのスペシャルなコラボで「愛が生まれた日」のデュエットが実現することとなった。閣下の情感に満ちた強い歌声とMay J.のせつなさたっぷりの歌声が融合することで生まれる極上の世界。時折、目を合わせながら歌う2人の姿を観客たちはうっとりと眺め、曲が終わった瞬間には割れんばかりの拍手喝采を送っていた。


 衣装チェンジの後は、「ロンド」「本当の恋」といったミディアムテンポの楽曲で魂のこもったボーカルを聴かせていく。「たとえ失敗したとしても、そこにも学びはある。そんな思いを込めました」と言って披露されたのは、2015年にゲーム『GOD EATER 2 RAGE BURST』のために書き下ろした「Faith」。元々は英詞で書かれた曲だが、今回は特別な日本語バージョンとして、メッセージをより鮮烈に響かせていく。続く「My Star ~メッセージ~」では自らがピアノを演奏しながら歌唱することで、音源以上にふくよかで、あたたかみのある表情が感じられるパフォーマンスを見せてくれた。


 再度の衣装チェンジを経て、ラストのパートは盛り上がり必至のキラーチューンを連発、容赦なく攻めまくっていく。艶っぽい表情を見せたファンキーなダンスナンバー「Break Free」、爽やかなサウンドに会場が心地良く揺れた「Sunshine Baby!」、客席を煽りまくった「One to Love~心、ひとつに~」ではソカのリズムに合わせてタオルが旋風を巻き起こす。「the ONE」では、誕生月で2つのグループに分けた観客たちに、それぞれ上ハモと下ハモを担当させる試みも。幾度かの練習のかいあって、本番ではまさに会場がひとつになって美しいハーモニーを奏でることに成功した。サビの大合唱が感動的な光景を生んだ「Garden」の後は、「みんなの夢を星に願いましょう!」と大きく叫び、ディズニー映画『ピノキオ』でおなじみの「星に願いを」を日本語バージョンで歌唱し、ポジティブでハッピーな雰囲気に包まれながらライブ本編は幕を閉じた。


 アンコールではこの日、ふたつめのサプライズが。YouTube上で人気のHIMAWARIちゃんねるから、まーちゃんとおーちゃん、パパがステージに登場し、May J.も含めた4人でオリジナルソング「きらきら☆シャンプー」が披露されたのだ。YouTube上ではすでにコラボ済みであったものの、ライブでの共演はこの日が初めて。まるで歌のお姉さんのようにかわいい振り付けとともに歌うMay J.の姿が新鮮だった。その後は、「Let It Go」で圧巻の歌声を響かせ、「ありがとう」であたたかな空気で会場を満たしていく。そして、「これからもみんなと寄り添いながら歩いていきたいです」と思いを告げて、ファンのために書いた「SIDE BY SIDE」でライブは大団円を迎えた。


 アップチューンからバラードまで、アーティストとしての可能性を余すことなく伝えると同時に、新たな表現にも果敢にトライした印象のある今回のツアー。それはまさに彼女なりの“新しい創造”に満ち満ちた内容だったと思う。自身をレベルアップするために最近はバレエを始めたそうだし、先日発表されたように来年2月から上演される「ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2」へ出演、女優としてデビューすることも決まった。今回掲げた“NEW CREATION”なる言葉は今後の彼女にとっても引き続き重要なキーワードになっていくに違いない。まだ見ぬ新しいMay J.との出会いを心から楽しみにしていたい。(もりひでゆき)