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悪質クレーム、10年間で24人自殺 厚労省「行政が取り締まるのは難しい」と対応苦慮

2019年10月24日 18:00  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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従業員を追い込む悪質クレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」によって、2018年までの10年間で78人が労災認定を受け、うち24人が自殺していたことが10月24日、分かった。接客業などに携わる従業員を守るため、国や企業には早急な対策が求められている。

厚生労働省はキャリコネニュースの取材に対し、

「悪質クレームは従業員の尊厳をひどく傷つけ、なかなか許せるものではない。また、精神障害や自殺に追い込むこともある。こうした"あってはならない"現実を重くうけとめている」

と語った。

「同じ内容で何度も電話がくる。『死ねばいいんですね』と言われる」


流通やサービス業などが加盟する産業別労働組合のUAゼンセンが2017、18年に実施した調査では、悪質クレームなどの迷惑行為に遭遇した人の割合は、「百貨店」(86.4%)、「家電関連」(84.9%)、「住生活関連」(80.5%)の3業種で特に高かった。クレーム対応については4割近い人が答えた「謝り続けた」が最多。また、半数近くが「迷惑行為が近年増えている」と実感しているようだ。自由記述欄では、

「同じ内容で何度も電話がくる。『死ねばいいんですね』と言われる(1回30分くらい)」
「いきなり後ろから肩をたたかれ、各売場のクレームを言われ謝ったが、同じ話を何回もくり返され、話がどんどん大きくなり、60分程度開放されず、黙って話をきく事になりました」

といった声が寄せられた。心身が擦り減ってしまうのも納得できる。

国際労働機関(ILO)は今年6月に「ハラスメント禁止条約」を採択。条約の対象に、初めて悪質クレームを含めた。警察はこれまでにクレーマーに対して不退去罪や威力業務妨害罪、強要罪などを適用し、実際に逮捕者も出ているが、依然として悪質クレームはなくならない。国内でも法整備などの対応が急がれている。

"社外"からの悪質クレーム、どう取り締まる? 年内めどに指針

厚労省雇用均等政策課によると、省内に設置した労働政策審議会ではパワーハラスメント(パワハラ)防止策を議論しており、悪質クレームなどのカスハラをパワハラの定義に含めて、一緒に対策できるかについて検討しているという。だが、

「"社内"にいる社員からのパワハラについては対応に雇用管理上の義務が生じるが、"社外"からの悪質クレームについて行政で規制するのは難しい」

と同課の担当者は漏らす。審議会の結果は、各企業に対する「望ましい取り組み」として、年内をめどに指針を発表するとしている。

産業別労働組合「組織で対応」「対処法を明記したマニュアルを」

UAゼンセンは、企業が悪質クレームから従業員を守るために取り組むべき対策について、以下の3つを挙げる。

・悪質クレームに対し、個人ではなく組織で対応するための組織体制の整備
・悪質性の判断基準と対処法を明記した対応マニュアルの整備
・クレーム対策に関する従業員教育の実施

社員間の連携を強化する対策が並んだが、それでも悪質クレームを受けつけないわけにもいかず、対応の難しさを感じさせる。同組合の担当者は

「顧客等からの悪質クレームへの対策について、事業主が具体的にイメージでき、実効性あるものとなるよう(労働政策審議会に)求めていきたいと考えています」

とコメントしている。