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桜井ユキが明かす、『G線上のあなたと私』眞於を演じる新鮮さ 「正直、すごく違和感がある」

2019年10月22日 06:12  リアルサウンド

リアルサウンド

眞於役の桜井ユキ

 いよいよスタートした、火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)。波瑠、中川大志、松下由樹と実力俳優が、元OL、大学生、主婦という年齢も環境もバラバラな3人を演じ、大人のバイオリン教室を舞台に友情を育んでいくさまを描く。


彼らが、バイオリンを手に取るきっかけを作るのが、桜井ユキ演じる久住眞於の存在だ。真於がショッピングモールの広場で披露した「G線上のアリア」。その演奏を聞いて主人公の也映子(波瑠)、幸恵(松下由樹)は「自分も弾けるようになりたい」とバイオリン教室へと足を運ぶ。そして、理人(中川大志)と真於の間には何やら過去がありそうで……。


そんな物語のキーパーソンとなる眞於役の桜井ユキにインタビューを行った。「行きたくなったら1人でも焼肉に行く」という男気あふれる桜井に対して、今回演じる眞於は女性要素の強いキャラクター。その違和感を楽しんでいる様子が伝わってきた。


■「“私で大丈夫ですか?”って聞いたくらい(笑)」
ーー眞於というキャラクターについてどんな印象をお持ちですか?


桜井ユキ(以下、桜井): 原作の漫画を読んだときから思ってたんですけど、彼女が持つ雰囲気はすごく女性らしくて可愛らしいのですが、恐さを感じるものも内側に持っている。過去の出来事を経たことで、今の眞於が形成されたと思うので、そこを感じられるように演じていきたいと思っています。


ーー眞於を演じる上で、意識している部分は?


桜井: 台本を読み合わせる段階から監督と話していたのが、ちょっとわざとらしくなってもいいから、声のトーンも1段階上げて“わたし、かわいいでしょう?”っていう感じで、完全に作っちゃおうって。正直、自分の中ではすごく違和感がありますね。私が今まで演じてきたキャラクターとは、ちょっと雰囲気が違うので(笑)。でも、処世術じゃないですけど、眞於自身そうやって生きてきたんじゃないかって思うようにしたら、少しずつ馴染んできました。


ーー新鮮な感じですか?


桜井:そうですね。ファッションも、自分では1枚も持っていないような服ばかりです。お話をいただいたとき、「私で大丈夫ですか?」って聞いたくらいでしたから(笑)。


ーーバイオリンの先生役として、初回から「G線上のアリア」を披露されていました。


桜井:あのシーンが1番大変でしたね、もうひたすら練習しました(笑)。「G線上のアリア」は小さいころから耳にする曲ではあったんですけど、じっくり聞いたことはなかったので楽しかったですね。「エモーショナルな曲ですよね」っていうセリフがあるんですけど、まさにそのとおりで。弾いてみたら、より一層哀愁を感じて、この作品にぴったりだなと思
いました。


ーー桜井さんはピアノも得意なんですよね?


桜井:4、5歳から中学ぐらいまでやっていました。でも、バイオリンを手にしたのは、今回が初めてで。このお話をいただく直前、ギターを買ったんですよ。友人のギターを触らせてもらったら、ちょっと音が出たのがうれしくて。“弾けるようになりたい”って、勢いのまま買っちゃいました! でも、弦楽器ってピアノみたいここを押せばこの音がでる、っていうものじゃないので、難しいですね。バイオリンもギターも、すごく素敵な楽器なので、これからも続けていきたいなと思っています。私、あまり趣味っていう趣味がなくて。興味が湧いたものは、とりあえず手を出してみるんですけどなかなか続かないんですよね。だから、これを機にバイオリンは続けたいなって(笑)。


■「そんなに遠くない世界の物語を楽しんでほしい」
ーー波瑠さん、中川大志さん、松下由樹さんとの教室のシーンが多いと思うんですが、共演
されてみていかがですか?


桜井:みなさんでクランクイン前から練習をされてきたものあって、関係性ができていて、すごく楽しそうです。一緒のシーンでは私も仲良くさせていただいていてありがたいです。撮影現場は、学校みたいな雰囲気ですよ。控え室でも和気あいあいとしていて、けっこうくだらない話で盛り上がっています(笑)。


ーー例えば、どのようなお話を?


桜井:フフフ。この前は、波瑠さんと私が友だちいない自慢みたいな感じになって(笑)。それを松下さんたちがやさしく見守って、聞いてくださっている……みたいな。


ーー友達いない自慢ですか?(笑)。


桜井:もともと1人焼肉に行くっていう話から始まったんですけどね。1人で行動することが多いっていう話をしたら、波瑠さんが共感してくれて。気づけば、「友だちって、なんですかね?」みたいな話になっていました。結論は出ませんでしたけど(笑)。


ーーいくえみ綾先生の原作漫画のドラマ化ということで、原作ファンの方もドラマを楽しみ
にしていると思うのですが、ドラマオリジナルな見どころはありますか?


桜井:ドラマでは眞於の過去にまつわるエピソードがしっかり描かれていると思います。かわいそうな経験をしたことは事実なんですけど、私の中では、眞於ってすごくしたたかというか、か弱そうに見えて実は強いところがあると思っていて。その塩梅は気をつけて演じようと思っています。


ーー主人公の也映子をはじめ、主要メンバーは割と思ったことをそのまま言うキャラクターですが、眞於は思いと言動が裏腹なところも多いのかなと思ったのですが。


桜井:陰と陽でいったら、他のキャラクターに比べると陰が強めかもしれません。だから、本当に1歩間違えると痛い女に見えちゃうので責任を感じますね。魅力なところを崩さずに、陰の部分を出していかなくちゃいけないので。


ーーやはり原作のあるドラマは、オリジナル脚本とは異なる難しさがありますか?


桜井:そうですね。これまで本の映画化・ドラマ化は経験があるんですけど、漫画原作は初めてです。ドラマと原作漫画は別物とはいえ、漫画にあるセリフがそのまま脚本に書かれることもありますし、キャラクター像もしっかりとあるので、やっぱり無視はできないですよね。そのときの表情も、絵だから伝わる表情だったりするわけで……そこって、1歩間違えると、大事な何かが崩れちゃう。多分、原作漫画のファンの方は「このシーンのここが好き」というのがあると思うので、漫画に通じるシーンを撮る前は、見返しますね。なぞるわけではないんですが、最低限崩さない基本を守ろうという意味で。


ーー眞於と理人の関係性が、注目ポイントのひとつだと思うんですが、理人役の中川大志さんの印象は?


桜井:理人のキャラクターに通ずるものがありますね。21歳なのに、すごくしっかりしていて、1本筋が通っているというか。でも、年相応のピュアさもあって、そのバランスが素晴らしいなと思います。決して自分を大きく見せようとしないですし、年齢や性別を変に感じさせないナチュラルな佇まいは、中川さんと理人に共通する魅力じゃないでしょうか。女性3人と男性1人の4人でいるときも、すごく自然体で楽しくおしゃべりさせていただいています。


ーー波瑠さん、中川さんも、「こんなに仲良くなれると思わなかった」とおっしゃっていました。


桜井:それ、現場でも話していました。ドラマって、舞台裏で話さなくても成立はするんですが、今回は控室から自然に話す間柄になっていきました。集まったメンバーの相性がいいのかなと感じています。


■「作品の中でしかできないことを楽しんじゃってます!」
ーー眞於は、理人から向けられた想いを拒むシーンもありますが、心が傷んだりは?


桜井:ないですね(笑)。逆に“めっちゃ気持ちいい!”って思っちゃいました。だって、あんなに素敵な人をこっぴどくすることなんて、現実にはないじゃないですか。理人はかわいそうだと思いますけど、作品の中でしかできないことを楽しんじゃってます!


ーーまさか、快感だったとは(笑)。


桜井:フフフ。でも、あの潔さが眞於のいいところだとも思うんですよね。本当にずる賢い女だったら、もっと思わせぶりな態度も取れたはず。でも、それをしないところに、私は魅力を感じました。眞於のキャラクターって、彼女が生きてきたなかでのベストチョイスの結果だと思うんです。女性の多い場所にいると、眞於のような振る舞いになるのは、ちょっと理解できるというか。だから、眞於と仲良くなるかはさておき、嫌いではないですよ。


ーードラマを通じて、眞於のようなタイプの女性への理解が深まりそうですね。


桜井:そうですね。ただニコニコしているだけだったら、ちょっと話が変わりますけど。過去にこういうことがあって、身につけた処世術なので。「何、あの女。ありえない」って思う前に、フラットに見てもらいたいなって。そういうのって日常でも大事なポイントだと感じますね。


ーー桜井さん自身は、表と裏みたいなのはあったりしますか?


桜井:年齢を重ねてきて、その境目がだいぶ薄くなってきたなと思います。若いころの方が、もっとえぐみが強かったかも、今もクセ強いですけど(笑)。久しぶりに会った方から「顔つきが変わった」って言われるんです。若いときは人見知りだったんですが、だんだん“私自身が人を拒否してたから、人が嫌いだったんだ”って気づいたんですよね。話してみたら、優しい人が多いし、楽しいじゃん、みたいな。いつからっていう明確な時期はないんですが、そう感じるようになりましたね。


ーーそのころに眞於を見てたら、また印象が変わってたかもしれませんね。


桜井:きっと、若いときに会ってたら「なんだこの女」となっていたと思います(笑)。今は、「この人も、何か面白いものを持っているんじゃないか」と掘り下げてみようとする余裕があるかもしれませんね。


ーーでは最後に視聴者のみなさんへ、メッセージをお願いします!


桜井:このドラマは、本当にごく普通の日々を描いているんですよね。でも、ひとつの会話で、ふとしたシチュエーションで、人生ってガラッと変わったりするのが日常で。そういう意味で視聴者のみなさんにも遠い世界の物語ではないので、「ドラマだから」と身構えずに、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。


(取材・文=佐藤結衣/写真=安田周平)