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東京五輪マラソン、札幌で開催検討 「1都市開催の原則は?」疑問の声も

2019年10月17日 15:41  弁護士ドットコム

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2020年東京五輪のマラソンと競歩について、国際オリンピック委員会(IOC)は10月16日、猛暑対策のためコースを東京から札幌市に変更するよう、大会組織委員会や東京都などに提案すると発表した。開催まで1年を切っての変更検討に、各地で困惑や混乱、憤りが広がっている。


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●マラソンチケット購入者「飛行機代は?」

「家族でチケット当選を喜んでおり、早朝から(会場に)行くぞと楽しみにしていました」というのは、武蔵大学社会学部の庄司昌彦教授。マラソンのチケットが当選、家族で新国立競技場で観戦するのを心待ちにしていたという。そこへ、札幌で開催検討という寝耳に水のニュースが飛び込んできた。



「暑さが選手たちにとって問題であることはよく理解できます。家族で今朝相談した結果、札幌開催になってもキャンセル・払い戻しなどはせず、ぜひ見に行こうとなりました。ただ、札幌まで家族で行くことは金銭的な負担も大きいので戸惑っています」と話す。



他にも、ネットでは「今さら札幌と言われても困る」「マラソンは唯一、チケットに落選しても沿道観戦できる競技だったのに」「会場変更は組織委員会の都合なので、観客のホテルや飛行機は手配してほしい」という困惑や憤りの声が上がっていた。



●チケット第2次抽選は延期

大会組織委員会によると、第1次抽選で販売されたマラソンのチケット枚数は公表されていない。今秋に予定されていた第2次抽選についても10月8日、申し込みの受付開始を明らかにしていた。



今回、五輪のチケットは今年6月からチケット不正転売禁止法が施行されたため、転売が難しくなっているが、来春にはリセールの公式サービスを開始することが明らかにされている。また、共同通信の報道によると、IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長は10月16日、マラソンチケットの「払い戻しに応じる」と答えたという。



●札幌市もびっくり、市民は困惑

突然、名指しされた札幌市では、秋元克広市長が10月17日、緊急会見を開いた。「本当に驚いています。昨夜(IOCが発表した夜)、報道からの問い合わせで初めて知りました」と報道陣に答えた。



札幌市はもともと、東京五輪のサッカー競技が開催されることが決定している上、2030年の冬季五輪招致を目指していることから、「名前が出て光栄です」とも話した。札幌市では北海道とともに協議し、関係機関で交通規制やコースの調整など実際に競技が開けるのかといった、実務レベルの検討に着手するという。



もしもマラソンや競歩が開かれた場合の大会費用は、原則的に組織委員会が負担することも明らかにした。ネットでは「もらい事故感がすごい」「2020年は札幌オリンピックではない」という声や、「札幌市も暑い」という懸念も、市民から聞かれた。



●広島・長崎五輪構想は却下したIOC

今回の報道を受け、ネットで指摘されたのが、IOCによる「1都市開催」の原則だ。実は2020年大会を広島市と長崎市で合同開催しようという構想があった。被爆地で「平和の祭典」を開きたいという広島市と長崎市が2009年10月、会見で明らかにした。



しかし、わずか2カ月後にIOCは「1都市開催」の原則を理由に却下。両市は立候補を断念した経緯がある。これはオリンピック憲章によって定められている原則で、「オリンピック競技大会を開催する栄誉と責任は、オリンピック競技大会の開催都市に選定された1つの都市に対し、IOCにより委ねられる」と明記されている。



ところが近年、大会が大規模化。1都市に対して莫大な負担がかかることから、立候補を取りやめる都市が続出しているため、開催地を複数の都市に分散させるべきだという指摘が専門家やメディアから相次いでいる。 



実際、東京五輪は都内の会場だけでなく、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、神奈川県、静岡県などで競技が開かれる計画となっている。ネットでは「1都市開催は無理がある」「札幌市でマラソンを開催するというのなら、広島長崎五輪を却下したIOCに説明を求めたい」と批判の声が多かった。



大会組織委員会によると、10月30日から3日間、都内で開催されるIOC調整委員会で、IOCと組織委員会、東京都がマラソンの開催について議論するという。