今年から働き方方改革が本格的にスタートしたが、実際に労働時間が減ったと感じている人はまだ少ない。10月15日の「モーニングCROSS」(MX系)では、佐藤大和弁護士が「未だに過重労働は多いんですよね。各地でセミナーをしているけど各企業がどう対策して良いかわかっていない」と厳しい現状を口にした。
長崎地方裁判所は9月、従業員に最長で月160時間以上の時間外労働をさせたとして、長崎県にある製麺会社に慰謝料30万円の支払いを命じた。従業員は具体的な疾患が出たわけではないが、裁判所は「不調をきたす危険があった」として会社の責任を認めた。(文:石川祐介)
「医療、福祉などは労働時間に関係なく精神疾患のリスク高い」
佐藤弁護士は「(一般に身体に負担の掛かりやすい)運送や郵便、清掃業などでは、長時間労働をするほど脳・心臓疾患のリスクが高くなる」と指摘した。一方で、
「(精神への大きな負荷が想定される)医療や福祉、製造、卸売業などでは、労働時間の長短に関係なく精神疾患のリスクが高い」
といい、「まずはこの違いにみなさん気づいてほしい」と警鐘を鳴らした。
また、過重労働に対する世間一般のイメージに対し、
「過重労働を議論する際、長時間労働の削減ばかりが注目されるけど、感情労働や頭脳労働に対する対策も必要。何より、精神疾患と長時間労働には強い因果関係がないので、従業員が働く上でのストレスをいかに軽減するかも大事になってくる」
と語り、人生100年を見据えた働き方として「長時間労働だけでなく、対人関係などで生じるストレスにも向き合っていくことが、これからの働き方に求められる」とした。
職場の雰囲気が何より大切 「笑顔を大切に」「人の悪口を言わない」
その上で、過重労働を抑制する具体的な取り組みとして、業務内容の効率化、マニュアル化のほか、場所や時間が制限されない「テレワーク」「フレックスタイム制」などを紹介。
「あと、僕は職場の雰囲気の改善が何より大切だと思っています。私の法律事務所でも笑顔を大切にして、人の悪口を言わないようにしている。それと、職場で音楽を聞けてリラックスできる環境にするとか、託児所の併設など女性が働きやすい職場づくりをしてる」
と話した上で、「企業側も働く人側も協力して働き方改革に着手していかないと過重労働は改善しない」と見解を述べた。
ネット上では、「確かに定時で帰れてもストレスが多い仕事だったら意味ない」と佐藤弁護士の指摘に納得する人の声が散見された。過重労働と聞くと、つい長時間労働ばかりに目が向きがちだ。そのため、仕事のストレスを相談しても「残業少ないんだから大丈夫だよ」と全く取り合ってもらえないケースも多いのではないだろうか。
とは言え、長時間労働で苦しんでいる人も多いのだろう、「常態的に20時間を超える残業が発生しているようなら人員を増やすように法整備した方が良いのでは?」と提案する声も見られた。テレワークにせよ勤務間インターバルにせよ、現在は企業の努力義務になっている。本気で過重労働を減らしたいのであれば政府にも大胆な法改正が望まれる。