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北村一輝、寂しさから溢れ出る涙をこらえる 『スカーレット』親子の切ないワンシーン

2019年10月17日 12:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『スカーレット』(写真提供=NHK)

 就職のため滋賀・信楽から大阪へとやってきた喜美子(戸田恵梨香)は、荒木さだ(羽野晶紀)が女主人を務める“荒木荘”にて「女中として働かせて下さい」と嘆願。いよいよ社会人としての大阪生活が始まった。


【写真】戸田恵梨香インタビューカット


 朝ドラ『スカーレット』第16話では、“荒木荘”の下宿人の一人である庵堂ちや子(水野美紀)から、「古い信楽焼きには高い価値がある……」と喜美子が言われ、笑顔を弾けさせた。


 女中として働く喜美子の仕事に、“電話を取る”というものも加わる。この当時はまだあまり電話が普及しておらず、“荒木荘”の近隣一帯でも電話のある家庭は少ない。だから代わりに“荒木荘”が窓口になり、各家庭に繋ぐのである。喜美子は迅速に電話を取り次ぐことができるよう、近隣の家庭がマッピングされた紙を用意。女中として器量よく立ち振る舞おうと、気合い充分だ。


 そんなところへ、一本の電話が。女中の大先輩・大久保のぶ子(三林京子)から言われたように、品よく「荒木荘でございます」と答える喜美子。しかし相手は無反応だ。声色を変えて、繰り返しこの言葉を喜美子は繰り返すが、やはり反応はない。その電話の相手は父・常治(北村一輝)。彼は喜美子の声を聞き、寂しさから溢れ出る涙をこらえ、何も言えなかったのである。喜美子の姿だけ観ていると、その姿はひたむきで、愛らしくさえ思えるが、なんとも切ないワンシーンだ。


 しかし、喜美子のいない寂しさを感じているのは父だけではない。それは幼馴染の照子(大島優子)も同じこと。喜美子に宛てた手紙には輝く高校生活の様子が綴られ、同封された写真には笑顔の彼女が収められているが、その実、同じく幼馴染の信作(林遣都)が渋々カメラを向けていた。照子いわく「喜美子に負けないように高校生活をエンジョイする」ということだが、どうやら寂しさを紛らわせるために装っているだけなようである。


 高校生活をエンジョイしている照子の様子を喜美子が思い浮かべていたところ、“荒木荘”に新聞記者のちや子が帰宅。そこで喜美子はちや子に、“旅のお供に連れてきた”信楽焼きのカケラを見せるのだ。ここで、冒頭に記述した言葉をちや子が口にするのだが、それはあくまで「古い信楽焼きには高い価値がある……かもしれないし、ないかもしれない」という曖昧なもの。ところが、これに対してすでに喜美子は有頂天。まったく、愛らしく愉快な性格の持ち主である。果たして、この価値やいかに。


(折田侑駿)