ITベンチャー企業tabecoは、企業間で連携して採用活動を円滑にするプラットフォーム「HRport」の開発を進めている。企業間で自社の採用ニーズとマッチしなかった就活生の推薦状を送り合うことで、優秀な人材を選別したい企業側にも、チャンスを増やしたい就活生にもメリットがあるという。
現在の就職活動では、選考後に「採用しない」と決めた学生に対して、一方的に不採用通知、いわゆる"お祈りメール"を送ることで関係を切っている。同サービスは、マイナスイメージが強い不採用通知の代わりに他企業へオファーを送り、さらに面接で得た所感や推薦文を添えることで、不採用とした学生を応援しようというもの。推薦を行った企業には、学生が採用された場合に謝礼金が支払われる。
「サイレントお祈りで落ち込んだ友人きっかけに」 変わらない不採用通知の文化
リリースによると、これまでの不採用通知では、学生側は否定された気持ちになるだけで改善点が分からず、次につながらない問題があった。しかし、同社のサービスでは、実際に不採用となった企業の人事担当者から推薦をもらうため気持ちを切り替えやすいほか、フィードバックや他社への推薦状をもらえるなど就活の円滑化につながる、としている。
同社の森海渡代表は上智大学の3年生だ。事業化のきっかけについて、
「友人が、幼少期からファンだったゲーム会社から『サイレントお祈り』をされ、ひどく落ち込んでいました。それでお祈りメール文化に疑問を抱きHRportを企画しました」
と明かした。また、昨今はカジュアル面談やインターンシップなどといった学生一人一人と向き合う企業が増えたにもかかわらず、
「1980年代から無機質で他人行儀な不採用通知文化だけが変わっていません」
と指摘している。
サービス開始は「21年卒」から 企業の事前登録を受付中
現在、サービスの利用を希望する企業の事前登録を受け付けている。今のところIT系ベンチャーを中心に10社ほどが名乗りを挙げている。サービスの開始時期については2020年1月ごろを見込んでおり、当面は新卒採用のみを対象に展開する。
森社長はキャリコネニュースの取材に対し、
「これまでの不採用を伝える"お祈りメール"では、採用するかしないかといった0か100かを伝える内容なので、学生を傷付けてしまいます。だけど、本当の不採用理由はただ企業ニーズにマッチしなかっただけのケースも多い。今回のサービスは『会社間で協力して学生に合う採用につなげていきましょう』という取り組みです」
とコメントし、「"お祈りメール"によって傷付く学生をゼロにしたい」と目標を語った。
同社は10月15日、プレシードラウンドでイーストベンチャーズ3号投資事業有限責任組合、F Ventures Fund 2号投資事業有限責任組合を引受先とし、資金調達を実施したことを発表。今回調達した資金は、HRportの開発およびチーム体制の強化に使用するという。