2019年10月15日 12:42 弁護士ドットコム
栃木県日光市の「華厳の滝」近くで、男性の遺体が10月4日、県警に収容された。身元は、埼玉県の男子高校生だったと報じられている。自殺とみられるという。
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県警のヘリコプターが9月1日、遺体を発見していたが、滝の上部から約60メートル下の岩場だったことから、10月4日早朝から、民間業者の大型クレーンなどを投入して、県警機動隊や土木工事会社の作業員ら約75人で引き上げ作業をおこなっていた。
報道によると、この作業には、約300万円の費用がかかっており、遺族に請求されることになるという。残された遺族の悲しみはいかばかりかと察するが、こうした費用は本当に払わないといけないのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。
遺族であるというだけで、遺体の収容費用を当然に支払わなければならないということはありません。
遺体発見後に、遺族が民間業者などに依頼して遺体を収容したのであれば、そのために発生した費用を負担しなければなりませんが、今回はそのような事情はありません。
遺体収容時点で、自殺者はすでに亡くなっていますし、自殺場所は公有地(国立公園)ですから、自殺によって不法行為が成立して、その賠償義務として、遺体収容費用を自殺者、ひいては遺族が負担しなければならなくなるということも考えにくいです。
この点は、賃貸マンションの自殺で、遺族が損害賠償義務を負担するケースとは異なります。もし仮に、賠償義務は発生するとしても、遺族が相続を放棄すれば責任をまぬがれます。
遺族が費用を負担しなければならないとすれば、遺族が遺体の引き取りを望んでいる場合です。
遺体の収容は、民法の事務管理(義務なくして他人のために事務の管理をはじめること)と考えることも可能ですので、それによって発生した費用は、遺族に請求することができます。しかし、遺族が遺体の引き取りを拒否している場合には、請求はむずかしいでしょう。
【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
事務所URL:http://www.yoshikawa-lawyer.jp/