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『フリースタイルダンジョン』3代目モンスターの特徴は? 新たなドラマ性にも期待

2019年10月13日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『フリースタイルダンジョン ORIGINAL SOUND TRACK VOL.2』

 ラッパーのZeebraがオーガナイザーを務める人気深夜番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)。挑戦者となるラッパーと、彼らを迎え撃つモンスターたちによるフリースタイルバトルの模様が人気を博し、今年9月には放送開始5年目に突入した。


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 そんな同番組が、今まさに大きな転換期を迎えている。今年5月に初代ラスボス・般若が引退を表明すると、10月にはモンスター6名を一新。番組内のバトルルールも大きく刷新された。モンスターの入れ替えは今回が3度目となり、ID、JUMBO MAATCH(MIGHTY JAM ROCK)、ERONE(韻踏合組合)、TK da 黒ぶち、2代目モンスターとして活躍した呂布カルマとFORK(ICE BAHN)、そして初代モンスターで新ラスボスのR-指定(Creepy Nuts)の全7名が選出。初代・2代目を含むハイブリットな顔ぶれとなった。


 今回は新メンバーのみ順に紹介していこう。番組開始当初より審査員として数々のジャッジを下してきたERONE。これまでの審査経験を活かし、モンスターとして新たな勝ちパターンを提示することや、バトルの際に見せる据ったような目つきでの、がなりたてるようなラップを目撃できるのか、期待感が高まるばかりだ。一方で、これまでのモンスターにはいない異彩なラッパーと噂の高知県出身ラッパー・ID。日本人離れしたフロウや、英語を交えた独特なグルーブ感を備えるなど、今回唯一の若手注目株である。


 また、2代目モンスターの裂固をはじめとする全8名のトーナメントを勝ち上がり、3代目モンスターの椅子を手にしたTK da 黒ぶち。数々のライバルを征したその実力は言わずもがな、個人的に気になるのがモンスタールームでのコメント力だ。初代モンスターのT-Pablow(BAD HOP)が、以前の晋平太戦で一瞬即発となった際には、バトル時のビートを引用して「ビートもクソもなかった」と座布団一枚な切り返しを披露。今後のオンエアでも、視聴者の心に残るフレーズを次々に生み出してほしい。


 最後に、レゲエアーティストとして初のモンスターに選ばれたJUMBO MAATCH。レゲエシーンの20年選手であり、自身のレーベルを主宰するなど、レジェンド枠に分類される存在である。彼の所属するMIGHTY JAM ROCKの人気曲「LOVE SO NICE」などはぜひ聴いてほしいところだが、最大の注目ポイントは、いわゆる“持ちネタ”の披露を得意とするレゲエディージェイが、別ジャンルのヒップホップにおいていかなる即興性を編み出すのかだ。


 ヒップホップとレゲエの繋がりでいえば、昨年12月放送の『フリースタイルダンジョン』にて、「BATTLE OF REGGAE DEEJAY」が異種格闘技戦として開催されたことも。両ジャンルの融合は、双方のシーンの活性化に向けてZeebraが目指すところなのかもしれない。このほかにも、ラッパーのWillyWonkaとレゲエディージェイのVIGORMANによるユニット・変態紳士クラブや、『第16回高校生RAP選手権』優勝者であり、自身の楽曲にレゲエの歌い回しを取り入れているRed Eyeの登場なども踏まえるに、JUMBO MAATCHは現行シーンの多様さを象徴した存在ともいえる。


 そして、3代目モンスターに期待される成果のひとつには、モンスター同士による強い結束があるだろう。放送開始当初より、フリースタイルバトルを地上波で扱う物珍しさや、勝敗がハッキリと明示されることから、多くのヘッズを生み出してきた『フリースタイルダンジョン』。同番組の歴史を振り返っていくと、いつからかその勝敗を超えて、モンスターが“チーム”として一枚岩になっていく過程にこそ、面白さを見出していたことに気づく。彼らが“チームメイト”の勝利に喜び、時にハイタッチさえしてしまう姿に、微笑ましさを抱いた視聴者もきっといるはずだ。


 そんなモンスター同士の結束を生み出した張本人といえるのが、初代モンスターのDOTAMAだろう。チャレンジャー時代より「ディスの極みメガネ」と称されていたものの、自身のモンスター就任時には対戦相手のデータを分析してモンスター間で共有するなど、チームをまとめる参謀的な役割を全うしてきた。


 結果的に初代モンスターは今なお、“原点にして頂点”といえる存在感を発揮しているほか、2017年6月には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)への出演を果たすなど、当時よりヒップホップシーンを大きく牽引。モンスター全員の信頼関係があってこそ、それほど大きな功績を残すことができたのだろう。


 そんな彼らの推薦を受けて、その礎を時にプレッシャーとして重く受け止めたのが2代目モンスターだ。なかでも裂固は、同じ『高校生RAP選手権』出身の先輩であるT-Pablowから叱咤激励を浴びせらたことも。時には連敗を続けながらも、終盤にはBASEやミステリオらの4人抜きを見せるなど、大きな飛躍を遂げてくれた。また、同じく2代目の輪入道は、初代モンスターの漢 a.k.a.GAMIの“コンプラ”に対するストッパーを外したほか、TK da 黒ぶちやpekoらともベストバウトを繰り広げてきた。2代目モンスターの織りなすドラマ性もまた、『フリースタイルダンジョン』の欠かせない見どころだったに違いない。


 R-指定は、10月初旬の放送回で「ディスとか勝ち負けの先にあるものをダンジョンは提示していかないとダメ」とまっすぐに語っていた。一回きりのバトルに完結せず、シリーズ物ならではのコンテクストを築けることこそ、『フリースタイルダンジョン』に多くのフォロワーが集う理由ではないか。だとすれば、3代目モンスターの進むべき道も自ずと見えてくるはず。そんな彼らの初陣をまずは心して見守りたい。(一条皓太)