2019年10月12日 10:11 弁護士ドットコム
退職強要などから精神疾患を発症したとして労災認定された元契約社員の女性(50代)。体調が安定せず、解雇されてから働けない日々が続いている。
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ところが、今年2月、元勤務先が国を相手に、労災認定の取り消しを求める裁判を横浜地裁に起こしてきた。会社がこうした裁判を提起するのは珍しいという。
もしも取り消しが認められれば、女性は生活の糧がなくなってしまうという。「どうして私の被害に向き合わないのか」と憤っている。
女性が勤めていたのは、神奈川県内にある医療系の企業。
労働基準監督署の認定によると、女性は1996年に契約社員として入社し、2015年12月に別の事業所への異動を告げられた。女性は母親が骨折したばかりだったため、時期を1週間ほどずらしてほしいと求めたが、会社から「いらない」といわれたという。
やむなく、退職に向けた協議が始まったが、最終出勤日が理由なく2週間ほど前倒しされるなどの出来事があり、直前数カ月の残業時間が月75~108時間ほどあったことも加味されて、労災が認定されている。
労災の取り消しを求める今回の訴訟について、国側で補助参加する笠置裕亮弁護士は10月11日、厚労記者クラブでの会見で「労災被害にあった人が安心して治療に専念できる仕組みが必要だ」と訴えた。
現状の労災保険の仕組みでは、労災が認定されると、その企業が負担する労災保険料が上がる可能性がある(メリット制)。そのため、企業による労災かくしや、今回のような取り消し訴訟の余地を残してしまう。
「労災保険料と直接連動させない、あるいは連動の関連性をより間接的にするような制度設計ができないか、考えていく必要がある」(笠置弁護士)
なお、女性は会社に対し、解雇の無効を主張する裁判を起こしている。