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アンジュルムを象徴する“めまぐるしい変化” 二期生が育んだグループの輝き

2019年10月11日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

密着ドキュメンタリーフォトブック「アンジュルムと書いて、青春と読む。」

 アンジュルムでサブリーダーを務める中西香菜がグループからの卒業、そして、芸能界からの引退を発表した。今年6月には、アイドルとしてのキャリア15年を誇った元リーダー・和田彩花が卒業。さらに、直前には同期メンバーの勝田里奈も卒業していたことから、突然の報告にファンの間では大きな動揺が走った。


参考:アンジュルム 勝田里奈の卒業、そして考え得るハロプロの未来の可能性


 一方で、彼女の卒業発表に併せてひそかに頭をよぎったのが、2016年6月に卒業した元メンバーで、現在は歌手や舞台女優として活躍する田村芽実がかつて残した「スマイレージ(アンジュルムの前身)はいつもこうだ…。」という名言だ。その真髄を知ろうとすると、和田からリーダーを継いだ竹内朱莉、中西、勝田、田村の“二期メンバー”へ不思議と思いを巡らせたくなる。


■中西香菜が卒業の決断へ至った経緯


 ここで少し、中西が卒業を発表した経緯を整理してみたい。第一報であるハロー!プロジェクトの公式サイトで発表があったのは、今年9月30日。パシフィコ横浜で行われた勝田の卒業コンサートからわずか5日後であった。


 同サイトによれば、背景にあったのは「今までとは異なった新しいジャンルに飛び込んで、一から勉強したい」という彼女の意思。事務所側は「将来のビジョンを固めるために、もう少し時間があったほうがいいのではないか」と慰留したが、彼女から「意思の強さを感じ取れたので、次の一歩を踏み出した方がいい」と判断し決断を尊重したという(参考:アンジュルム 中西香菜の卒業に関するお知らせ)。


 さらに、10月2日にアップされた彼女自身による公式ブログでは、卒業を決めるまでの経緯が綴られていた(参考:アンジュルム 公式ブログ)。


 きっかけとなったのは、昨年12月から今年3月にかけて、左アキレス腱付着部炎により一部の活動を欠席していた時期だった。足のケガで離脱する中で「自分の誇れることってなんだろう。好きなことってなんだろう」と考えていた彼女。一方で、メンバーや周囲が支えてくれるアンジュルムの環境に「ずっと甘えてしまうんじゃないか」と危機感をおぼえていたことを明かし、「自分自身強く立派な女性へと早く変わりたい」という一心から、環境を新たにしようと決意したことを語っていた。


 卒業まではあと2カ月ほど。彼女がステージを去るのは、現在、アンジュルムが巡っている全国ツアー『ライブツアー 2019夏秋「Next Page」』の最終公演にあたる豊洲PITのコンサートと発表されているが、やはり、前ぶれのなかった突然の報告にはいまだ寂しさが募るのも事実だ。


■スマイレージ時代には試され続けていた二期メンバー


 今年6月、グループの象徴になっていた和田の卒業で“第2章”へさしかかったアンジュルム。その歴史をたどると、当初は和田、福田花音、前田憂佳、小川紗季の4人からなるスマイレージとして2009年4月に結成するも、二期メンバーの加入や前田、小川の卒業を経て、2014年12月にグループ名を改称。直前に三期メンバーとして室田瑞希、相川茉穂、佐々木莉佳子が加入して以降は毎年、現在に至るまで新メンバーの加入を繰り返しているなど、端的に振り返ってもまさに“激動”と呼ぶのにふさわしい。


 なかでも二期メンバーたちは、和田と共にグループの変化を如実に味わってきた。そもそもはグループのメジャーデビュー1周年を境にしたオーディションにより、サブメンバーとして加入した竹内、中西、勝田、田村の4人。彼女たちが初めて参加したグループのメジャー7thシングル『タチアガール』には、じつは、同時期に加入した小数賀芙由香も参加していたが、彼女が病気を理由に早期で離脱した経緯もあった。


 その後、全国各地の様々な場所で自分たちの笑顔をケータイで撮影してもらい、ネット上にアップしてもらう「笑顔うpキャンペーン」を経て正式メンバーに昇格した4人。しかし、なおもまだ順風満帆とはいかなかった。


 アンジュルムが、アイドルグループの試金石ともいわれるステージ・日本武道館での公演を達成したのは2014年7月。二期メンバーたちがその日までに参加したシングルの枚数はメジャー16thシングル『ミステリーナイト!/エイティーン エモーション』までのじつに10枚を数えていて、なおかつ、日本武道館までの道のりには全国47都道府県のライブハウスを巡るツアーもあった。


 また、そのツアー自体もグループにとっては重要な分岐点だった。グループが改称する直前、和田がスマイレージのメンバーとして最後に綴った2014年12月のブログには「ツアーは出来なくなってしまい、、やっとやっと、今年の春からツアーが出来るようになりました」(原文ママ)と彼女の悲願がにじんでいたが、そこへ至るまで彼女たちは常に試され続けていた(参考:和田彩花 オフィシャルブログ)。


 じつは、冒頭にある田村の名言「スマイレージはいつもこうだ…。」は、そのさなかで発せられたものだ。きっかけは、2013年11月に開催された地域のよさを再認識するためのプロジェクト“SATOYAMA & SATOUMI movement”のイベント。当時、デビューまもなかったハロプロのグループ・Juice=Juiceとのクイズや料理の対決に負けた田村が、スケッチブックに手書きで描いた自虐的なメッセージがまさにそのフレーズで、改称した今なおグループを象徴する言葉として語り継がれている。


■後輩たちが育つ環境を自然と作り上げた和田と二期メンバー


 中西の卒業に少なからぬ寂しさを覚えるのは、やはり、スマイレージからの空気感を継ぐのがいよいよ竹内のみとなるのも大きい。しかし、アンジュルムは三期メンバーの加入や改称を経て以降、グループとしてより強くなっていった。


 改称後の第一弾となった2015年2月リリースの『大器晩成/乙女の逆襲』から勢いを加速させたグループは、道中で福田、田村の卒業を経験しながらも、今日に至るまで和田や二期メンバーを中心に新メンバーを温かく迎え入れパフォーマンスを磨いてきた。今となっては毎年のようにツアーを行い、日本武道館公演を実現できるまでに成長。対外的にも『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の常連になりつつあるなど、年々、彼女たちの努力が実を結び実力が評価されるようになっていった。


 その過程でグループをけん引してきたのが、まさに和田や二期メンバーたちだ。はたから見た印象としては、メンバーを泳がせながらリーダーとしての存在感を発揮してきたのが和田。現リーダーの竹内は、ときにはオラつきながらも後輩たちにも気軽にイジらせるような空気を作り、中西は、母親のような笑顔で常にメンバーたちがじゃれ合うのを見守ってきた。


 そして、幼少期からの舞台経験により持ち前の歌唱力や表現力を背中で見せつけた田村がいて、パフォーマンスは“省エネ”と評価されながらも影ではグループを取り仕切る裏番長として活躍していたのが勝田で、自然と後輩たちが成長できて、なおかつ活動を楽しめるような環境を彼女たちが作らなければおそらく、今のアンジュルムはなかった。


 さて、ここまでに和田や勝田の卒業が相次いだ一方で、グループは今年新たにハロプロ研修生出身で即戦力として期待される橋迫鈴を迎え入れた。さらに、卒業を控える中西と共に6月からは川村文乃もサブリーダーを務めていて、12月の豊洲PIT公演以降は、現リーダー・竹内との二人三脚でどのような舵取りをするのかも期待される。


 彼女たちの楽曲「人生、すなわちパンタ・レイ」は“万物は流転する”をテーマとしているが、めまぐるしい変化はアンジュルムの象徴でもある。田村の残した名言「スマイレージはいつもこうだ…。」もとい「アンジュルムはいつもこうだ…。」はまさに、常に試されながらも成長し続けるグループの姿を暗示していたようにも思えるが、彼女たちはこれからもきっと、何事にも耐えられる強さをもってステージで輝き続けるはずだ。(カネコシュウヘイ)