2019年10月09日 19:51 弁護士ドットコム
英会話スクールの男性講師が、不当な雇い止めにあったとして会社に地位確認を求めた訴訟の控訴審判決が10月9日、東京地裁であった。村上正敏裁判長は男性敗訴の1審東京地裁判決を変更し、雇い止めを無効として2017年4月からの未払い賃金(月額25万7800円)の支払いを命じた。
【関連記事:「田中の対応最悪」社員名指しの「お客様の声」、そのまま社内に貼りだし公開処刑】
判決後、原告のアダム・クリーブさん(47)が東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開き、「職場に戻ることを楽しみにしています。長い戦いでしたが、判決で正当ということが再確認できました」と話した。
判決文などによると、アダムさんは2015年3月、「シェーンコーポレーション」(東京都千代田区)の運営する「シェーン英会話スクール」に常勤講師として1年間の有期雇用契約で採用された。雇用契約は1回更新された。2016年11月に育児休暇に先立ち有給休暇を取得したところ、会社側は認めず無許可での欠勤として評価。2017年2月28日に雇い止めされた。
同社の有給休暇は、年間20日間付与されていたが、うち15日間については会社側が取得する時季を指定して一斉に取得する計画年休としていた。5日を超える日数を計画的に付与するためには、労使協定を結ぶ必要がある(労働基準法39条6項)。
しかし、同社は計画年休に関しての労使協定を結んでおらず、アダムさんは「全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン)」のシェーン労働組合の執行委員長として、東京都労働委員会に申し立てをした。しかし、その審議途中に勤務態度不良を理由に雇い止めを受けた。
高裁判決は、時季指定する15日間の計画年休について、会社が法定年次有給とそれを超える分の有給を区別することなく指定しており、「全体として無効」として、年間20日間全ての有給が自由に指定できると判断。
有給取得は正当な理由のない欠勤であったとは認められず、無断欠勤もストライキの実施によるもので「雇い止めをするかどうかの判断をする際に考慮に入れるのは相当でない」として、「雇い止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない」と判断した。
代理人の指宿昭一弁護士は「全く当たり前だが、正しい判断をしている」と評価。同じく代理人の加藤桂子弁護士は「労働委員会での審議中に、会社の言い分が正しいことを前提に雇い止めをした。制度に乗っ取って話し合いをしていたのに、あまりに労働者を軽視する態度だった」と話した。
仕事を失いアダムさんは専業主夫となったため、保育園にも入れず、裁判にも長女を連れて臨んだ。アダムさんは「同僚との団結が非常に重要。組合に入ることで、会社側に説明責任を求めることができます」と話した。
シェーンコーポレーションは「担当者が外出しており、コメントできない」と話した。