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ダン+シェイとジャスティン・ビーバーのコラボ曲が好発進 “カントリー×ポップ”が握るヒットのカギ

2019年10月08日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

Dan + Shay, Justin Bieber「10,000 Hours」

 アメリカのヒット曲の指針となる米ビルボードソングチャートは3つの指標を合算したものであり、最も大きなウェイトを占めるのがSpotify等のサブスクリプションサービスやYouTube等の再生回数に基づくストリーミング。その他、ダウンロードとラジオエアプレイで構成されます。近年のヒット曲はストリーミング先行でヒットし、ラジオエアプレイは遅れて火が付くことが基本的な流れとなっています。


 しかし、ストリーミングで流行らないジャンルと言われているのがカントリー。アメリカでも田舎の、高い年齢層が好む傾向にあり、いわば保守と呼ばれる方が好むジャンル。他のジャンルに比べて新しい聴き方を取り入れる率が低いと言えるでしょう。ちなみにトランプ大統領の支持者が多いのも保守層です。


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 そんな中、10月4日金曜リリースの作品の中で、ストリーミングでロケットスタートを切ったカントリーの曲があります。2013年にデビューし、これまでに3枚のアルバム全て米アルバムチャート2位以内に送り込んだDan+Shay(ダン+シェイ)の新曲「10,000 Hours」は、あのジャスティン・ビーバーを客演に迎えたこともあってか、リリース日の米Spotifyデイリーチャートで2位に登場しました。


 MVではダン・スマイヤーズ、シェイ・ムーニーそしてジャスティンの3人がそれぞれパートナーとのいわゆるラブラブなシーンを公開。このMVが“君とならさらに1万時間過ごしたい“などロマンティックな言葉を織り込んだ歌詞に説得力を与えています。


 ラッパーのトラヴィス・スコットによる「Highest In The Room」に次いで高位置に初登場した「10,000 Hours」は、Dan+Shayの米でのSpotifyデイリーソングスチャート最高位を軽々更新(これまでの最高は「Tequila」の48位)。翌日も2位をキープしており、日本時間で10月16日に発表予定の米ビルボードソングスチャートでトップ10入りすることも夢ではないでしょう。このチャートでも「Tequila」の21位がDan+Shayにとっての最高位であり、更新が期待されます。


 「10,000 Hours」のヒットの原動力はジャスティン・ビーバーの参加や話題性の高いMVにあることは間違いないでしょうが、最近のカントリーのトレンドに沿っていることも要因ではないでしょうか。そのトレンドとは、ポップアイコンがカントリー歌手と組んでカントリーに挑戦すること、もしくはカントリー歌手がポップなど他のジャンルに活躍の幅を広げること……つまりは“カントリーのジャンルレス化”。そしてそれらの楽曲の多くが成功を収めているのです。


 たとえばビービー・レクサ feat. Florida Georgia Line「Meant To Be」(2017年)は、ラッパーのG-Eazyに客演した「Me, Myself & I」(2015年)が全米トップ10入りしたことで脚光を浴びたビービーが、カントリーデュオのFlorida Georgia Lineを招きカントリーに挑んだ曲。米ビルボードソングスチャートは2位まで上昇、そして2018年の年間チャートで3位を獲得しています。


 そのFlorida Georgia Lineは「Cruise」(2012年)のリリース後、日本ではケリー・ローランドとの「Dilemma」で知られるラッパーのネリーを迎えて同曲のリミックスを制作し、米ビルボードソングチャートで最高4位を記録。ジャンルを超越した作品をいち早く制作しています。


 逆にカントリー歌手が他ジャンルで客演参加した例を挙げるならば、Zeddにフィーチャーされたマレン・モリスが最たる例でしょう。保守的なカントリーの中ではやんちゃと言えそうなマレンがEDMのZeddおよびGreyと組んだ「The Middle」(2018年)は、米ビルボードソングチャートで最高5位を記録し、同年の年間ソングチャートでは8位に。今年のグラミー賞では主要部門のうちRecord Of The Year(最優秀レコード賞)およびSong Of The Year(最優秀楽曲賞)にノミネートを果たしています。


 その他昨年は、ジャスティン・ティンバーレイクが自身のルーツのひとつであるカントリーを盛り込んだアルバム『Man Of The Woods』を、カイリー・ミノーグはカントリーの聖地ナッシュビルでレコーディングしたアルバム『Golden』をそれぞれリリースするなど、カントリー関連作品はここ数年多かったのですが、今年はその傾向が減っていた印象がありました。しかし、Nine Inch Nails(彼らのジャンルはインダストリアルロックですが)のインストゥルメンタル曲をサンプリングしたラッパーのリル・ナズ・Xによる「Old Town Road」が今年大ヒットし、米ビルボードソングスチャートで最長不倒となる19週もの首位を達成したことで、カントリーと他ジャンルとの融合が再度活気付く予感もあります。ちなみに「Old Town Road」については、楽曲にカントリー要素が足りないとして米ビルボードがカントリーチャートから同曲を除外した経緯がありますが、それにカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスが異を唱え自ら参加したことで最終的に今年を代表するヒットと化したのに加え、オリジナル版以上にカントリーらしくなったといういい意味でのオチが付くことに。


 Dan+Shay feat. ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」がストリーミングで勢いをキープし、複合指標からなる米ビルボードソングスチャートで大ヒットとなるか、今後に注目です。楽曲の浸透とともにジャスティンと妻ヘイリーの仲睦まじい様子を見ようとするユーザーが増え、MV再生回数もさらに伸びていくことでしょう。この曲が大ヒットすれば、カントリーをより身近に感じるリスナー増加の後押しになるかもしれません。ちなみに日本でも、リリースの翌日にSpotifyデイリーチャートでトップ50にランクインを果たしており、今後この曲が日本国内でどう広がっていくのかはとても興味深いです。(Kei)