■阿部寛主演、前作『結婚できない男』から13年
連続ドラマ『まだ結婚できない男』が、10月8日からカンテレ・フジテレビ系で放送される。
本作は2006年に放送されたドラマ『結婚できない男』の続編だ。13年前の『結婚できない男』では、偏屈で独善的で皮肉屋だが、どこか憎めない40歳の独身の建築家・桑野信介(阿部寛)が、女性との出会いをきっかけに恋愛を意識し、結婚を真摯に考えるまでの日常をユーモラスに描いた。
建築事務所で代表を務める桑野は、キッチンを中心とした住宅の設計で高い評価を得ている建築家で、ルックスも良く収入も人並み以上。だがプライドが高く、こだわりが強いうえに、頼んでもないのにうんちくを語って相手を言い負かそうとするやっかいな性格で、「結婚なんてメリットがない」と考えている。
自宅のリビングでクラシック音楽を大音量で聴いて酔いしれ、周囲の目を気にせず「一人焼肉」で高級肉に舌鼓を打つ桑野を演じた阿部寛のコミカルな演技や、夏川結衣演じる医師・早坂夏美との軽快なやりとりも人気を博し、2006年の放送当時は高視聴率を記録した。
■早坂に愛想をつかされて破局。偏屈さに磨きがかかる53歳の桑野
そんな人気作の続編である『まだ結婚できない男』は、前作から13年後が舞台となる。
前作で互いの気持ちを確認し合い、交際に発展したかに見えた桑野と早坂だが、その後、桑野は早坂に愛想をつかされて破局を迎えてしまい、「恋愛モード」に傾いていた桑野の気持ちは再び固く閉ざされ、独り身を謳歌する生活に逆戻りしている、という設定になっている。
偏屈さに磨きがかかる一方、この先の人生を考えると不安を感じなくもない桑野は今作では53歳。その運命の歯車が、新たな女性たちとの出会いをきっかけに動き始める、というあらすじだ。脚本は前作に引き続き尾崎将也が担当する。
■ 新キャストに吉田羊、深川麻衣、稲森いずみら登場。塚本高史らお馴染みの面々も再集結
前作では早坂をはじめ、国仲涼子演じるマンションのお隣さん・田村みちる、高島礼子演じる仕事のパートナー・沢崎摩耶が桑野を取り巻く女性たちとして登場した。続編にも新キャラクターとして3人の女性が現れる。弁護士の吉山まどか(吉田羊)、隣人の戸波早紀(深川麻衣)、カフェ店長の岡野有希江(稲森いずみ)だ。
吉田羊が演じるまどかは、独立して事務所を経営する真面目な弁護士で、桑野に振り回されてぶつかり合いながらも関係を深めていく、という役どころ。阿部と吉田は初共演だという。
乃木坂46の元メンバーである深川麻衣が演じる早紀は、家賃が高額な桑野のマンションの隣に引っ越してくる謎多き女性。阿部とは21年ぶりの共演だという稲森いずみ演じる有希江は、離婚裁判を通して桑野と知り合う。
さらに桑野の姪・ゆみ役で平祐奈が出演。また前作からの続投キャストとして、前作では桑野のアシスタントで、今作では桑野の共同経営者となった建築士・村上英治役の塚本高史、桑野の母・育代役の草笛光子、妹・圭子役の三浦理恵子、圭子の夫で桑野の良き理解者・中川良雄役の尾美としのり、桑野といつもぶつかり合う大工の棟梁役の不破万作といった面々が再び集結する。
■ 現実社会でも未婚率が増加。結婚を巡る考えや状況が多様化する現代において、13年後の桑野はどう映る?
前作から経過した13年というのは短くない時間だ。当時は登場人物のコミュニケーション手段がガラケーだったことを振り返っても、時の流れと変化の速さを感じるだろう。実際の社会に目を向けてみると、2006年から現在までで世の中は大きく変化した。リーマンショックや東日本大震災、戦争やテロによる世界の分断、消費税増税……世の中に蔓延する空気は13年前より明るいとは言い難い。
また社会の変化に伴って、日本人の恋愛観や結婚観も変化しているはずだ。50歳までに一度も結婚したことのない人の割合を表す「生涯未婚率」は増加傾向にあり、国勢調査によれば2000年は男性が12.57%、女性が5.82%だったのに対し、2015年には男性が23.37%、女性が14.06%まで上昇している。
前作は「未婚」に対する新たな視点として話題を集め、放送当時「40歳独身男の本音さく裂ドラマ」とも称されたそうだ。現実の社会で未婚の人々の割合がさらに増えているという数字を単純に受け止めれば、本作はより多くの共感を集める作品になる可能性があると言えるだろう。だが一方で、現実には桑野のように十分な収入があって、気楽なシングルライフを謳歌できる人々だけではないはず。13年後の桑野が2019年の視聴者にどう受け止められるのかも注目したい。
「結婚=幸せ」「独身=不幸」という単純な図式はもはや成り立たないし、またパートナーはいても結婚をしない選択をする人や、法制度によって結婚したくてもできない人もいる。現実では結婚に対する人々の考えや状況が多様化しているいまだからこそ、かつて「結婚のデメリット」を感じていた桑野が(彼は前作のラストで「結婚も悪くない」と考え直している)「結婚」に対してどのような答えを出すのか、また彼を巡る女性たちとどのように関係を築くのか、放送が楽しみだ。阿部寛は本作の製作決定時に「13年前よりもさらに結婚しない人が増えていると聞きます。世の結婚してない男性を癒すようなドラマにしたいです」というコメントを寄せていたが、どのような状況にあるにしろ、結婚へのプレッシャーを感じている人にはホッとする内容になっているのかもしれない。
ドラマ『結婚できない男』の13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』は2019年10月期の火9ドラマとして、10月8日からカンテレ・フジテレビ系で放送される。