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婚活中の男性を狙った「ぼったくり」、巧妙化する手口とは?

2019年10月06日 10:21  弁護士ドットコム

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都内の大手企業に勤める山田信彦さん(仮名・32)は最近、恋人と別れたばかり。新たな出会いを求めて婚活アプリを使ったところ、恐ろしい目にあったといいます。


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休日、アプリで知り合った相手とデートの約束を取り付けた山田さん。相手はシャンパンを飲みたいと、とあるバーを指定してきたそうです。グルメサイトで見ると、予算は5000円ほど。山田さんの収入なら、相手の分も十分に払える価格帯です。



ところが、実際に店に行ってみると、メニューに載っているシャンパンは1本5万円や10万円もするものばかりでした。



「店とグルだったんでしょうね。『はめられた』と思いました。メニューを見てちょっと考えましたが、『これは無理、帰るわ』と言って、何も頼まず出て来ました」





●気づかないうちに高額請求のパターンも

ネットで検索すると「出会い系」などをきっかけに「ぼったくりバー」の被害にあったという体験談を多く目にすることができます。弁護士ドットコムにも複数の相談が寄せられています。たとえば、次のような内容です。



(1)店前の看板には「ワンドリンク800円」と書いてあったが、メニューの分かりづらいところに高額の料金が書き込まれていた。気づかずに2人合わせて8杯飲んだところ2万円を請求された。



(2)女性が料金も聞かずに何杯も飲み、7万円を請求された。同様の手口で10万8000円を請求されたという相談者も。



いずれも女性側の手持ちがなく、女性のクレジットカードも使えないなどの理由から、男性側が支払っているところに特徴があります。





店と女性が結託して、出会い系にいる男性をカモにしているとしたら、法律で対抗することはできるのでしょうか。ぼったくりの問題にくわしい古川穣史弁護士に聞きました。



●ぼったくり防止条例、立証ハードルが高い

このような相談は最近よくあるので、注意が必要だと思っています。そもそものぼったくりの問題というよりも、女性にお店に連れていかれて、高額な支払いをもとめられるという点が新しい手口ですので、その点について話をします。



女性の方から知り合いや友人が経営しているお店に連れていくということ自体は問題ないでしょう。大事なのは、お店と女性が結託している点であり、具体的には高額な支払いを求め、そのお金の一部が報酬や給料として女性にも支払われていることです。





東京都であればいわゆる「ぼったくり防止条例」が存在していますが、ぼったくり防止条例はいわゆるキャバクラや風俗店を前提にしているので、単なる居酒屋だとその対象外になってしまいます。



女性がそのお店から報酬や給料をもらっているとして、お店の従業員であり、その者が「接待」しているということになれば、ぼったくり防止条例の適用を考えられるとは思います。



その場合ぼったくり防止条例は、実際の金額より安くみせるような料金の表示や、乱暴な方法によって支払いを求めることは禁止しています。



しかし、実際のところ、その女性がお店と結託しており、報酬の支払いがなされているのかどうかの立証は困難です。



●巧妙化する手口、自衛の重要性高まる

さらに、被害に遭った人のネット投稿などで警戒が高まっていることから、最近は巧妙化しており、一軒目は普通のお店に行き、二軒目でぼったくり店に連れていく方法や、何軒かのお店が結託して、毎回同じお店には行かないようにするなどの方法がとられています。



こういうパターンもあるのだと、警戒してもらえればと思っています。





昔からぼったくりの問題はおきていますが、大半は客引きについていった場合や、できて間もないお店などで起きています。もし心配であれば、料金について店側に確認したり、ネットで調べたりしていただきたいと思っています。



警察を呼んでも、単純な居酒屋であれば、民事事件ですので動いてくれないことが多いと思います。弁護士を呼んで代理人として交渉してもらうことも可能ですが、それも費用がかかりますし現実的ではないと思います。



いずれにしても自衛を心がけていただきたいと思っています。




【取材協力弁護士】
古川 穣史(ふるかわ・じょうじ)弁護士
夜11時に電話で相談してきた依頼者を助けるために歌舞伎町に赴いて以来、ぼったくりの案件を数多く手掛ける。東京都を中心にDV、ストーカーや刑事事件の被害者側などの案件を積極的に行う。会計事務所の法律顧問として一般民事事件、企業法務なども扱っている。
事務所名:八木良和法律事務所