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『水曜どうでしょう』はなぜ伝説の番組になったのか 人間性を惜しげもなく晒し続ける大泉洋の存在

2019年10月05日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『水曜どうでしょう祭 FESTIVAL in SAPPORO 2019 ライブ・ビューイング』

 10月4日~6日にかけて「水曜どうでしょう祭2019」会場と、最終日の6日に全国47都道府県の映画館を結んで開催される「ライブ・ビューイング」で、伝説の番組『水曜どうでしょう』(HTB)の最新作が先行上映される。


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 出演はもちろん、大泉洋に鈴井貴之、藤村忠寿ディレクター、嬉野雅道ディレクターの4人。特に、昨今はTBSの日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』に主演、また朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)にTEAM NACSメンバーの最後のひとりとして出演するなど、その動向が常に注目され、多忙を極める大泉がこのシリーズに戻ってくるということで期待が高まっている。


 『水曜どうでしょう』が始まったのは1996年の10月のこと。北海道以外の人が、この番組の存在と、そこに大泉洋という人が出ているというのを知るのは、全国放送であったバラエティ番組『パパパパパフィー』(テレビ朝日系)に、大泉が出演したことも大きかったと思う。


 当時は、ローカル番組が全国のテレビ局に販売され人気になることも少なく、異例のことであったと思うが、地方でも愛され、人気に火が付き、カルチャー雑誌『Quick Japan』などで特集もされた。


 この『水曜どうでしょう』は「一生どうでしょうします」宣言を発表した後に2002年で最終回を迎えるが、2004年以降は、不定期でロケをしては放送するスタイルをとっている。


 筆者は、当時からその存在も知っていたし、周りの友人でハマっている人もいたが、実際に見るようになったのは、2010年代に入ってからである。それでも見ることができたのは、CSや関東圏のローカル局で、毎週のようにどこかしらのシーズンを放送していたからだ。


 そのため、1996年の第1回放送で、いきなり鈴井貴之と大泉洋、藤村忠寿ディレクター、嬉野雅道ディレクターの4人がわちゃわちゃしながら、サイコロで自分たちの行く末を決められ、次第に翻弄されていく姿も、何度か見ることができた。


 不思議なのは、2019年の今見ようが、2010年に見ようが、2000年代に見ようが、まったくその面白さが変わらないところ。本番組には、いくつかの伝説の回があり、ファンの間で語り継がれているが、そんな回は、いつ見てもやっぱり大笑いができた。


 伝説的な放送回として、筆者も見たことがあるものとしては、1998年の「マレーシアジャングル探検」で、宿泊施設の周りにトラがいるのではないかとパニックに陥り、4人の人間性があらわになった時の映像や、また2007年の「ヨーロッパ20ヵ国完全制覇 ~完結編~」で、なぜかヨーロッパの街並みを紹介する際に、大泉洋が渡辺篤史のモノマネとして「小林製薬の糸ようじ」を連発する回でも大爆笑をした。ほかにも「だるま屋ウィリー事件」、大泉と同じくTEAM NACSに所属する安田顕の「牛乳リバース」など、この番組にはさまざまな伝説が存在している。


 現在、大泉洋は誰もが知る、日本を代表する俳優のひとりになったし、それは誇張でもなんでもない。通常であれば、知名度や地位があがるとともに、過去の映像が封印されたり、そこまでではなくとも、あまり積極的に放送することをよしと思わないなどのことが起こっても不思議ではないのに、今でもこうした伝説の回を見て大笑いできる。それは、大泉洋が、誰もが知る俳優となった今でも昔もまったく変わらず、テレビバラエティに出れば、出演者に翻弄されたり、素直にぼやいたりしていることと無関係ではないだろう。


 『水曜どうでしょう』は、過酷な旅の中で、その人の人間性が露わになる。喧嘩めいた空気にもなるし、泥仕合なることもあって、それでもなんとか男4人が旅を続けようとする姿がそのままに記録されていた。そんな人間性をすべて晒してなお、面白がられ愛されてきた人は強いなと思うし、ここまで晒してきたからこそ、今も変わらずにいられるのかなとも思えてくる。


 『水曜どうでしょう』は、2013年の「初めてのアフリカ」以来6年間、新シリーズは撮影されていなかった。この「初めてのアフリカ」のロケの時点で大泉は『探偵はBARにいる2』の宣伝時期であり、大ヒットエッセイの『大泉エッセイ 僕が綴った16年』が発売された頃であり、こうした企画は、大忙しの人気者となった現在、なかなか難しいのではないかとも思われていた。その間も、番組では、さまざまなイベントなどを開催して、ファンの期待を裏切らない活動を見ていたが、こうして2019年に新シリーズが見られることは、あたりまえであってほしい気持ちももちろんあるが、“奇跡”のようにも思える。今回の新シリーズでは、はたしてどんな姿をさらけ出してくれるのだろうか。(西森路代)