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佐藤隆太に元気がない!? 『スカーレット』で演じるのは“心に栄養が足りない”青年・草間

2019年10月03日 08:31  リアルサウンド

リアルサウンド

佐藤隆太『スカーレット』(写真提供=NHK)

 NHKの連続テレビ小説『スカーレット』の放送がはじまっている。焼き物の里・信楽を舞台に、女性陶芸家の波乱万丈な人生を描く物語。戸田恵梨香演じる川原喜美子が窯に向き合う姿から始まり、現在は喜美子の子供時代(演じるのは川島夕空)が描かれている。


 SNS上では、朝ドラの“原点”に戻ったとも言える正統派な演出やリアルな戦後の描写に対する評判がよく、『みいつけた!』(NHK教育)に「スイちゃん」として出演していた川島への注目も高まっている。


 そんな中、第2話終盤で佐藤隆太演じる草間宗一郎が登場した。喜美子の父・常治(北村一輝)は倒れていた草間を放っておくことができず、信楽に連れ帰ってくる。喜美子の人生に大きな影響を与えるキャラクターのようだ。


 佐藤隆太と言えば、『海猿』(フジテレビ系)や『ROOKIES』(TBS系)、『まっすぐな男』(フジテレビ系)など、“正義感”や“実直”といったイメージが強い。佐藤が演じてきたキャラクターからリーダーシップや朗らかで明るい笑顔を思い浮かべる視聴者も少なくないだろう。


 しかし佐藤の演技は「熱い役」「好青年」だけに留まらない。『バンビ~ノ!』(日本テレビ系)では主人公に厳しく当たる先輩料理人を演じ、主人公に暴力を振るうことも。『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)ではDV夫を演じた。外面のいいエリート銀行員がDV夫へと豹変する姿は、従来の佐藤の印象を覆すものだった。『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)では、主人公の詐欺師3人を追い詰める中国系マフィア役を演じ、ジリジリと主人公たちを追い詰める姿には強い緊張感があった。名バイプレイヤーとして、佐藤は幅広い演技を見せてきたのだ。


 そんな佐藤演じる草間は「心に栄養が足りていない」青年だ。信楽にやってきた直後の草間に笑顔はない。縁側で力なくうなだれている姿からは、戦時中に彼が味わってきた壮絶な日々が伝わってくる。常治とマツ(富田靖子)はそんな彼を労わるが、草間は終始申し訳なさそうだ。


【写真】ヒロイン演じる戸田恵梨香


 そんな草間に喜美子は「今まで会うたことないような何か」を感じとり、「この人、日本人ちゃうでしょ!」「なんかうちらと違う」「どこの国の人ですか」「大阪ちゃうでしょ」と矢継ぎ早に問いかけた。元気のいい喜美子に気圧され、驚いた表情を見せた草間。けれど、この喜美子の問いかけがきっかけで、草間は自身について話し始めた。


 草間を労い、常治は「大変でしたね」と声をかけ、マツは「ご苦労様でした」と頭を下げた。草間は戸惑ったような表情をするが、その労いの言葉に謙遜しながら、ようやく柔らかな笑顔を見せた。


 信楽にやってきた時のうつろな表情から、彼らの温かさに触れたことで見せた笑顔。佐藤の繊細な演技によって、川原家に迎え入れられた草間の、戦争で閉じてしまった心が少しずつ開いていくのが分かる。


 戦争によって心に傷を負いながらも、天真爛漫な喜美子に温和な表情を見せた草間。佐藤の演技は、快活な若者でも熱血漢でもなく、横暴でも狡猾でもない、今まで演じてきた役とはまた違った魅力を感じさせる。草間の優しさは、喜美子にどのような影響を与えていくのだろうか。


(片山香帆)