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相馬トランジスタ、初監督映画『誰にも会いたくない』を語る 「少しでもひきこもりの人の力に」

2019年10月02日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

(写真=林直幸)

 YouTubeチャンネル「へきトラハウス」で人気を広げ、現在は「へきちゃん☆トラちゃん」として活動する動画クリエイター・相馬トランジスタが、相馬永吉名義で初監督を務めた映画『誰にも会いたくない』。主演にたなか(元ぼくのりりっくのぼうよみ)を迎え、人気YouTuberが数多く出演することで話題になったが、第11回沖縄国際映画祭での限定上映となり、多くの人の目に触れることがない、幻の作品となっていた。


 そんななか、この10月5日に、作品ゆかりの滋賀県彦根市「ひこね市文化プラザ」にて、上映会&舞台挨拶が決定。大喜びしつつ、「観てほしいけど観てほしくない」と語る相馬監督に、あらためて制作の経緯と、作品&上映会への思いを聞いた。(編集部)


(参考:過激派YouTuber・へきトラ復活 新チャンネルで見せる“削除覚悟”のエンターテイメント


・「ヒカルへの借金は、ガチガチのガチです」
ーー10月5日、相馬さんにとって念願となる、初監督作品『誰にも会いたくない』の上映会が開催されます。いまの率直な感想から聞かせてください。


相馬:ずっとやりたかったんですけど、いろんな事情で難しくて、ここまでめちゃくちゃ長かったですね……! 主演のたなか(元ぼくのりりっくのぼうよみ)くん含めて、みんな舞台挨拶に来てくれることになって、本当にありがたいです。


ーーあらためて、制作が進んだ経緯から教えてください。大変な過密スケジュールだったそうで。


相馬:もともと、2018年に沖縄国際映画祭で上映された、金森(正晃)監督の映画(『饗-おもてなし-』)に出させていただいて。そのつながりで、今年の1月に監督から「今年は監督っしょ!」みたいな電話がかかってきたんですよ。「マジすか」と思いながら、「じゃあやります!」と答えて、3月には撮影に入ってましたね。ちょうど、へきトラハウスの解散もあって、めちゃくちゃ大変な時期だったんですけど。制作費も全然足りないから、結局、ヒカルに借りて……。


ーー200万円を借りて動画出演での活躍で返済、という企画になっていましたね。あれは「ガチ」なんですか……?


相馬:もう、ガチガチのガチです。結果として、ヒカルのファンの人たちも僕の動画を観てくれるようになって、プラスしかなかったですね。ほんと、頭が上がらない。


ーー本作は「ひきこもり」というセンシティブなテーマで、たなかさんの主演も話題になりました。


相馬:金森監督と話していて、もともと「ひきこもり」の映画を撮りたい、というのは決まっていたんです。二人とも、元ひきこもりなので。だからこそ、ちゃんとリアリティを出したい、という気持ちが強くて、主演のキャスティングはめちゃくちゃ悩んだんですよね。主演級の俳優さんって、だいたいひきこもりっぽくないないんですよ(笑)。こんなことを言うと怒られそうですけど、“オーラのある陰キャ”みたいな人がほしくて。それで、ちょうど「ぼくりり」を引退して、僕らの動画にも出演してくれていた、たなかくんにダメもとでLINEしてみたら、即レスでOKをもらえたんですよ。「主演ですよ?」って一応確認したら、「ワロタ」みたいな感じで。


ーー主題歌の「Gorilla Anthem」は、鬱々としたなかに不思議な美しさを感じる楽曲で、一気に引き込まれますね。


相馬:聴いたときに「もったいない!」という言葉しか出てこなかったです。この曲に寄せて、編集を少し変えたくらいで。


ーーたなかさんに次ぐキーマンを演じるわきをさんをはじめ、東海オンエア・てつやさん、ガーリィレコードチャンネルで活躍中の雨ちゃんこと雨野宮将明さんなど、YouTube人脈で人気者がそろいました。


相馬:そうですね。わきをは確かに重要な役どころで、癪なんですけどぴったりでした。雨ちゃんは吉本さん所属なのでスムーズにオファーできて、てつやに関しては……その人気にあやかろうという、いやらしい気持ち10割ですね。てつやの役は一言しかしゃべらないし、“ひきこもり妖怪”の特殊メイクで顔も見えないから、誰でもよかったんですけど、だからこそめっちゃ有名な人を使ったら面白いと思って(※てつやが所属する東海オンエアのチャンネル登録者数は470万人以上。てつや自身のツイッターも175万フォロワーを超える)。それでオファーしてみたら、たまたまスケジュールが空いていて、OKしてくれたんです。


・「少しでもひきこもりの人の力になれれば」
ーーあらためて、この作品で表現したかったことについても聞かせてください。


相馬:今回上映会をする滋賀県彦根市に、ひきこもりの人の支援をしている「誰にも会いたくないカフェ」っていう取り組みがあって、そこが題材になっているんですよね。それで、ストーリー上、主人公は幸せになるんですけど、きれいごとだけじゃ救われないよな、と思って。僕もひきこもりだったからわかるけど、基本的に救いはないんですよ。だから、映画でカフェに集まる4人のなかで、成長できない人がいるようにしました。


 そういうリアリティもありつつ、どうしたらひきこもりを脱却できるのか、考えて動くきっかけになればいいなと思ったんです。この映画の登場人物たちが、社会とか、親とか、コミュニティとかとつながって、成長していく様子をひきこもりの人が観てくれて、少しでも力になれればいいなって。立ち直れない人がいる、という残酷さは残っているんですけど、人生はそこで終わりじゃないし、一回の失敗でへこたれるんじゃないぞ!ということも伝えられたらと。


ーーそうした切実なメッセージが込められた作品ですが、初監督作品ということで、仕上がりはどうでしょう?


相馬:正直、もっといいものを作りたかったという、悔しい思いが強くて、「観てほしいけど観てほしくない」という複雑なところもありますね。当たり前ですけど、普段の動画とは何もかも、全部違うので。


ーーその経験を生かして、新作を作りたい、という思いも……?


相馬:できたらいいですね。でも、いまはチャンネルが大事な時期なので、考えるのはYouTuberとしての基盤がしっかりしてからかなと。将来的には、借りは返したいし、一話完結のドラマみたいなものは撮りたいですね。金森監督も「次は自分の力だけでやると最も白いよ。カメラマンとかはやってあげるから」と言ってくれて、いつかやりたいですね。


ーー金森監督も、ヒカルさんやてつやさんもそうですが、相馬さんはものすごく愛されていますよね。


相馬:昔からヒモ体質なんですよね(笑)。女の子からは全然なんですけど、特にYouTuberからは本当によくしてもらってるなと思います。


・「僕ができるのはしゃべるか脱ぐしかないので」
ーーさて、上映会の当日には、相馬さんが同乗するバスツアーという企画もあります。チケットを取れなかった人もいると思うので、どんなものになりそうかヒントだけでも教えてください。


相馬:自分でもどうなるかわからないんですけど、とにかく一生しゃべり続けようと思ってます。僕ができるのはしゃべるか服を脱ぐかしかないので。あとは、当日、僕はいろんな緊張でおかしくなっていると思うので、そんな姿を楽しんでいただけたら。


ーーマネージャーさんによると、もともと相馬さんはバスツアーの「宴会」パートに出席するだけで、バスに同乗する予定はなかったそうですね。


相馬:そもそも、上映会だけだとチケットが売れても赤字だから、バスツアーもやろうということになったんですけど、料金、1万6千円ですよ? それは、僕も一緒に乗って、少しでもよろこんでもらう以外の選択肢はないですよね。


ーー大変な状況の中で、思いを込めて作った映画だということがわかりました。最後に、ファンのためにプレゼント用のチェキを撮らせてもらえますか?


相馬:人生初チェキだ。全然いいですけど、絶対需要ないですよ? 一人も来なかったら寂しいので、編集部の人も応募してもらっていいですか。いくつ応募があったか、僕にはいわないでください(笑)。


(橋川良寛)