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夫婦別姓訴訟、東京地裁でまた敗訴 「議論は高まっているが…」弁護士の訴え棄却

2019年10月01日 15:11  弁護士ドットコム

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選択的夫婦別姓を求めた裁判で、また夫婦同姓を規定した民法を合憲とする最高裁大法廷判決(2015年)を踏襲した判決が9月30日、東京地裁(品田幸男裁判長)で下された。


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訴えていたのは、東京弁護士会の出口裕規弁護士とその妻。同姓規定は憲法に反する上、国連の女性差別撤廃委員会から度々、改正するよう勧告を受けているにも関わらず、国会はこれを放置しているなどとして、国を相手取り合計10円の損害賠償を求めていた。



しかし、判決では最高裁大法廷判決以後、「議論の高まりは見られることなどが認められる」としながらも、夫婦同姓の規定が憲法に違反するといえるような事情の変化は認められないと結論づけ、請求を棄却した。



出口弁護士は判決について、「裁判所の問題意識の欠如には、単一的な家族観、固定観念が背景にあるように思われます」とコメント。控訴する意向を示した。



●「子連れ再婚夫婦の事情を考慮していない」

訴状などによると、夫妻は2018年に再婚し、妻は「出口姓」を名乗ることになったが、妻の連れ子2人(中高生)は離婚時の取り決めにより、妻の元夫の姓を使い続けている。



連れ子2人は将来、妻の旧姓に戻る希望を持っているが、同姓規定により妻が出口姓となったために困難な状況という。夫妻は「最高裁判決は連れ子のいる再婚夫婦の事情を考慮していない」と問題を指摘。選択的夫婦別姓の導入を求めていた。



これに対しても、判決では「家族の姓を一つに定めることに合理性がある」とする最高裁判決を踏襲し、「連れ子がいる者が再婚した場合が考慮されていないということはできない」という判断を示した。



判決を受け、出口弁護士は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、次のようにコメントした。



「私の印象としては、要するに妻の連れ子も出口に姓を変更すれば、みんな出口で一緒になれるからいいでしょ、という判決です。今回の私たち原告の置かれた状況はとりたてて問題ではないと言われているように受け止めざるを得ません。



国連からも度々、改善勧告されているにもかかわらず、(同姓の規定を定めた民法について)一顧だにしない裁判所の姿勢は、大いに問題です。



嫡出子と非嫡出子の相続分差別についても、最高裁で合憲が連発されて、ようやく、2013年に違憲判断が出ましたが、もう少し、司法府の判断が世間のスピードについていくことを強く希望します。本件に限りませんが、その経済損失たるやはかり知れません」



また、出口弁護士は「200%、控訴します」と語り、控訴の意向を示した。



選択的夫婦別姓をめぐる訴訟については、地裁での判決が相次いでいる。2019年3月には、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らが戸籍法上の夫婦別姓の導入を求めた裁判で、東京地裁は請求を棄却する判決を下した(現在、東京高裁に控訴中)。



また、2015年に最高裁まで争われた夫婦別姓訴訟の弁護団らによる第二次夫婦別姓訴訟は、10月2日に予定されている東京地裁で判決を皮切りに、全国の地裁でも順次、判決を迎える。