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回数券を勧める接骨院は「ウチの治療技術は低い」と言っているも同然では 柔道整復師が説明する"回数券"の意義

2019年09月29日 09:00  キャリコネニュース

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「体の調子が悪くて近所の接骨院に行ったら、いきなり回数券の話をしてきた」 先日お会いした人から聞いた話です。カーテン越しに聞こえてきた会話でも、ほかの患者さんに対して回数券の話をしていて、何かひっかかったと言います。

骨折も脱臼もほぼ整形外科や病院に行くこのご時世。僕も接骨院を経営していますが、街を歩いていても松葉杖で包帯を巻いていたり、脚を引きずっていたりするような怪我人をみかけることが少ないのに接骨院って必要なの?と思ってしまいます。そんな中、"回数券"の話。僕も回数券の購入を勧める院に疑問を抱きました。(文:ちばつかさ)

かつては高需要の接骨院も、院の増加で「患者の奪い合い」が発生

接骨院に勤めるのは国家資格の柔道整復師で、元々"骨折や脱臼の整復と固定"を主な業としていました。それに付随して、捻挫や挫傷、打撲などのいわゆる急性期の怪我に対して柔道整復術をおこなうのです。

整形外科が少なかった過去、柔道整復師は重宝され、接骨院でも骨折や脱臼の整復固定が頻繁に行われていました。また、柔道整復師の国家資格を取るための専門学校も接骨院も少なかったため、患者さんが列をなす光景も目にしました。

その後、養成学校が急増(総量規制で14校だったのが、2015年には109校に)。資格所持者も急増し、卒業すればすぐに開業できてしまうため一気に接骨院が巷に溢れました。今はコンビニよりも多いとも言われています。

院が増加するとどうなるのか? 当たり前ですが患者の奪い合いが始まります。供給が増えて需要が減れば利益も落ちるので、あの手この手を使いあの手この手で患者さんの囲い込みをします。

そこで出現したのが"接骨院専門の経営コンサルタント"。「こうすれば売れますよ」「こうやって患者さん集めましょうね」という戦略を院に高額で売るのです。例えば「交通事故専門を打ち出しましょう」といった戦略です。そこで出たのが"回数券"。利益確保と患者さんの囲い込みのために売られるようになったのです。

接骨院に行くときは「一日でも早く治したい」という気持ちを持ち続けること

しかし、そもそも接骨院は医療機関です。怪我を治すために患者さんは来院しますが、患者さんとしては「一日も早く治したいから通院」と思うのは当然です。究極を言えばぎっくり腰が10秒で治れば言うことなしです。

短時間で症状を緩和できればできるほど、治療技術が高いことになります。つまり、通わせる期間が長いほど治療技術が低いということにもなります。では、この話の中で?回数券"はどの位置づけになるのでしょうか? そうです。「ってなると回数券っておかしくね?」って話なのです。

接骨院は「自由診療」という、保険を使わない自費メニューがあります。保険適用の施術は怪我(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷)にしか適用されないので、自費である体のメンテナンスに定期的に訪れる人にとって回数券はお得になります。

ただしそれは「定期的にメンテナンスに訪れる場合」のみ。それを初めて来院した患者さんに促すということは「私は一回じゃ治せません」「治療技術は低いです」を露呈している証拠にもなります。

回数券を買ってしまったらほぼ返金されないのが現状です。院の増加に伴い、医療機関であるのに競争を余儀なくされる。競争が始まればいろんな手法を使い、患者さんや利益を確保しようとします。

それを踏まえたうえで接骨院にはいってほしいし、通う人には、本来の「一日でも早く症状を緩和させること」という目的を常に持ち続けていてほしいと思います。でないと、断ることができず「先生が言うのなら……」と高額な回数券を買う羽目になってしまうでしょう。

【筆者プロフィール】ちばつかさ

合同会社komichi代表。柔道整復師、こころと体のコーディネーター、元プロ野球独立リーグ選手。東京と福井で投げ銭制の接骨院を運営しのべ10万人近くの心と体に向き合ってきた。野球経験とコーチングの経験を活かし都内で“野球を教えない野球レッスン”を運営。レッスン卒業生がU12侍ジャパンの代表に選出された。【公式サイト】