2019年09月26日 09:52 弁護士ドットコム
新卒学生の就職活動において、複数の内定をゲットするのはうれしい反面、どこに行くのかを決めることは、大きな決断となるため、悩みも深いだろう。
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ネットのQ&Aサイトにも、「やりたいことをやった先に、どんな自分になりたいかなどと考えると、働く自分の姿が想像できなくなり、複数ある内定から選ぶことができません」といった悩みが投稿されている。
10月の内定式が必ずしも実施されなかったり、されたとしても授業などを理由に、欠席したりすることも可能なので、キープ自体はさらに継続することも可能だろう。
ただ、入社寸前の3月31日にまで引っ張って、そこで辞退先を決めて、連絡をしても、法的には問題ないのだろうか。山本幸司弁護士に聞いた。
「『内定』は、法的には、企業と求職者の間で労働契約が結ばれた状態です。新卒学生の場合、一般的には、大学等を卒業した後の4月1日から就労することが、契約内容となっています。
内定が成立する時期ですが、企業が新卒学生に対し採用内定通知を交付していれば、その時点で内定といえるでしょう。
今回問題とされている内定の辞退は、法的には、労働契約を内定者の方から一方的に解約することを意味します。
民法では、解約を申し入れた日から2週間を経過すると、労働契約が終了することになります(627条1項)」
では、3月31日には辞退できないということか。
「そうですね。内定を辞退するのであれば、少なくとも2週間の予告期間をおいて申し入れをする必要があります。入社日が4月1日で、内定辞退が3月31日となりますと、2週間の予告期間をおいていませんので、内定辞退は契約違反となります。
内定者は、内定辞退により生じた企業の損害について、賠償しなければならない可能性があります。もっとも、こうしたケースで法的に認められる賠償額は、通常は大きな金額にはなりませんし、企業側が内定者を訴えるケースも稀でしょう。
とはいえ、内定者としては、誠意ある対応をとる必要があるでしょう。決断をしたのであれば、早めに連絡しましょう」
【取材協力弁護士】
山本 幸司(やまもと・こうじ)弁護士
広島弁護士会所属。企業法務(上場企業、医療機関など)、不動産、労働、相続・離婚問題、刑事事件などの分野で経験を積み、広島市で独立開業。税理士と共同して、法務・税務の両面からトータルサポート。
事務所名:山本総合法律事務所
事務所URL:http://www.law-yamamoto.jp