2019年09月25日 10:52 弁護士ドットコム
歩道を歩いていたところ、自転車に乗ったおばさんにチリンチリン鳴らされた挙句、「邪魔」と吐き捨てられたーー。
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ネット上には、「自転車のチリンチリン腹立ちます」「チリンチリンじゃねぇよ」「歩道でなんで鳴らされなければならないの?」「車道走ってよ」「納得いかないんだけど、どかなくていい?」など、自転車に歩道でベルを鳴らされることに対する怒りの声が少なくない。
中には、チリンチリン鳴らされるだけではなく、舌打ちをされたり、「どけよガキ!」「邪魔だよ、くそが!」などの暴言を吐かれたりしたという人もいる。
ある人は、ベルを鳴らしながら自転車で走っていた70代の男性に「ここは歩道なので危ないですよ」と注意したところ、「俺はいいんだよ!」と逆ギレされたという。
そもそも、自転車のベルを鳴らし、歩行者を退かすことは許されるのだろうか。
道路交通法54条2項には、「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」と規定されている。
つまり、
(1)法令の規定によって、ベルを鳴らさなければならないとき(「警笛鳴らせ」の道路標識がある場所や「警笛区間」の見通しのきかない場所を通る場合) (2)危険を防止するためにやむを得ないとき
以外は、歩行者にベルを鳴らしてはいけないのだ。違反した場合は、2万円以下の罰金または科料となる(道路交通法121条1項6号)。
では、自転車のベルを鳴らしてもよいとされる「危険を防止するためにやむを得ないとき」とはどのようなときなのだろうか。交通事故に詳しい山田訓敬弁護士に聞いた。
「単に『安全確保』という消極的な理由に過ぎない場合ではなく、具体的に危険が認められるような状況で、その危険を防止するためにやむを得ないときとされております。本来は、警報器(自転車のベル)を鳴らすほかに危険を防止することができないような場合にしか、警報器を鳴らすことはできません」
道路交通法は、歩道と車道の区別がある道路では、自転車は「車道を通行しなければならない」と規定している。
「自転車は、原則として車道を通行しなければなりません(道路交通法17条1項)。
例外的に『普通自転車歩道通行可』の道路標識があるとき等には歩道を通行することができますが(同法63条の4第1項)、その場合においても、原則として、歩行者の通行を妨げることとなる場合には一時停止しなければならないとされております(同条2項)。
このように、歩道においては歩行者が自転車に優先します。そのため、たとえ歩行者が横並びで歩いている場合やフラフラ歩いている場合であっても、その人にぶつからないように一時停止して声をかけるなどし、その後に再発進すれば危険を防止することができるのですから、警報器(ベル)を鳴らしてはいけないことになります」
そうなると、ベルを鳴らしても良いケースはよほど緊急な場合に限られそうだ。
「そうです。たとえば、左右の見通しの悪い交差点を通行する際に、人が急に飛び出してきて、急停止しても衝突してしまうような場合など、緊急性の高い場合に限られると思われます」
【取材協力弁護士】
山田 訓敬(やまだ・くにたか)弁護士
企業法務を中心に企業のトラブル解決に尽力する一方で、個人の交通事故や遺産相続の分野にも力をいれている。特に交通事故事案では、一人でも多くの被害者のお力になりたいとの思いで有志の弁護士らで福岡交通事故相談ダイヤル(無料)を立ち上げその代表を務めています。交通事故相談ダイヤルはhttp://jikosoudan.info/
事務所名:弁護士法人山田総合法律事務所
事務所URL:https://www.yamaben.com/