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なんて行儀が悪い! 子どもが会計前の「きゅうり」をかじった…法的な問題は?

2019年09月23日 11:01  弁護士ドットコム

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子どもが会計前の商品を飲んでいて、めちゃくちゃびっくりしたーー。


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子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板には、「久々に見た。会計前に品物飲ませてる親」(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3056396)と題したスレッドで、こんな声が寄せられている。



スレ主は、スーパーでジョアを飲んでいる2歳ぐらいの子どもを見たという。ところが、「それもレジしないといけないから!」という子どもの母親の声を聞き、子どもが飲んでいるのは会計前の商品だと判明。母親は、そのまま飲みかけのジョアをレジに通したようだ。



スレッドには、ほかにも「となりのトトロ」を見た後に買い物に行ったところ、子どもが商品のきゅうりをかじってしまったというコメントが寄せられている。投稿者は「(子どもは)まだ未就園児だったけどきつく叱った」という。



このように、会計前の商品を食べたり、飲んだりしてしまった場合、法的に問題があるのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。



●「窃盗罪」にあたる可能性も

ーー会計前の商品を飲んだり、食べたりした場合は「窃盗罪」にあたるのだろうか



「『他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己の占有(ある物を物理的に支配すること)に移転させる』と、窃盗罪が成立します。



スーパーで売られている飲み物やきゅうりなどの商品も『財物』であり、店内に置かれている間は、店が占有していることになります。



客がレジに持って行って代金を払えば、商品(=財物)は、客の占有に移ることになります。しかし、代金を払う前に飲んだり、食べたりしてしまえば、まだ店側が占有している商品を、客が店側の意思に反して、自己の占有に移転させることになってしまいます。



これは、紛れもない窃盗行為です」



ーー母親があとでレジで代金を払っても、なかったことにはできないのだろうか



「いったん成立した窃盗罪は、その後に代金を払ったりお金で弁償したりしても、なかったことにはなりません。



また、子どもが犯罪を犯したとしても、その親が刑事責任を問われるわけではありません。しかし、民事上の責任としては、親は子の監督責任がありますから、子どもがやったことについて親が監督義務違反として損害賠償責任を負うことになります」



●レストランとスーパー、コンビニは取引形態がちがう

ーーレストランでは、代金を支払う前に食事をしても文句を言われない。なぜだろうか



「スーパーやコンビニの取引形態は、レジで代金を支払うのと商品の引渡しが同時にされます。一方で、レストランでは、先に食事をして代金は後払いという取引形態が一般的です。



レストラン側がこのような取引形態を承諾しているので、代金を払う前に料理(=財物)を食べても、店側の意思に反して占有を移転させたとは考えられないのです。



ちなみに、食べた後に代金を払わずに逃げたら、窃盗ではなく『詐欺罪』が成立します」




【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/