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SMAP『世界に一つだけの花』ロングセラー1位を機に考える、音楽の力と継続することが持つ力

2019年09月23日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SMAP『世界に一つだけの花』

 SMAPの35thシングル『世界に一つだけの花』が、オリコン週間シングルTOP100内に登場した作品のランクイン週数順位歴代1位となった。2003年3月5日にリリースされた本作は、発売から2週目でミリオンを、そして21週目でダブルミリオンを達成。2016年に、SMAP解散報道が伝えられると、再び多くの人がCDを手に取り、平成発売作品としては初のトリプルミリオンを記録した。


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 また、放送30年を越える音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で行なわれた『あなたとアーティストが選ぶ新・国民的名曲』(2009年)、『世界に誇るニッポンの歌 BEST100』(2015年)、『日本に影響を与えた曲 BEST100』(2016年)など、数々のアンケートでも1位に選ばれてきた。


 平成の時代は、IT化によって一人ひとりが世界とつながることができるようになった。だが一方で、SNS越しに見える他人の人生と自分を比べて、劣等感や孤独を感じる人も増えた感覚もある。そんな中、この楽曲が示したのは〈もともと特別なOnly one〉だということ。
「人を見て幸せをはかるのではなく、自分の内面から真の幸せを見つける時代になってほしい」この楽曲を作詞・作曲したシンガー・ソングライターの槇原敬之自身も、この曲で自分自身を見つめ直すことができた1人だという。多忙により自分自身を見失った槇原が、仏教の教え「天上天下唯我独尊」と出会ったのをきっかけに、まるで降りてきたかのように書き上げたのが本作だった。(参照:http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY200912100253.html)


 歌の力、音楽の力。「世界に一つだけの花」を聞くと、いつもそんな言葉を思い浮かべる。このシングルがリリースされた2003年以降、日本列島を様々な災害が襲った。台風による風水害、噴火、豪雨、そして未曽有の大地震。その度に、SMAPは「心はひとつ」と訴えてきた。人が苦しい場面を乗り越えるとき、決してひとりじゃないと思えることがどれだけ大事か。そんなSMAPの呼びかけに「世界に一つだけの花」は、文字通り花を添えてくれた。


 先日、草なぎ剛と香取慎吾が千葉県の台風被害に対してラジオでエールを送り、千葉のラジオ局・bayfmに多くの物資を置いていった。新しい地図としても、稲垣吾郎を交えて東日本大震災から7年が経過してもなお、心を寄せていることを伝える「3月11日に寄せて」という動画をYouTubeに投稿。また、中居正広も自身がパーソナリティを務めるラジオ『中居正広 ON & ON AIR』(ニッポン放送)で、今も定期的に震災の義援金呼びかけを続け、木村拓哉は昨年、西日本豪雨の被害を受けた広島県呉市の避難所を訪問した。そして、今も心をひとつにするファンたちによっても、義援金の呼びかけやSNSでの励ましのエールが続いている。


 「SMAPの5人だから良かった」と槇原が言うように、この「世界に一つだけの花」が愛され続けているのは、それを歌ったのが他ならぬSMAPだったからに違いない。彼らの歩みは、他のアイドルグループと一線を画していたことはご存知の通り。メンバー一人ひとりの個性が伸ばされてきたのも、それぞれが寛容だったからに違いない。私たちはSMAPを通じて多様な価値観を、そして「世界に一つだけの花」でオンリーワンを貫くことで、ナンバーワンになれることも教わった。


 今は5人が歌う「世界に一つだけの花」を聞くことができないのは心底さみしい。だが、心はひとつ。この曲を胸に共に、希望を持って何度だって立ち上がろう。それが「世界に一つだけの花」の持つ力なのだ。(佐藤結衣)