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稲垣吾郎主演映画が2年連続選出 第32回東京国際映画祭コンペ部門に『ばるぼら』『喜劇 愛妻物語』

2019年09月18日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『ばるぼら』(c)Barbara Film Committee

 10月28日から11月5日にかけて、東京・六本木ヒルズほかにて開催される第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品される日本映画として、足立紳監督の『喜劇 愛妻物語』と手塚眞監督の『ばるぼら』の上映が決定した。


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 『喜劇 愛妻物語』は、『百円の恋』で日本アカデミー賞をはじめ数々の脚本賞を受賞した足立が、自身初の自伝的小説『喜劇 愛妻物語』を原作に、自ら脚本・監督を務め映画化した“人情派夫婦活劇”。うだつのあがらない脚本家の夫と、その夫を罵倒し続けながら家計を支える妻の姿を描く。自らをモチーフに描かれた脚本家・豪太を濱田岳が演じ、その妻・チカ役を水川あさみが務めた。


 『ばるぼら』は、手塚治虫が70年代に発表した、禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、様々なタブーに挑戦した問題作を、手塚治虫生誕90周年を記念して初映像化したもの。手塚治虫の実子であり、『白痴』や『ブラックキス』などで知られる手塚眞が監督を務め、撮影監督にはウォン・カーウァイ監督作品で知られるクリストファー・ドイルを招いた。キャストには、人気小説家の美倉洋介役で稲垣吾郎、美倉が新宿の片隅で出会うホームレスのような酔っぱらった少女ばるぼら役で二階堂ふみが決まっている。


 第32回東京国際映画祭コンペティション部門への出品が決まった『喜劇 愛妻物語』の足立監督と『ばるぼら』の手塚監督から喜びのコメントと、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦から選定理由についてのコメントが寄せられている。


<コメント>
■『喜劇 愛妻物語』足立紳監督
この映画に出てくる柳田夫妻は、他人から見ればなぜ一緒に居続けるのか理解に苦しむような夫婦かもしれない。別れればいいのにと思われるかもしれない。罵り合いながら無理矢理一緒に居続けているような未熟な夫婦だ。でもそんな未熟な夫婦の無理矢理な絆というのも、もしかしたら強靭な絆なのかもしれない。夫婦という一対一の面倒くさい人間関係を諦めず、しつこく幸せになることを追い求める彼らの姿は滑稽で生命力に溢れていて、映画で描きたいと思った。そして近頃の日本の社会は未熟で不完全な人たちに不寛容すぎるから、許すことはもちろんのこと、許してもらおうとすることも大切だとこの夫婦を通して描きたかった。


■『ばるぼら』手塚眞監督
第32回東京国際映画祭に参加できることを光栄に思います。手塚治虫生誕90周年に念願の作品を映画化できたのは、まさに芸術の女神(ミューズ)が微笑んでくれた奇跡です。「ばるぼら」は手塚治虫の異色作と言われていますが、ぼくにはストライク・ゾーン。一筋縄ではいかない悪魔主義的な物語は、麗しい稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんの身体を張った競演にクリストファー・ドイルさんの美学が絡まり合って、魅惑的な夢に変容しました。アートとエンターテインメントの境界を揺らぎつつ、その融合を目指した映画です。耽美的な愛と狂気の寓話をどうぞ味わってください。


■東京国際映画祭プログラミング・ディレクター 矢田部吉彦<選定理由について>
『ばるぼら』は手塚眞監督が父・手塚治虫の原作を現代に映画で蘇らせ、稲垣吾郎と二階堂ふみという強力な俳優たちの姿をクリストファー・ドイルのキャメラで鮮烈に切り取るという、様々な点で非常に贅沢で幸福な作品である。耽美で幻想的、魔術的でエロティックな世界観の独創性が、近年の邦画において際立っている。手塚監督の到達点とも呼べる作品であり、コンペへの招聘が祝福となることを期待したい。『喜劇 愛妻物語』は足立紳監督の2作目であるが、脚本家として積み上げたキャリアを自虐すれすれのところで笑いに昇華させる技術に感服し、そして水川あさみと濱田岳のコンビからキャリアハイのド迫力演技を引き出した演出に敬意を表したい。シリアスな作品が多いコンペの中で台風の目となりうるコメディであると信じている。


※手塚眞、手塚治虫の「塚」は旧漢字が正式表記。(リアルサウンド編集部)