9月13日の「モーニングCROSS」(MX系)で、健康社会学者の河合薫氏が正規労働者と非正規労働者の待遇格差について語った。
根本匠前厚労相は今月3日の会見で、正社員になれずにパートで働いている人だけでなく、自ら積極的にパートで働いている人もいると指摘。「多様な働き方」が進んでおり、単純に「正規」「非正規」で切り分けていいのか、と疑問を呈した上で、
「パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者に寄り添った政策を展開して、同一労働同一賃金の実現に向けて全力で取り組んでいく」
と語った。これに河合氏は違和感を抱いたという。(文:石川祐介)
「有期雇用という不安定な働き方では、人間の尊厳を守れない」という考え方
河合氏は「働き方」と「働かせ方」は別、とした上で「非正規労働者の問題は企業の働かせ方に原因がある」と話す。正規も非正規も"働く"という同じ営みをしているのに、雇用形態を理由に昇進昇給がなかったり、社会保障面などで違いが合ったりと企業側が差別しきた。
「『非正規に問題が起きている』と言うのなら、法律の抜け穴をくぐり抜けている企業を罰すればいいだけの話なんです」
個人の働き方を尊重する以前に、企業の不公平な働かせ方に厳しい目を向けるべきだと指摘した。
そもそも、"非正規"という雇用形態はネガティブなイメージがある。「なぜ日本では非正規は当たり前のように賃金が安いのか。これは世界から考えればアブノーマルな感じです。特にヨーロッパでは、(非正規の賃金は)高いです。非正規労働者の権利は守られています」と語る。
「ヨーロッパでは1990年代初頭から非正規の問題が出てきて、『非正規を減らそう』という方向に向かっている。根底にある『有期雇用という不安定な働き方では、人間の尊厳を守れない』という考えから、EUでは基本的に無期雇用です。有期雇用にするときは厳しい条件をクリアしなくてはいけない」
「日本のように正規と非正規が同じ仕事をしているケースは極めて限られています」
イギリスでは非正規の割合は5~10%になっていたり、スウェーデンでは非正規だからといって均等待遇が徹底されていたり、簡単に解雇することはできなかったりなど、日本と違い非正規であっても権利が守られている現状があると語った。
ネット上では、河合氏の解説が誘い水になったのか、「派遣労働者は、企業が一時的に人材が不足しているのを補うためだけに採用しているのだから、正社員より給料を高くすべき」と非正規の待遇改善を訴えるコメントが寄せられた。都合の良い調整弁として非正規労働者を雇用するのなら、待遇面を正規労働者よりも良くしろという主張は納得感はある。
また、派遣会社が取引先から高額なマージンを受け取っている現状を指摘する人もいた。こうした問題にも切り込んでいかなければ状況は変わらないだろう。