役員1人を除く全員が時短の子育て女性である弊社では、子育て中の女性たちの働きやすい環境を常々模索しています。今回は小さな企業でもできる事例をご紹介します。
まず前提として、福利厚生より最も大事なのは、「働き方と働きがい」。ママハピの調査によると、30~40代の未就学児を中心とする子どもの子育て中ママが重視する就業条件は1位が「勤務時間」、2位が「柔軟に休みがとれるか」、3位が「勤務地」でした。
まだまだ男性の家庭進出が進んでいない現在、家事育児の負担が大きいママたちは、移動時間が少ない近場で働きたいと考えています。子どもの帰宅や夕飯づくりに間に合う15時または16時までの勤務が人気傾向です。できるだけ「職場に迷惑をかけたくない」という気持ちからか、子どもの病気や行事で休む場合に柔軟に対応できる制度や文化があるかを気にする方が多く、採用面接でもよく質問されます。
リクルートワークス研究所の調査では、一度離職し再就職した、配偶者と子供のいる女性の多くが、成長実感を持てないと離職しやすくなることがわかっています。子育て女性たちは、働き方と働きがいの均衡点を、それぞれの家庭事情を気にしながら模索をしています。(文:時短ママ戦略活用アドバイザー谷平優美)
ファミリーデーイベントはクライアントの協賛を得るなど、自社のリソースをフル活用
それを前提に、福利厚生の一環として喜ばれているのは例えばこんなことです。
1.外出時のランチ補助
時給1100~1500円で働いているパート社員には、外出時に1000円のランチをとるのはわりに合わないと感じる人もいます。そこで、午後まで業務がある外出の際には1000円までのランチ補助があります。
ちなみにオフィスでもお弁当やコンビニで買ったものを持参する人が多いので、電子レンジと冷蔵庫が欲しい!という要望があってからは設置しました。オフィスグリコでジュースやアイス、ちょっとしたお菓子もオフィス内で買えて、お子さん同伴出勤の場合は活用されています。
2.オフィス環境の改善
広い机・カラフルな椅子にしたり、執務室と別の休憩スペースをつくってみたり、業務用のアロマディフューザーを導入したりしたところ、皆さんの働きやすさが向上しました。アスクルやIKEAなどでセンスがよくて安いものを探す、外注せずに自分たちで組み立てるなど、予算を抑える工夫はいろいろありますね!
ホームセンターで買った絨毯と壁紙を自前で貼りなおしたのですが、「ちょっとしたことで印象がよくなった」と好評でした。
3.定例ランチ会
女性は「話したい」「相手に共感してほしい」という傾向があります。しかし、時短で働く集団は数分も無駄にしたくないので雑談やおしゃべりも休憩時間以外には十分にできません。全員が揃う日も月に数回。そこで全体の定例会議のあとは、オフィス近くのお店を予約して、月1回など定期的に、コミュニケーションをかねたランチ会を設定し会社がランチ代を一部サポートしています。
これを毎月楽しみにしていると話すスタッフもいます。リモートワークでは1人で煮詰まる人が多かったのですが、オフィスで顔をあわせ、こういった場で話す場を増やすことで助け合い文化も強くなり、パフォーマンスが上がりました。ちなみに歓送迎会の場合は会社が全額負担です。
4.親子出勤のためのスペース
プログラミングスクールと場所を併用しているので、通う生徒の兄弟が過ごせるスペースもかねていますが、オフィス出勤時に子連れ出勤となる場合のため、執務室と別のキッズスペースも用意しています。
夏休みは特に居場所に困る小学生・幼稚園生も多く、塗り絵やドリル、ゲームなど持参でいい子に過ごして待っていてくれる子たちが微笑ましいです。
5.ファミリーデー
年に2回ほど、家族全員で交流できる場を用意しています。この1年では、「忘年会」や「収穫体験&流しそうめん」をしました。
「忘年会」では最初に子供たちが、本物そっくりの名刺で名刺交換会をします。その後は、実際にお客様向けにサービスとして開催しているイベントを社員向けにカスタマイズました。アイシングクッキーづくり、工作、親子写真撮影会などのブースを回ってスタンプを集めると豪華賞品がもらえます。お世話になっているクライアント様からも賞品を提供していただきました。自社のリソースを使ってできることを考えてみるといいですね。
「収穫体験&流しそうめん」も、これまたお客様向けに実施していた農園イベントを社員向けに実施したものです。トマトやとうもろこしなどを収穫して、ランチや流しそうめん、スイカ割りを楽しむという企画。パパの参加率はまだまだ低いですが、みんなで楽しみ、仕事中とは違った交流ができました。
あくまで弊社の事例ですが、ちょっとしたことの積み重ねで社員の働きやすさや気持ちが変わり、仕事の質の向上につながっています。大事なのは上から独りよがりの施策を押し付けるのではなく、自社の社員に直接ヒアリングして何を求めているのか知ること。自社でもまず声を聴くところからやってみてはいかがでしょうか?
【筆者プロフィール】
谷平 優美
時短ママ戦略活用アドバイザー/株式会社ルバート代表取締役。早稲田大学商学部卒業後、総合人材サービス会社で新規事業立上げ・執行役員を経て、 株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。WEB企画・マーケティング、法人営業を経て退職。出産前後には専業主婦やフリーランスも経験。サロン講師、就職講座講師やキャリアカウンセリングをしながら、無理ない子育て中の働き方を模索するも待機児童となり認証保育園を利用しながら活動。転職支援・キャリア教育に関わった経験と、出産後に感じた様々な社会への違和感に何か発信をしたいと2012年にママハピを創業。2018年、社名変更後は時短ママのジョブシェア体制で事業運営。J-WAVEやフジテレビライブニュースα、東洋経済、NewsPicksなどメディア実績多数。2児の母。