2019年09月16日 09:41 弁護士ドットコム
皆さんの会社に社内レクリエーションはありますか。社内の親交を深めようと企画されるものですが、その社内レクで大けがをしてしまったという相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者は、会議後に行われた社内レクの「手押し相撲」に参加。相手に押されて台から落ちた際、足のつきどころが悪く、足首を骨折してしまいました。
幸い、手術や入院の必要はありませんでしたが、通院やリハビリが必要になりました。しかし、人事部からは「レクリエーション時の出来事なので、労災にはなりません」と言われたそう。
社内レクは全員参加のもので、相談者は「体育会系の空気感が強く、参加を断れる雰囲気にはない」と話します。さらに、この社内レクは会議の予定として組み込まれていました。
こうした社内イベントで怪我をした際、労災には当たらないのでしょうか。江上裕之弁護士に聞きました。
ーー労災と認められるかどうかの判断基準を教えてください
一般に、労災と認められるためには、「業務」と怪我の間に相当因果関係がなければならないとされています(業務起因性)。
行政の解釈は、業務と怪我の間の因果関係を判断するにあたって、「業務遂行性」があるか、すなわち労働者が使用者の支配下に置かれていたときに発生した事故であることを第一の判断基準としています。
したがって、労災と認められるためには、(1)業務遂行性が認められることを前提として、(2)その業務と怪我との間に因果関係がなければなりません。
過去の裁判例も基本的にこうした行政の解釈と同様の立場をとっています。
ーー相談者のケガは社内レク中のものですが、どう考えられますか
相談者の場合、先ほどの「業務遂行性」が認められるかが問題となります。
こうしたケースについて、行政解釈は、主催者(会社側or従業員側)、目的(研修or懇親)、内容(実際に会議・研修等も行われたorレクリエーションのみしか行われていない)、参加方法(強制or任意)、運営方法(通常の勤務日に開催or休日開催、出勤扱いor欠勤扱い)、費用負担(会社側or参加者側)などを考慮して総合的に判断することとしています。
ーー相談者のケガは労災と認められますか
相談者の場合、主催は会社側で費用負担も会社側、実施日も通常の勤務日のようですが、会社側は任意参加のレクリエーションだという認識のようです。
そのため、レクリエーション中にも業務上の意見交換などを行っていたのか、中座した場合に早退・欠勤扱いになるのか等の事情も踏まえた判断が求められる事案といえそうです。
ーー労災と認められると、どうなりますか
労災と認められると、療養補償、休業補償など治療に専念するために必要な補償を受けられる他、後遺障害が残ってしまった場合には障害補償、万一死亡に至った場合には遺族補償、葬祭料等が支給されることになります。
相談者の場合、労災になるかどうかで、治療費や通院のため欠勤した場合の扱いが変わります。
ーー会社の協力が得られない場合は、どうしたら良いのでしょうか
今回のように、諸々の事情を総合考慮した判断が求められる事案では、労災申請について会社の協力を得られない場合もあるかと思います。
しかし、実務上は、たとえ会社が否定したとしても、やはり労災として救済されるべきと考えられる事案が多々あるように思えます。
こうした場合、会社の協力がなくとも、労災申請を行い、労災にあたるかの判断を求めることも可能ですので、ご不安を抱えておられる方は弁護士への相談をおすすめします。
【取材協力弁護士】
江上 裕之(えがみ・ひろゆき)弁護士
日本労働弁護団・九州労働弁護団所属。主な取り扱い分野は労働問題と医療問
題で、平成24年からは公益社団法人全国労働基準関係団体連合会の委託を受けて、全基連の主催する個別労働紛争処理研修の講師も務めている。
事務所名:岡部・江上法律事務所