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泥酔→タクシー無賃乗車、「本当になにも覚えていない」けど詐欺になる?

2019年09月14日 10:11  弁護士ドットコム

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泥酔した状態でタクシーに乗り、無賃乗車をしてしまったーー。こんな相談が弁護士ドットコムに複数寄せられています。


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ある相談者は、泥酔した状態でタクシーに乗車。翌日気づくと家にいたため、タクシーに乗って帰宅したことは確かですが、かばんを紛失しており恐らく支払いをしていません。警察から呼び出され「なんで逃げたのか」と言われ、「本当になにも覚えていないのですが詐欺罪に当たるのでしょうか」と心配しています。



別の相談者は、警察からの事情聴取で無賃乗車したことを知りました。「お金を取ってくる」と言ったものの、そのまま戻って支払いしなかったようですが、「詳細を聞かれましたが、どうしても思い出せなく、答えられませんでした」と振り返ります。



記憶がない状態での無賃乗車は、罪に問われるのでしょうか。松岡義久弁護士に聞きました。



●運転手を騙すつもりがなければ詐欺罪は成立しない

ーー相談者は、一切記憶がないそうです 泥酔して無賃乗車をしたケースでは、お金を支払う意思があり、お金を自宅に取りに行ったがそのまま寝てしまったような事情があればそもそも運転手を騙す故意がないので詐欺罪は成立しません。 一方、お酒で気が大きくなり、運転手を騙して支払わなかったケースでは、酔っているとはいえ騙すつもりでやっていることには違いなく詐欺罪の構成要件には該当します。ただし、酔いの程度がひどく、物事の善悪の判断がつかないとか、行動を制御できる状態にない場合には責任能力がなく心神喪失で無罪になります。



ーーどのような場合、詐欺罪になりますか



最初から代金を支払うつもりがないにもかかわらず、タクシーに乗車してサービスを受けたり、乗車当初は支払うつもりでも気が変わって降車時に「お金を取ってくる」などと虚偽の事実を述べて運転手をだまして代金の支払いを免れる行為は、詐欺罪(刑の上限は懲役10年)に該当します。



また、比較的多いケースですが、代金の支払いを免れるために逃げようとして運転手と揉み合いになり運転手に怪我をさせた場合には強盗致傷罪となり、より罪が重くなります(刑の上限は無期懲役)。



ーー迷惑になるので、泥酔状態では乗らないことが一番ですね



騙す故意がなかったとか泥酔していて責任能力がなかったとしても、警察からは強く追及される可能性があります。特に運転手を脅したり(強盗)、運転手に怪我をさせた(強盗致傷)ケースではその傾向はより強まることになります。刑事裁判でも主張が認められず有罪となる可能性もあります。



お酒はほどほどにするか、泥酔者がいる場合には一緒に飲む人はある程度酔いがさめるまで一緒にいてあげるとか、タクシー乗車時に運転手と行先やお金のやり取りを代わりにしてあげるなどしたほうがいいでしょう。




【取材協力弁護士】
松岡 義久(まつおか・よしひさ)弁護士
横須賀市内(京急横須賀中央駅徒歩5分、裁判所徒歩2分)で事務所を共同経営するパートナー弁護士。京都大学法学部卒、警察庁(国家Ⅰ種)を退職後、2回目で司法試験合格。相続、交通事故、債務、離婚、犯罪被害者支援、中小企業、行政のトラブル、顧問など幅広い分野を専門に扱う。


事務所名:宮島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.miyajimasougou.com/