2019年09月14日 10:11 弁護士ドットコム
「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年5月に急性覚せい剤中毒で亡くなった和歌山県田辺市の会社経営者・野崎幸助さん(当時77歳)。
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毎日新聞(9月13日)などの報道によると、田辺市は野崎さんの遺言に基づき、遺産を受け取る方針を明らかにしたという。遺産は、現金や有価証券など総額約13億2000万円とのことだ。野崎さんの死から5年前に書かれた遺言書には、全財産を田辺市に寄付する旨が明記されていたという。
しかし、野崎さんには20代の妻や兄弟姉妹がいる。妻は遺産を1円たりとも受け取ることはできないのだろうか。(監修:濵門俊也弁護士)
まず遺言書がなかった場合のことを考えてみたい。この場合、法定相続割合で決まる。妻の法定相続割合は4分の3、兄弟姉妹は4分の1と規定されている。
では、今回のように、遺言書があった場合はどうだろうか。
民法は、一部の法定相続人に対して、最低限の相続財産(遺留分)を確保するための権利(かつて遺留分減殺請求権といわれた権利だが、改正法では遺留分侵害額請求権という)を認めている。
これにより、野崎さんのように市に「全額」寄付する旨の遺言がある場合でも、妻は一定額の相続財産を手にすることができる。つまり、遺言よりも「遺留分」が優先されるのだ。
遺留分を請求するとなると、妻が請求できる割合は被相続人の財産の2分の1となる(金額でいえば、6億6000万円)。そのため、本来の法定相続割合より少なくなることは避けられない。また、兄弟姉妹は「遺留分」を主張することはできない(民法1028条)。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/