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iPhone 11、海外でもトリプルカメラは賛否両論 低価格設定はサービス事業重視の表れか?

2019年09月13日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

iPhone 11およびiPhone 11 Pro/Pro MaxのApple公式仕様画面から画像を抜粋

 先日発表されたiPhone 11シリーズのセールスポイントは、トリプルカメラをはじめとしたカメラ性能の向上だろう。しかし、廉価版に相当する低価格設定も注目に値する。この注目点に関して、海外メディアはAppleのある意図を汲み取っている。


(参考:新型iPhone、性能に一抹の不安? リークされたベンチマークを読み解く


・iPhone 11の低価格が意味すること
 昨年リリースされたiPhone XRの749ドル(約81,000円)より安い 699ドル(日本販売価格は74,800円から)というiPhone 11の価格設定に関して、テック系メディア『BGR』は11日に考察記事を公開した。iPhone 11の低価格設定はAppleがもはやiPhoneというハードウェア製品の販売だけで利益を出そうとはせず、Apple Musicや新しく始まるApple TV+といったサブスクリプションサービスから利益を得よう、というサービス事業重視の姿勢に関係している、と同記事は指摘する。


 AppleやMicrosoftのマーケティング部門での勤務経験があり、現在はアナリストとして活躍しているBen Thompson氏は、昨年発表されたiPhone XR/XS/XS Maxのなかでいちばん売れたのがiPhone XRだったことを引き合いに出して、iPhoneユーザは高額化に嫌気がさしている、と自身のブログで語っている。そのうえで低価格設定のiPhone 11こそがもっとも売れる可能性があり、さらには各種サブスクリプションサービスやApple Watchのような補完的な製品もより売れるだろう、と分析した。


 アメリカ大手メディア『CNN』も、iPhone 11に関してBGRと同様の見解を示した記事を公開した。その記事では直近四半期のAppleの決算において、iPhoneの売上が12%減少しているにも関わらず、全体の収益を伸ばしたことに言及している。この事実は、同社がすでにサービス事業重視のビジネス戦略にシフトしつつあることを裏付けている。


・iPhone 11かiPhone 11 Proの二択か
 iPhone 11が低価格なのに加えてiPhone XRとiPhone 8も値下げになったことで、新たにiPhoneを購入する場合の選択肢が増えた。こうした事態を受けてUS版『Forbes』は11日、「iPhone 11 vs iPhone XR:どちらがカネを払う価値があるのか」と題した記事を公開した。その記事によると、もっとも節約できる選択肢はiPhone 8を購入することではあるがFaceIDに非対応といった明らかな欠点があるので、コストを抑えてiPhoneを入手する現実的な選択肢はiPhone 11かiPhone XRのどちらかである。iPhone 11とiPhone XRを比較した場合、優れたカメラ性能や改善されたバッテリー、さらには耐水性が向上していることから、多少高額ではあってもiPhone 11がおすすめである。


 Apple製品専門ニュースメディア『Cult of Mac』は、「iPhone 11 vs Pro vs Pro Max:買うべきはどれか?」と題した記事を公開している。この記事でもiPhone 8を購入することがもっともコストを抑える選択肢と述べたうえで、もう少し購入予算に余裕があってiPhone 11シリーズのどれを買うべきか悩む場合について論じている。iPhone 11は上位機種である11 Pro/11 Pro Maxと同じA13 Bionicチップを実装し、カラーバリエーションも豊富なことから悪くない選択肢である。しかし、カメラ性能を重視するならiPhone 11 Proを購入すべきである。iPhone 11 Proは画面サイズが6.1インチのiPhone 11より小さい5.8インチなことからも、iPhoneファンに最適な機種とも言える。iPhone 11 Pro Maxに関しては、大画面のスマホが欲しいというニーズがなければ選択する価値はないだろう。


 以上のような海外メディアの論評をまとめると、コストパフォーマンス重視ならiPhone 11、カメラ性能にこだわりたいならiPhone 11 Pro、という極めて妥当な結論が導かれる。


・ある恐怖を引き起こすトリプルカメラ
 iPhone 11シリーズのセールスポイントであるカメラ性能に関しては、海外メディアの評価が分かれている。テック系メディア『Techradar』が12日に公開した記事では、同シリーズの望遠レンズや広角レンズはApple以外のスマホメーカーの製品にも実装されているものも、それらの機能の使い勝手が優れていると称賛されている。また前出の『Cult of Mac』の他の記事は、同シリーズで新しく実装されたハイキ―照明(モノ)のポートレートモードを「フォトグラファーのスタジオ撮影をタップ1回で実現できる」と表現して絶賛している。


 その一方で多数の海外メディアが、iPhone 11 Pro/Pro Maxに実装されたトリプルカメラが「集合体恐怖症」を引き起こすことを指摘している。集合体恐怖症とは無数にあいた穴に恐怖や嫌悪を抱く症状である。ライフスタイル系メディア『Prevention』が11日に公開したトリプルカメラを報じた記事は、300人の男女に対して集合体恐怖症を引き起こすような画像を見せたところ、男性の10人に1人、女性の5人の1人が嫌悪感を抱いたと報告する心理実験結果を引用している。この報告を信じるならば、集合体恐怖症は極めて稀な症状とも言えないようだ。


 以上の海外メディアの論評をまとめると、トリプルカメラに見られるようにiPhoneシリーズは今後もハードウェア的に進化するだろうが、これからは「Appleの各種サブスクリプションサービスを利用できるスマホ」という観点から最新機種を評価することが必要になるのではないだろうか。


(吉本幸記)