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武田真治、『凪のお暇』スナック・ママ役にも遊び心 30年で磨き上げた肉体+演技で進化を見せる

2019年09月13日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

武田真治『凪のお暇』(c)TBS

 個性的なキャラクターのオンパレードとなっている『凪のお暇』(TBS系)。なかでも異彩を放つのは、やはりスナック「バブル 2号店」のママ・中禅寺森蔵役を演じる武田真治だ。


 武田といえば、俳優、サックス奏者、最近は『みんなで筋肉体操』(NHK総合)への出演など筋肉ブームを牽引する肉体派としてもおなじみ。いや、おなじみどころか、若い世代にとっては“武田=筋肉タレント”といっても過言ではないほどの活躍ぶりである。


 だが、『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』出身の俳優といえば武田真治、実写版『南くんの恋人』(テレビ朝日系)といえば武田真治&高橋由美子コンビが忘れられない筆者としては、バラエティで飛躍する武田を観れば観るほど、役者としての彼をもっと堪能したい(そして、若い世代にも俳優としての武田を知ってほしい)と寂しくもあった。


 そんな中、テレビの中に現れたのが、鍛え上げられた体に、美しく整ったヒゲ、光り輝くピアスで彩られたスナックママ……驚くほど、似合っているではないか。


【写真】慎二を見守るママ


 とにかく見た目にインパクトのあるママだが、何より胸に刺さる名言が魅力。第1話で、愛する凪(黒木華)から「私に一切関わらないで」と厳しい言葉を浴びせられ、「アイツのこと、好きだった」と号泣する慎二(高橋一生)に対し「超不憫~」と眉を下げて共感するというラストシーンに、いきなり引き込まれてしまった。


 その後も慎二の愚痴に見せかけた恋愛相談に、的確なアドバイスを送って強烈な印象を残し続けてきたママ。第5話で迷子になった凪を受け入れ、雇うことになってからは、慎二に限らず登場人物たちの相談役となり、視聴者はますますママが持つ言葉の力の虜となる。


 とりわけ第6話では、「会話のキャッチボールがうまくできるようになりたい」と話す凪に「愛想笑いと上っ面の相づちをやめることね」とピシャリ。「そもそもなんで会話のボールを投げてもらう前提なの? 何様?」「(会話のボールを自分から投げられない理由は)あんたが相手に興味がないからよ」と、無意識に上から目線であった凪の意識改革を行うと、SNSではその名言を称えるコメントが次々並んだ。


 一方、第7話では、同時間帯に日本テレビ系で『天空の城ラピュタ』が放送されていることにかけ、常連客に鶏の照り焼き丼を振る舞う際に「“バルス”、どうぞ~」と発言して大きな話題に。また第8話で初めて明かされた“中禅寺森蔵”という役名は、武田自身が同局の『ぴったんこカン・カン』に出演した際、高橋一生、安住紳一郎と共に名付けたもの。物語の終盤で役名が決まるというのも珍しく、ひたすら遊び心が詰まった人物だ。


 そんな森蔵が、“こじらせ男子”慎二、“ふんわりモテ男子”ゴン(中村倫也)と、心ときめくキャラクターが渋滞するドラマの中で、彼らに負けないオーラを放つのは、きっとキャラクター性が良いからだけではない。


 武田は著書『優雅な肉体が最高の復讐である。』(幻冬舎)で、「厚い胸板はお金では買えません」と語っているのだが、これはつまり、どんな人であれ、苦痛に耐えてトレーニングを重ねなければ美しい筋肉は手に入らないということ。真面目な話、自分に言い訳をせずに追い込むことで維持される筋肉には、たしかに説得力がある。


 中禅寺森蔵という役柄には、武田曰く“人生の名刺”である肉体と、キャリア約30年を誇る役者としての技量によって、嫌味なく人々を諭す力が生まれた。さらにはバラエティで魅せるユーモラスな人柄が相乗効果を成し、今の武田が演じるからこそ唯一無二の“最強ママ”として輝いたのだ。


 人生をリセットしたい人にも、そうでない人にも、なぜだかスッと沁みるママ(=武田)の名言。『凪のお暇』は残り2話。厳しくも温かいその言葉に、ありがたく耳を傾けたい。


(nakamura omame)