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日向坂46 上村ひなのはアイドルとして逸材だーー初ソロ曲から歌声の魅力を分析

2019年09月12日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

日向坂46『こんなに好きになっちゃっていいの?』(TYPEB)

 10月2日発売の日向坂46の3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』TYPEB収録の三期生・上村ひなのによるソロ曲「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」が解禁された。上村の予想外のクールかつ力強い歌声に驚愕と絶賛の嵐となっている。


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 昨年、けやき坂46(現・日向坂46)に唯一の三期生として加入した上村ひなのは、現在15歳の中学3年生。「いつでもどこでも変化球、ひなのなの」がキャッチフレーズで、初お披露目となった『欅坂46 2期生/けやき坂46 3期生「お見立て会」』(2018年12月10日)から『ひらがなくりすます2018』(同年12月11日~13日)まで、4日連続で日本武道館のステージに立つという奇跡的なデビューを飾った。たった1人での新加入という環境や愛らしい容姿から、当初は”長濱ねるの再来”と呼ばれることもあった。だが、グループに溶け込んでいくうちに、真面目さとシュールさを兼ね備えた特異なキャラが浸透していく。大人にはない発想力と中学生とは思えない切り返しの巧さは何が飛び出すか分からない。まさに変化球の活躍ぶりだ。今やファンだけでなく、グループ全体をも幸福にさせる唯一無二の存在といえるだろう。


 これまで上村の歌唱力は未知数だった。SHOWROOMでは、オーディションで西野七瀬のソロ曲「もう少しの夢」を歌ったことを振り返り「高音がでなくて私。音痴ですね」と自己評価していたものの、『お見立て会』では「誰よりも高く跳べ!」でセンターに抜擢されたほか、日向坂のライブでも堂々としたパフォーマンスを見せており、アイドルとしての逸材ぶりを発揮している。


 そして、その歌声が明らかになったのが、加藤史帆と渡邉美穂との三世代ユニットによるカップリング曲「やさしさが邪魔をする」だった。見た目とは裏腹に低音でしっかりとした歌声を披露。小坂菜緒は「意外とすっごいかっこいい声出すんだよね。めっちゃうまい」と上村の歌声を絶賛している。『MARQUEE vol.133』のインタビューでは、今年の目標として「いつかはソロパートを頂いて自分の気持ちや表現したいことを歌にのせて伝えられるように頑張りたい」と話していた上村だったが、今回のソロ曲で早くもその夢を実現させた。


 同曲は、9月9日放送の『ゆうがたパラダイス』(NHK-FM)で初解禁された。冒頭のパワフルでかっこいい豪速球な歌声には、彼女の愛らしい容姿とのギャップも相まって一瞬で聴き惚れてしまう。「やさしさが邪魔をする」でもその歌声は十分に発揮されていたものの、楽曲とのバランスを考えてか少々抑え目に歌われていた印象だった。しかし、同曲ではフルスロットルで声を張っている。


 鈴木亜美の歌声に似ているという声も多いようだ。特に小室哲哉がプロデュースしていた時期の歌声には重なる部分がある。小室の楽曲は、そのアーティストが出せる音域の限界に挑戦しているものが多いが鈴木の楽曲もそうだった。そして、それが結果として彼女の力強さやセクシーな一面を引き出していたのだ。上村の歌声にはそれに近いものを感じる。


 また、アレンジはロック調のダンスミュージック。今までの欅坂や日向坂にはない路線の楽曲となっておりその意外性には感心させられる。さらに、文章のような長いタイトルや、曲中のポエトリーリーディングなど、上村らしい変化に富んだ楽曲となっているのも面白い。


 またこのタイミングで、上村と同じく坂道合同オーディションで合格した研究生15人が1年の時を経てお披露目となる。今後、日向坂にも研究生から新メンバーが加入することだろう。歪ではあるが、上村と研究生たちは同期にあたる。近い将来、長濱とけやき坂の関係性のようなかたちで『おもてなし会』が行われてもおかしくない。


 日向坂になってから初のソロ楽曲となる「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」。二期生メンバーではなく上村がソロ楽曲に抜擢されたのは、それに見合う実力と未来があると制作側が期待しているからだろう。そして、その期待に見事に応えている上村はやはり逸材だ。3rdシングルの表題曲「こんなに好きになっちゃっていいの?」に並び、上村のアイドル伝説の始まりとなる同曲にもぜひ注目したい。(本 手)