2019年09月10日 14:41 弁護士ドットコム
愛知県内で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれたことをめぐり、同芸術祭に参加するアーティストのネットワークが9月10日、東京・丸の内の外国特派員協会で記者会見を開き、展示の再開を目指すためのプロジェクトを立ち上げると発表した。
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このネットワーク「ReFreedom_Aichi」は、「表現の不自由展・その後」が、テロ予告を含む抗議のメールや電話を受けて、中止に追い込まれたことを受けて、一部の海外アーティストが展示をボイコットしたことがきっかけで発足した。「あいちトリエンナーレ」に参加するアーティスト35組がこの日までに名前を連ねている。
「ReFreedom_Aichi」は、次のような5つのプロジェクトを発表した。
(1)ネゴシエーション:問題に対する具体的な提案や、県や運営側への交渉や要求、再開までのロードマップなどを作成する
(2)セキュリティ:アーティストたちが自分たちで市民からの電話を受けるコールセンターを立ち上げる
(3)アーカイブ:ホームページを立ち上げて資料収集する
(4)ファンディング:クラウドファンディングで資金を創出する
(5)プロトコル:「あいちプロトコル(宣言)」(大村秀章・愛知県知事が「表現の自由」をアピールするために「あいちプロトコル」を提案していた)をアーティスト主導で制作・提出する
この日の会見に登壇した「ReFreedom_Aichi」のメンバーで、あいちトリエンナーレの本展と「表現の不自由展・その後」に出展している映像作家の小泉明郎さんは「『表現の自由』の根源が崩壊するのか、それともここで食い止めるのか、という分岐点にあると思っている」と語った。そのうえで、再開するために「関係者や観客との連帯があって初めて可能だ」と熱意を込めた。
また、「表現の不自由展・その後」に出展しているアーティストグループ「Chim↑Pom」の卯城竜太さんは「自分で自分の人生を決める、他人の考えに強要されない生き方をするということは、まずは自分でみて、自分で考えて、自分で知って、自分で表現・表明することからしか、自由や権利は生まれません」と訴えた。
小泉さんは会見の冒頭、次のようにプロジェクトの立ち上げを宣言した。
「日本人の私たちにとって、『表現の自由』という言葉を聞いて、抽象的というか、ちょっとふわふわしたように感じる人が多いと思っています。でも、80年前、私たちの祖父母は、自由がない状況が、どれだけ危険な社会かということを肌感覚として知っていました。私たちアーティストもこの5年間、美術館という空間でできる表現の幅がどんどん狭くなっているという体験をしています。
私たちアーティストは、表現の自由が不完全なもので、それには限度があるということは承知しています。でも、不完全であるからといって『表現の自由』が必要でないかというと、そうではないし、『表現の自由』に対する責任は残ります。
この責任は、私たちアーティストや津田大介監督が負えるような種類の軽い責任ではありません。なぜなら、この自由を獲得するために、歴史上、何百万、何千万という人たちの死によって、この責任が成り立っているからです。
『表現の自由』はもちろん『言論の自由』とつながっています。ということは、私たちの『知る権利』に直結しています。ということは、一人ひとりの人間が『自分の考えを自分で決める自由』に直結しています。一人ひとりの人間が『自分の人生を決める自由』にも直結しています。
あいちトリエンナーレでは、この自由の根源が崩壊するのか、それともここで食い止めるのか、という分岐点にあると思っています。
いま作品展示を中止しているタニア・ブルゲラというキューバ人のアーティストがいます。彼女はキャリアを通じて、数々の検閲を体験してきたし、数々の検閲を見てきました。それでも彼女にとって、『一度検閲されたものが、また置かれる、その扉が開かれる経験は一度もしたことがない。でも、今回はそういうことが起こる可能性がある。奇跡が起こるのではないか』という言葉を残して、彼女は日本を去りました。
ここに集まっているアーティスト全員は、その奇跡は起こさなければいけないと信じています。でも、それを起こすには、私たちアーティストの力だけでは足りません。関係者の協力も必要だし、観客との連帯によって、初めてそれが可能です。奇跡を一緒に起こすために、私たちは『ReFreedom_Aichi』(リフリーダム・アイチ)を立ち上げます」
(ウェブサイト)「ReFreedom_Aichi」
https://www.refreedomaichi.net/
(クラウドファンディング)ReFreedom_Aichi――あいトリ2019を「表現の自由」のシンボルへ
https://camp-fire.jp/projects/view/195875