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当日緊急参戦なのにカオスな天候変化と波乱に見舞われたカルソニック千代勝正「もうちょっといいところを見せたかった」

2019年09月09日 11:01  AUTOSPORT web

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2019年のスーパーGT第6戦オートポリスで急きょカルソニック IMPUL GT-Rのステアリングを握った千代勝正
断続的に雨がコースを襲い、3度セーフティカーが導入されるなど荒れた展開となった2019年のスーパーGT第6戦オートポリス決勝。この混沌としたレースへ急きょ代役としてカルソニック IMPUL GT-Rをドライブし、チームの完走に貢献した千代勝正は「短い時間のなかでやるべき仕事できた」としつつも悔しさも覗かせた。

 カルソニック IMPUL GT-Rは今シーズン、佐々木大樹とジェームズ・ロシターの2名をレギュラードライバーに据えてスーパーGTを戦っているが、第6戦では7日(土)の予選日からロシターが耳の不調を訴え、検査のため決勝への参加は見送ることに。

 そこでロシターの代役として白羽の矢が立ったのが、テレビ番組の解説としてサーキットを訪れていた千代だった。

「朝サーキットに到着してすぐ、9時30分くらいには最初の連絡がありました」と千代。

「ライセンス関連やフィジカル的な面も含めて運転できる状況かと聞かれて、できますと答えました。ヘルメットなどの装備品は持ってきていませんでしたが、なんとか準備してくれるとのこでした。そのあとチームから状況を伝えられて、もしかしたら(ピンチヒッターを)頼むかもしれないと言われたんです」と千代。

 ただ、千代の準備は出来ていても、事前の登録はされておらずイレギュラーの参戦となるため、他のチームの承認などの手続きを済ませなければならなかった。

「オーガナイザーや審査委員会などの確認を経て、12時に行われる監督会議で全チームから許諾が得られないと出場できないのですが、12時までの間に準備を進めていました」と千代。解説の仕事でサーキットに来ていたとはいえ、心と体の準備は出来ていた。

「今年はニッサンとGT500のリザーブドライバーの契約もしているんですよ。日頃からトレーニングもしていますし、今回のオートポリスに向けてのシミュレーターも経験していました。自前の装備品については予選後にいきなりの話だったので間に合いませんでしたけど準備はできていました」

 千代の方でも、本来の仕事のテレビ解説の代役をニッサン陣営のGT500アドバイザーでもある本山哲にお願いすることができた。

「(テレビ東京系列の番組)『GTプラス』で解説を務める予定でしたが、それは本山さんに代わっていただきました。だから、僕にとって問題だったのは初めて乗る12号車のセッティングや(ブリヂストン)タイヤに慣れることでしたね」

 実際には翌日の関東を直撃する台風15号の影響が考慮されて、本山と同じく解説を務めた中尾明慶さんはスケジュールの都合からレースの途中で帰京。本山はひとりで解説を務めることになったという。

 こうして装備品一式を借り、青いレーシングスーツに身を包んだ千代は、決勝直前に行われた20分間のウォームアップ走行に参加。計測4周をこなすとセッション2番手タイムとなる1分38秒822のベストタイムを刻んでみせた。
自分の役割を果たしつつ、混乱の第2スティントでチェッカーまでマシンを導いたカルソニック IMPUL GT-Rの千代

 このカルソニックGT-R初ドライブで「バランス的に若干良くないところ」を見つけたという千代はチームにセッティングの変更を提案。チームは千代のコメントを受けてセット変更をすると、レギュラーの佐々木もマシンフィーリングが改善されたと好印象を得たという。

 迎えた決勝では参加確認終了後にドライバーを変更したとして10秒のペナルティストップを与えられたが、直前のセット変更も功を奏し、第1スティントを担当した佐々木が粘りの走りで最後尾から着実にポジションを上げていく。

 しかし、佐々木から後半スティントを任された千代にドライバー交代しようとピットインした際、チームインパルの隣、42番ピットを使うNILZZ Racingの植毛GO&FUN GT-Rが停車に失敗。そのためインパルは作業完了後にマシンをバックさせてピットアウトしなければならずタイムをロスしてしまう。

 すると、この間に暫定トップだったリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rに先行されて周回遅れとなると、直後に2度目のセーフティカーが導入されてしまった。

「もしバックする必要がなかったら、24号車(リアライズコーポレーション ADVAN GT-R)の前でコースに復帰できていたので、直後のセーフティカーで1周分、得していたはずです」と千代。

 加えて、このセーフティカー明けのリスタートでは、雨で濡れた1コーナーへ履き慣れないブリヂストンタイヤの冷え切った新品スリックで飛び込まねばならずコースオフ。クラッシュは免れたものの、さらに大きく後退してしまう。

「路面は濡れた状態でタイヤも冷えていたので、かなり慎重にアクセルを踏んでいきました。しかし僕はブリヂストンタイヤのアウトラップパフォーマンスも知らないし、経験のない完全な新品タイヤだったので……ちょっとカッコ悪かったですね」

 レース残り15周前後のタイミングではスリックタイヤからウエットタイヤへ履き替える緊急ピットインを行ったものの、その後は路面が急速にドライコンディションへ変化したことでタイヤがコンディションへマッチせず。それでも千代はわずか4周の走行のみで臨んだ2019年シーズン初のスーパーGTシリーズ戦、雨で混沌としたオートポリス戦でチームの12位完走に貢献した。

 2019年のスーパーGT初レースを終えた千代は「ウエットでもドライでも、いいペースで走れるときもあって手応えを感じていただけに残念です。大樹も『クルマはすごく良くなりました』と言ってくれていた」とレースをふり返った。

「次のSUGO戦でチーム・インパルがいい結果を出せればいいですね。なにより(ジェームス)ロシター選手も今回決勝で乗りたかっただろうと思いますし、まずは彼の回復が一番です」

「それでも代役として、短い時間のなかでやるべき仕事はできたかなと。本当はもうちょっといいところを見せたかったなと思います。このフィールドで戦える手応えは充分に感じましたし、またチャレンジしたいという気持ちが強くなりました」