電動プロトタイプのレコードブレイカーとして世界各地でタイムアタックに挑戦している『フォルクスワーゲンID.R.』が、9月2日に中国湖南省の世界的景勝地、天門山の『Big Gate Road(天門山大門道路)』でのチャレンジを完遂。ロマン・デュマが見事に完走を果たし、7分38秒585の公式記録を樹立した。
8年の建設期間を経て2006年に完成した"空飛ぶドラゴン"の異名を持つ天空のワインディング『ビッグゲート・ロード』は、全長約11km、99のタイトコーナーからなり、131.5mもの高さを持つ天然の要害”Heaven’s Gate(天国の門)”をくぐり抜けながら断崖絶壁をいく、超難関ワインディングロードとなっている。
このコース上には短い全開区間となるストレート、時速230kmの最高速を誇る高速ワインディングセクション、狭いトンネル内でのハードブレーキングなど、非常にスリリングなレイアウトが含まれている。
PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムでのEVレコード樹立を目指して誕生した『フォルクスワーゲンID.R.』は、2018年大会を7分57秒148という、EVに限らず歴代最速のレコードで制して以降、ドイツ・ニュルブルクリンク、イギリス・グッドウッド・フェステバル・オブ・スピードのヒルクライムなど、直近15カ月で5つの場所で主要EVレコードを樹立してきた。
そして満を持しての電気自動車大国、中国への上陸を果たしたID.R.は、この壮大な"チャイナ・チャレンジ"に合わせて、ナショナルカラーのレッドを基調としたカラーリングに一新。2020年に市場投入が予定される、フォルクスワーゲンの電動ブランド"ID."の先陣を切って、中国の一般公道を走行することとなった。
「本当に壮観なワインディングでの新たな記録、フォルクスワーゲンと"ID."ブランドの大使である『フォルクスワーゲンID.R.』は、この中国初の記録をもって、現時点でのエレクトロニック・モビリティにどんなパフォーマンスが可能なのか、再び世界に示すことができた」と語るのは、VW市販車部門のCOO(最高執行責任者)を務めるラルフ・ブランドシュテッター。
「ここまでの経緯を見ても明らかなように、ID.R.は電動モビリティとして既存の記録を打ち破るばかりか、新たなベンチマークを打ち立てることさえ可能だ。そしてなにより、ID.R.は未来のモビリティがどれほどエモーショナルで刺激的かを示してくれている」
そして、このバンピーで荒れた公道のワインディングで、プロトタイプEVのステアリングを握ったデュマは、アタックを振り返るとともに次のように付け加えた。
「今回、天門山のビッグゲート・ロードで記録を作れた瞬間を、僕は今後も忘れないだろう。それほど刺激的で、スペクタクルなドライブだったよ」と、ID.R.登場以来一貫してステアリングを握ってきたスペシャリストのデュマ。
「このマシンで、EV史上初ばかりか、中国で初の公道タイムアタックレコードを樹立できたことを誇りに思う。僕らが事前に持っていた情報はほんのわずかで、テストも満足に行えなかった。そのことがこの挑戦を本当に困難なものにしたんだ」
「ステージは信じられないくらい狭く、曲がりくねっていて、尋常じゃない難易度だったが、電動モーターと4輪トルクベクタリングを備えるID.R.のドライブは心の底から楽しかった」
「短い全開区間では、電気モーターのビッグトルクが大きな武器になった。そして高速セクションではエアロダイナミクス性能が、僕にさらなるトラクションを与えてくれたよ」
これで北米、欧州、中国でEVタイムレコードの保持車となった『フォルクスワーゲンID.R.』は、この後、9月10日に開幕するIAAフランクフルト国際モーターショーでの展示に向け空輸され、同じ会場ではVWの電動ブランド・ロードカーの第1弾モデルとなる『ID.3』のワールドプレミアが予定されている。