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入り乱れるドライとウエットタイヤ。ピットの大混乱を乗り越えDENSOが今季初優勝【スーパーGT第6戦決勝】

2019年09月08日 20:21  AUTOSPORT web

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ウェットタイヤへの交換タイミングが絶妙でトップに躍り出たDENSO KOBELCO SARD LC500
2019年は初秋の9月に開催カレンダーを移したオートポリスでのスーパーGT第6戦は、天候に翻弄される大波乱のレース展開となり、5番グリッドスタートのDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネン/中山雄一組が今季初優勝。中山はGT500昇格ルーキーイヤーでの初勝利を手にした。

 昨季は10月開催の第7戦シーズン天王山として開催されたオートポリスは、2019年は第6戦へ移動。積算ウエイトハンデ(WH)をフルに搭載する最後のラウンドとなり、予選ではその序列が如実に反映される展開となった。

 ここまで2連勝を挙げランキング首位、数値上は120kgのWHを課されているWAKO'S 4CR LC500は予選14番手に沈み、17号車KEIHIN NSX-GT、8号車ARTA NSX-GTのホンダ勢がフロントロウを占拠。セカンドロウにはニッサン陣営最上位でWH28kgのリアライズコーポレーション ADVAN GT-R、同WH48kgのレクサス、au TOM'S LC500が並んだ。

 土曜予選後に夕立のあった大分県日田市の阿蘇地域一帯は、昨日までの台風13号が残した影響や続く台風15号の接近で午後からの降雨が予想されるなか、11時55分からの決勝前ウォームアップ走行はなんとかドライのままスタート。このセッションでは12号車カルソニック IMPUL GT-Rのジェームス・ロシターが予選終了後に急病を発症したため、現地入りしていた千代勝正が急遽代役でステアリングを握った。

 そんな普段とは違う流れが他車にも伝播したか、ニッサンのエースカーであるMOTUL AUTECH GT-Rを走らせるロニー・クインタレッリが20分のセッション序盤にコースオフを喫し、ピットでのマシン確認のため貴重な走行時間を失うと、残り3分のところでポールシッターのKEIHIN NSX-GTがコースサイドにマシンを止めるまさかのトラブルが発生。これで赤旗も出るなど、天候を含め決勝を前にして大波乱を予感させた。

 その後、オンタイムでのスタート進行を経て14時30分にパレードラップがスタート。マシン回収からグリッドへの試走に間に合った17号車、塚越広大が最前列からARTA伊沢拓也と並びサイド・バイ・サイドでドライ路面の1コーナーへ飛び込み、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rのヤン・マーデンボロー、au TOM'S LC500中嶋一貴が続いていく。

 各車、タイヤのライフに気を使いながらも、気温27度、路面温度33度のコンディションの中、首位を守った塚越はオープニングラップだけで2秒299のギャップを築いてみせる。

 しかしその直後、セクター3に入った複合コーナー入り口でRAYBRIG NSX-GTの山本尚貴がフロントからバリアに衝突している映像が飛び込んでくる。これでセーフティカー(SC)導入が宣言され、いきなりの仕切り直しとなる。

 7周目にリジュームとなったレースは、ウェービングを見せてホームストレートを通過したKEIHINの塚越が1分36秒679のファステストを記録して逃げを打つ。12周目には12号車カルソニック IMPUL GT-Rが登録ドライバーの交代による10秒のピットストップペナルティ消化のためピットロードへ。その間に、GT300のバックマーカー処理を絡めた24号車リアライズのヤン・マーデンボローがARTAの伊沢拓也を仕留めて2番手に浮上する。


 すると翌ラップには4番手のau TOM'S中嶋一貴も続き、16周目にはDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンもオーバーテイクを決め、タイヤチョイスか路面状況か、はたまたいつもの問題(ピックアップ)か。苦しむ伊沢は5番手に後退してしまう。

 20周を越えた頃、1コーナー付近にはついに雨粒が落ち始め、各ドライバーがワイパーを作動させる状況へと急変。するとそのコンディションに乗じて7番手のZENT CERUMO LC500立川祐路が仕掛け、ウエットの1コーナーでKeePer TOM'S LC500のニック・キャシディをスリック勝負でパスしていく。

 そのまま2コーナーに向けCRAFTSPORT MOTUL GT-Rにも挑んだ立川だったが、ここでキャシディが動物的バトルセンスを披露し、2台をまとめて抜き去り6番手を手にすると、続く24周目には同じく濡れたセクター1で伊沢も捕まえ、性能調整2ランクダウンのマシンでトップ5圏内に上がってくる。

 雨は局所的にコースを濡らしたに留まりピットウインドウが近づいてくると、上位勢では30周目に37号車キャシディが先陣を切ってピットへ。36.1秒の静止時間で平川亮にスイッチしドライタイヤを装着してコースへと復帰。すると直後にホームストレートからセクター3にかけて降雨が強まり、滑りやすい路面への注意を喚起するオイルフラッグが出されるまでに。

 その直後、大混乱が発生する。34周目にau TOM'S LC500がスリックタイヤを装着して37.8秒でピットアウトした頃、セクター2でGT300クラスの車両がコース上でストップ。それを見たGT500クラスの上位勢はチェンジオーバーのタイミングを待たずにSCの可能性を考慮し、35周目に続々とピットへと突入。

 レクサス陣営では両脇のピットボックスに挟まれたZENT CERUMO LC500が切り返しのピットアウトとなり、先を急いだDENSO KOBELCO SARD LC500と危うく交錯する事態になり、その2台の背後でファストレーンに出た19号車WedsSport ADVAN LC500には、アンセーフリリースのGT300クラスが側面にヒットするように並びかけてくる。

 同時にコース上ではさらに雨量増加でスピンを喫するマシンも現れたため、ここで2度目のSC導入が宣言される。結果的にステイアウトとなった上位3台、リアライズ、CRAFTSPORT、MOTUL AUTECHのGT-R勢、そしてピットアウトしてきた後続ものうちトムス以外のレクサス陣営はウエットタイヤを装着しているとみられ、SCピリオド中に水煙が上がるほどの増した雨量に対し、リスタート後のレインタイヤ交換でもピットレーンのさらなる混雑が予想された。

 39周目のホームストレート上で両クラスの隊列が整理され、SC先導走行が再開される頃には雨自体は止んだものの、依然としてトラック上の水量は維持されたまま。30周目に37度まで上昇した路面温度もこのシャワーによって30度まで急降下し、41周目のリスタートで先頭のGT-Rが3台ともにピットへ。ここでニッサン勢はスリックタイヤをチョイス。

 1コーナーでは後方でステイしていたカルソニックGT-Rがたまらずコースオフ。ドライバー交代を終えて実質トップだったKEIHINもまったくトラクションが掛からず、後方から迫ってきたレクサス勢にあっさりと捕まって5番手に後退してしまう。

 GT300クラスも含めスリックタイヤで堪えようとしたマシンがスピンを喫し、43周目にこの日3度目のSCがコースイン。このピットレーン・クローズで、レインタイヤへのスイッチを必要とした23号車MOTUL GT-Rの松田次生はストレートでピットロードに向かって進路を変えるも、ピットへ戻ることができずにメインストレートに急きょラインを変える。


 これでトップランを手に入れたのは、ピットレーンでZENT石浦宏明をかすめながら追い抜いた中山雄一のDENSO KOBELCOとなり、3番手にWedsSport ADVAN LC500坪井翔という、レインタイヤ装着車、そしてレクサス陣営3台が表彰台圏内を占めることに。

 しかし47周目のリグループ時には日差しが戻り、降ったり止んだりの不安定な状況が続くと、隊列を引っ張ったSC先導は49周終了時点で終了。50周突入時点でレースが再開されるが、首位DENSOと2番手ZENTの間に入っていたバックマーカーのMOTUL MUGEN NSX-GTがスリックを装着していたため、助走体制に入ることが出来ず。WedsSport坪井が実質2番手のZENTに11秒という大きなマージンを持って1コーナーへと入っていく。

 一方、その後方ではGT-R勢を中心にスリック装着車が軒並みピットロードへとなだれ込む。先頭のDENSOは1周で12秒191のマージンを築いたのと対照的に、3番手のWedsSportがズルズル後退すると、43周目に再度ピットでウエットタイヤに履き替えていたKEIHINが逆襲をみせる。

 KEIHINのベルトラン・バゲットは53周目のセクター1から石浦に襲いかかると、第2ヘアピンでインを突き2番手に浮上。65周のチェッカーまでに、首位を捉えるべく猛チャージを見せ秒単位で差を詰めていく。

 残り10周、首位争いが8秒以内に縮まっていく一方、3番手石浦の背後には同じタイミングでウエットタイヤを選択していたARTA野尻智紀が迫ってくる。

 そして残り5周で先頭2台の差は3秒994。続く周回には3秒365となるも、追撃はここまで。DENSOが2019年初勝利を挙げ、中山雄一にとってはGT500ルーキーイヤーでの初優勝となった。

 2位KEIHINに続き、3位には雨のなかスリックタイヤで走り続け、56周目の1コーナーでスピンを喫するも素早く体制を立て直し、チェッカー1ラップ前にARTA、そしてファイナルラップのセクター3でZENTを仕留めたKeePerの平川が入り、最後のポディウムをもぎ取っている。

 これでレクサス陣営は1997年のスープラで記録した1シーズンタイ記録となるシーズン5連勝を記録すると同時に、ランキング首位のWAKO'Sもウエットへの交換タイミングを合わせて6位に食い込み、タイトルに向け貴重な5ポイントを加算した。次戦はウエイトハンデの半減する第7戦SUGOでタイトルの座を盤石にしてしまうのか、それともホンダ、ニッサン陣営が巻き返せるか。2週間後の戦いは、緊張感の高い1戦になりそうだ。