カワサキのファクトリーチーム、Kawasaki Racing Team Suzuka 8H(ジョナサン・レイ/レオン・ハスラム/トプラク・ラズガットリオグル)が優勝し、26年ぶりのカワサキ優勝で幕を下ろした2019年の鈴鹿8時間耐久ロードレース。しかし、当日はカワサキの勝利が決まるまで紆余曲折があった。赤旗終了のタイミングなど、レースディレクションの対応は正しかったのか。国際モーターサイクリズム連盟(FIM)のポール・デュパルク氏に聞いた。
Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hは、赤旗によるレース終了から5分以内にフィニッシュラインを通過できなかったため、FIM世界耐久選手権(EWC)のレギュレーション『FIM ENDURANCE WORLD CHAMPIONSHIP AND CUP REGULATIONS』の1.22.5に基づき、決勝レースの順位認定から除外された。
そのため、暫定結果ではレイの転倒前に2番手を走行していたYAMAHA FACTORY RACING TEAM(中須賀克行/アレックス・ロウズ/マイケル・ファン・デル・マーク)が優勝と発表され、暫定表彰式も執り行われた。
その表彰式終了後、暫定結果に対しKawasaki Racing Team Suzuka 8Hが抗議。レースディレクションがこれを受理し、審議の結果、EWC競技規則の1.23.1に定められていた赤旗中断時の規則「レースリザルトについては、赤旗掲示前にラップリーダーならびにラップリーダーと同一周回のライダーがフルラップをこなした時点のものを採用する」という条項が適用されることになった。これにより暫定結果はKawasaki Racing Team Suzuka 8Hの暫定優勝に変わった。
その後、決勝翌日の7月29日に行われたレース後車検の終了をもって正式結果が発表され、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hの鈴鹿8耐優勝が確定。1993年のスコット・ラッセル/アーロン・スライト組の優勝以来26年ぶり優勝の悲願を達成した。
この一連の出来事のなかで、もっとも物議を醸しだしたのは、赤旗提示のタイミングだ。なぜなら、レイが転倒する約5分前にSuzuki Endurance Racing Team(以下、S.E.R.T.)のマシンがエンジンブローを起こしていたからだ。
レースディレクションはまず、EWC規則書の1.22.5に記載される「優勝者がコース上のフィニッシュライン(ピットレーンではない)を通過してから 5分以内にフィニッシュラインを通過しなければならない。ライダーは、マシンとともになければならない」に基づきYAMAHA FACTORY RACING TEAMの優勝と判断し、その後、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hの抗議で前述したEWC規則書の1.23.1の記載を適用したため、勝者がカワサキに変わったわけだ。