2019年09月06日 10:11 弁護士ドットコム
親が子どもにキラキラネームをつけると、後に大きな禍根を残すこともある。
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ヤフー知恵袋の2019年のキラキラネーム関連の投稿を探すと、ある女子大生からの投稿で、慎之介、英夫のように、誰もが男性だと思うような名前をつけられため、大学生になってから、思い切って改名をしたというエピソードがあった。
改名した結果、母親から「親不孝者」とののしられて、今までの費用2000万円を請求されたという。弁護士に相談して、縁を切る方向で話を進めることになったそうだ。
他にも、20歳男性が、コロコロコミックに出てきそうな名前をつけられ、15歳で改名をしたという体験談を投稿していた。小学校ではいじめられ、中学以降も、「素敵な名前だね」などと笑われることがあったという。
「名前でからかわれるのが耐えられず全然遊べなかった。遊びに誘ってもらえなかった。図書室で本を読むしかなかった」「クラスのいじめっ子から『お前の名前は読めないんだよ』とみんなの前でバカにされ、何も言い返せずその場で泣き崩れました」と振り返り、親への恨みをつづっている。
両者の投稿は、改名したことによる親からの怒りと、親への怒りという意味でタイプが異なるが、キラキラネームで生じた怨恨をめぐり、親が子に損害賠償を請求したり、子が親に損害賠償を請求したりすることは可能なのでしょうか。小野智彦弁護士に聞きました。
「親には、子どもの名前を付ける『命名権』があり、基本的にはどんな名前をつけても自由なはずです。
しかしながら、子の福祉を考えた場合に、将来的にその名前を命名されることによる『いじ め』などが発生する蓋然性が高い場合には、命名権も制限されることになります。
以前、『悪魔』という名前を付けようとして、市役所に受理されなかったケースがあり(正確には一度受理されながら、保留となった)、家事審判になったケースがありました。裁判所は『子の福祉』の観点から、『命名権の濫用』という立場を取りました。つまり、親のエゴで子の福祉を考えないような命名はしてはならないということが言えます」
キラキラネームについても、命名権の濫用になるのでしょうか。
「なかなか難しいですね。名前も時代によって流行があり、数十年前にはキラキラネームばりの名前が、今では普通にいたりします。ただ、それにしても最近のキラキラネームは、そもそも読めないし、意味も分からないものが多く、やや行き過ぎではないかと思う方も多いのではないでしょうか。
キラキラネームで悩む子どもたちは、15歳以上になれば、『正当な理由』があれば、家庭裁判所の審判により、改名することができます。キラキラネームゆえにいじめられたりするケースがやはり多いようです」
今回の投稿にあったように、子どもが改名したことを理由に、親が子に対して「親不孝者」として慰謝料や今までの養育費を請求することは可能でしょうか。
「さすがに無理でしょう。やはり、親のエゴであり、子の福祉を考えない命名権の濫用といっても過言ではないと思います。改名できたということは、『正当な理由』が裁判所で認められたということですので、改名したことについて『違法性』は全くありません」
では逆に、子が親に対して、キラキラネームをつけられたことによる精神的な損害を慰謝料として請求できるのでしょうか。
「キラキラネームの度合いにもよるでしょうが、可能な場合もあると考えます。権利の濫用は、不法行為を構成することがあるからです。親のエゴにより長年苦しんできた子どもの気持ちを考えると、慰謝料は認めてあげたいと思いますね」
【取材協力弁護士】
小野 智彦(おの・ともひこ)弁護士
浜松市出身。1999年4月、弁護士登録。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏が漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴した事件などの代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。
事務所名:大本総合法律事務所
事務所URL:http://www.ohmoto.biz/