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『あなたの番です』最終回目前企画:奈緒の黒幕説を検証 尾野幹葉の不審すぎる挙動の数々を考える

2019年09月06日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

日曜ドラマ『あなたの番です-反撃編-』(c)日本テレビ

 いよいよ9月8日に最終回が放送される日本テレビ系列日曜ドラマ『あなたの番です』。マンション内で繰り広げられる“交換殺人ゲーム”から端を発し、ゲームとは別のところで次々と起こる不審な死。ひとつ解き明かされればまた新たな謎が生まれるなど、どんでん返しの連続で視聴者を釘付けにし、一時はTwitterの世界トレンドNo.1を獲得するほどの話題沸騰ぶりを見せた。そんな本作を最大級にミステリアスな作品へと押し上げているキャラクターといえば、やはり主人公・翔太(田中圭)の隣人である尾野幹葉(奈緒)を置いて他にはいないだろう。


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 改めて劇中での彼女の不審すぎる挙動の数々を振り返ってみれば、枚挙にいとまがない。第1話で翔太と菜奈(原田知世)が引越しの挨拶に来た時、つまりは彼女の初登場シーンで、玄関のチェーンを掛けたまま会話をし、2人が夫婦であるとわかった瞬間にチェーンを開けて部屋から飛び出し、翔太にだけ語りかける。その行動の真意はその後のエピソードや第9話放送後にHuluで配信されたサイドストーリー『扉の向こう』、そして先週放送された第19話を見れば明確に読み解くことができよう。


 「なぜだかいつも好きになる人に恋人がいる」。ドラマ前半では翔太に執拗に付きまとい、連日ウエハースやプロテインなど様々なものを贈っていた尾野。偶然にも男運がないというわけではなく、根っからの略奪気質であるということが、彼女の部屋のキャビネットの中に収められている大量の“記念品”からはっきりとわかる。第12話で翔太の留守中に部屋に忍び込み、菜奈の服のボタンを持ち出したことで、彼女の中では翔太の略奪を完了したというわけだ。しかし第14話から突然翔太への態度が冷たくなり、その“ターゲット”が沙和(西野七瀬)に想いを寄せる二階堂(横浜流星)へとシフトしていく。


 ホームから突き落とされ入院していた沙和の病室に足繁く通い、二階堂にウエハースを贈るも断られ、その場で食す異様な行動。さらにはマンションの非常階段から沙和に向けてモニターを落として襲撃したり、真犯人が沙和だと吹き込みながら二階堂に睡眠薬を盛るなど、その行動は後半になってよりエスカレートしているようにも見える。“獲物”を手に入れたと判断したら途端に興味をなくし、次の“獲物”に標準を定める。極めて利己的な彼女の恋愛(と呼んでいいのかも怪しいところだが)に対するモチベーションが、殺人にまで漕ぎ着くのかどうか。そして彼女の言動の真偽こそが、本作の謎を解き明かす最大のカギとなっていることは言うまでもないだろう。


 他にも彼女にはいくつもの謎が残されている。元管理人の床島(竹中直人)からもらった表札を玄関に掛け続けているのは何故か(赤池幸子が見ていた忘年会動画で床島と寄り添う姿も映されていた)、第2話で寿司屋の広告を見ながらクレームの電話を入れているシーンの意味(重要なのは赤いペンの方なのかもしれない)、菜奈の死因である塩化カリウムについての知識を持っている理由や、内山(大内田悠平)の告白動画が尾野の部屋で撮られたかもしれないという疑惑。そして第19話で新たに浮上した、彼女が南(田中哲司)や沙和、田宮(生瀬勝久)、内山らと同じように高知県に関わりがあること。


 第19話の衝撃的なクライマックスで翔太を後ろから襲った二階堂は、ホテルの部屋にやってきた尾野に「ありがとう」とお礼を言う。翔太が扉を開けた時の尾野の表情から推測するに、その部屋に翔太がいるとは考えていなかった一方で、二階堂がいるということはわかっていたように見える。つまりは翔太と二階堂が送りつけた挑戦状とは別に、二階堂が直々に尾野を呼び出していたということだろう。沙和をはじめ、他に挑戦状をもらった面々が部屋に来なかったことも含め、これは最終回の終盤ギリギリまで犯人の正体がわからないということも充分考えられる。


 さて、この尾野を演じている奈緒といえば、ちょうど1年ほど前に放送されていたNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』で、永野芽郁演じるヒロインの地元の親友役を演じて注目を集めた女優だ。その後『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)で少し毒をにじませるような役柄を演じたとはいえ、本作での大胆な変貌ぶりには目を見張るものがある。先日放送された『しゃべくり007』(日本テレビ系)に沙和役の西野とシンイー役の金澤美穂と3人で出演した際には、特技として“女の喧嘩”を挙げ、その場で『テラスハウス』(Netflix)のワンシーンを再現。それを見ると、本作のように毒の強い役柄がいかに彼女にハマっているかが容易にわかる。


 本作でもおっとりした台詞回しと柔らかな表情から一瞬で冷ややかな表情へと切り替わったり、感情を爆発させたり、はたまた柔らかい表情のままで台詞や行動によって毒を吐き出していく。ベースとなる部分からのギャップがあまりにも大きいことによって、謎めいた恐怖感を煽り、その存在感を高めていくわけだ。今後『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)や初主演映画『ハルカの陶』、ヒロインを演じる『僕の好きな女の子』に『みをつくし料理帖』など出演作が目白押しの奈緒が、それらの作品でどういった表情を見せてくれるのか純粋に楽しみであると同時に、否が応でも本作のような怪演を期待せずにはいられない。 (文=久保田和馬)