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声優・石田彰×芸人・石田明、異色コラボ朗読劇を成功させた舞台裏は?「人見知り」についても聞いてみた

2019年09月04日 22:22  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

Wイシダ インタビュー 石田彰・石田明
“イシダアキラ”といえば誰を思い浮かべますか?

アニメファンなら、キャラクターから年齢まで変幻自在のあの人を……。
お笑い好きなら、全身真っ白衣装で軽快なしゃべくり漫才のあの人を……。

そんな、名前が同じというだけの一点突破で立ち上がった、声優・石田彰さんと芸人・石田明さんのコラボレーション企画。それが『Wイシダ朗読劇「USHIROMUKI」』です。
今年5月に東京と大阪にて公演が行われました。

同姓同名とはいえ、活動の場はまったく違う二人。どのように公演を作っていったのか、DVD/Blu-rayの発売を前に当時の想いを振り返っていただきました。
また今回は、「人見知り」だと公言するお二人にもっと仲良くなってもらおうという裏テーマも。同じ人見知りでも、深掘りしていくと微妙な違いがあらわになって、気付けばウィークポイントの自白合戦に!? はたして、二人の距離は縮まったでしょうか……?
[取材・構成=奥村ひとみ/写真= HitomiKamata]

■これは本当にNONSTYLE宛のファンレター? 石田明の憂鬱
――そもそも“イシダアキラ”と名前が一緒ということで、今回の企画以前からお互い意識はしていましたか?

明:僕はけっこう以前から意識していました。「へぇ~、イシダアキラっていうんや。ナマイキ~」と言われたことがありますよ。僕の漢字の“明”を書いたら「だったら、まあ許すけど」って言ってました。

彰:許すってどういうこと(笑)。

明:たぶんその人は、”イシダアキラ”といえば彰さんのほうだったんでしょうね。けど僕からしたら「イシダアキラの何が生意気やねん!」と(笑)。
それから、僕の相方(井上裕介)の名字が“井上”だからなのか、NONSTYLE宛のファンレターが「石田彰、井上和彦様」と間違えて来たことがあります(笑)。
(※井上和彦……『NARUTO』はたけカカシ役、『夏目友人帳』ニャンコ先生役など。石田彰とは『夏目友人帳』をはじめ共演作も多い)

彰:あはは(笑)。

明:「これは本当に僕らに書いてんのか?」っていう、わけ分からん状態ですよね(笑)。でも、この企画の話が来たときは嬉しかったです。即答で「やる、やる!」って言いましたからね。


――彰さんはお笑いもお好きでご覧になるそうですが、TVで見ていた明さんの印象はいかがでした?

彰:ああ、この人はものすごい努力家なんだなって。

明:恥ずかしい!

――努力家と思われたのはなぜ?

彰:鍛錬のためにずーっと路上で漫才をやっていたって単純にすごいじゃないですか。そういう人が賞を取るのは当たり前というか、そうじゃなきゃおかしいよなって思うし。

だからM-1グランプリの優勝(2008年)は、すごく納得の結果でした。それと優勝されたときに名前をいじってもらえたのが、内心ちょっと嬉しかったんです。僕は人生で同姓同名が初めてだったから、「“イシダアキラ”ってありふれた名前なんだ!」と驚きました。

――タイトルの『USHIROMUKI』はお二人の共通点から名付けられたそうですね。どんな流れで決まったんですか?

彰:たしか稽古に入る前、「自分のことをどう思いますか?」と聞かれたんです。常々思うのですが、僕は怖がりなんですよ。何か前に進まなきゃいけないときは躊躇するし、新しいことはなるべくしたくない。だから自分のことを一言で言うなら「後ろ向きだな」ってポロっと言ったら、石田さんが偶然にも「自分もそうです」って。
ただ、公演のタイトルが「こんなにネガティブでもいいのか?」と正直思いましたけどね(笑)。


明:最近やたらみんな「ポジティブ」という言葉を使いたがりますけど、僕はあんまり好きじゃなくて。ポジティブって言っている人の周りは、なんかすごく頑張ってはるなぁと思うことがあるんです。無理して合わせている人が、どこの現場でも少なからずいるんじゃないかな、と。

僕はむしろ、石橋を叩きすぎる慎重派だし、割れた石橋の上で必死に道を探すくらいのことをやってきた人間ですから、『USHIROMUKI』っていうタイトルは、らしいなぁとすごく感じたんですよね。

――お二人の共通点といえば、「自分は人見知りだ」といろいろなところでお話されています。稽古などで接してみて「この人、人見知りだな」と感じる瞬間はありましたか?

彰:「目が合わない」っていう自覚はあります……(笑)。

明:なかなか合わないですよね(笑)。打ち上げしてても、チラッと見るくらいで。

彰:舞台上で1回だけしっかりと目を合わせるシーンがあるんですが、そこがすごくモヤモヤするんですよ。何度もお会いして稽古も積んでるし、ストーリー上では気持ちが晴れやかな場面なんだけど、しかも「ここは目を合わせたほうが絶対にいい」って自発的にやっているにも関わらず、でも……! っていう(笑)。

明:たぶん皆さんから見たら5秒もないようなシーンなんですけど、僕らにとっては永遠に感じてますよね。けどお互い人見知りながらも一歩一歩、着々と進んでいっていますよ! 最終的には打ち上げで同じ鍋を一緒につつくようになりました!

――でも目は合わないんですね(笑)。
→次のページ:どんなタイプの後ろ向き? 二人の自己分析を聞いてみた!

■どんなタイプの後ろ向き? 二人の自己分析を聞いてみた!
――後ろ向きとひと言に言っても、様々なタイプがあると思います。お二人はどんなタイプの後ろ向きなのか、自己分析を教えてもらえますか?

明:僕の場合、立ち飲み屋なんかで「今後絶対会わないだろう」という人とは、その場ですぐにワーッとしゃべれるんですよ。
けれど、今後の人生においても関わってくるであろう人たちと話すとなると、めちゃくちゃ慎重になる。
だから芸人さんとしゃべるのが一番緊張するし、人見知りします。常に「試されてる!」って思っちゃう。もともとの自分の点数が高くないから、なるべく減点されずに済むようにってやると、あまりしゃべれなくなる。学生時代からそうですね。

彰:僕は……、最近はひょっとすると、人見知りとはちょっと違うジャンルなのかもしれない、と思っていて。石田さんのように「人生で関わる人たちには減点されないように慎重に接しよう」ではなく、僕はそもそも、減点されないように振る舞うのが大変だから最初からシャットアウトしちゃうんです。


明:シャットアウト(笑)。

彰:最近よく思うのですが、僕は人見知りではなくて、例えばゴミ屋敷に住んでる偏屈なオヤジというか……(笑)。どう考えても周りに迷惑かけてるし、人から「片づけなさいよ」と言われると「いや、これは全部必要なものなんだ!」と言い張っているのと同じというか。
きっと言い張らざるを得ない状況に、自分で自分を追い込んでいるんです。ちょうどいいタイミングで人に甘えてこなかったから、逆に今さらできなくなってしまって……。

明:過去の蓄積がどんどん重なって、もう降りるに降りれない状況に(笑)。

彰:それこそ、いわゆるファン目線で見てくれている人たちはいいんですよ。たとえばペットでワンちゃんを飼って「可愛い!」って言っている人だって、野犬に噛まれたら逃げるでしょう? そこを超えてくる人っていうのは、本当にムツゴロウさんみたいな特殊な人だけですよ。
自分のことを愛玩動物にたとえるのは、すっごく抵抗がありますけど(苦笑)、僕をペットとしてしか見なくていい人には、楽しんでもらえていると思うんです。
ただそこから一歩入ってこようとすると実態は野犬ですから、それを可愛がってやろうなんていう酔狂な人は少ないですよ。……このインタビュー、僕にとってデメリットしかない気がしてきた(笑)。

明:彰さん、誰かに言われてるわけじゃなくて全部、自白ですからね(笑)。


――でもだからこそ、そんなおふたりがタッグを組み、公演を成功に導いたことに意義があると思います! 実際、手ごたえはいかがでしたか?

明:公演って、やっぱり生き物ですよね、ホントに。

彰:うん、お客さんに乗せてもらうことも本当に大きいし。

明:ステージに立ってやっと分かったことも多かったです。「このセリフって、音楽のこのタイミングで言ったらめちゃくちゃ気持ちええやん!」と本番中に分かって、そしたらすごくやりやすくなって。
公演は東京で始まって大阪で終わったんですけど、僕は最初と最後で全然違いました。気付いて、そこから順応していって、最終的には調子に乗るまでいってるんで(笑)。


彰:あはは(笑)。

明:最後のほうは自分から音にセリフを合わせにいっちゃう、みたいな小ワザまでやるようになったりして、我ながら姑息やなぁと。

彰:いや、それを姑息と言っちゃダメですよ。お客さんとして見たとき、音楽とシンクロする気持ち良さや、感情の昂ぶりの振幅はとても大事。合わせられるなら合わせにいくのが正解だと思いますよ。

明:僕は漫才しかしてこなかったから、未知の領域ですごく面白かった。お芝居をやらせてもらったときに「音に合わせてやってくれ」みたいなこともあったんですけど、全31回公演中2回しか成功しなかったし(笑)。
そういうのをキメられないタイプだったんですが、今回はうまいこと、調子に乗るまでいけた気がします。

公演の模様
――彰さんは、何度も朗読劇を経験されていますが、今回の明さんの朗読はどうでしたか?

彰:石田さんのセリフが、「ああ、受けやすい!」って感じてました。さっき石田さんには、音楽に合わせられるなら合わせたほうがいいと言いましたけど、僕自身は周りの音がなかなか耳に入ってこないまま本番を迎えてしまって。でも照明や音楽や映像が入って、その一体感を石田さんが感じて僕にぶつけてくれるのがヒシヒシと伝わってきました。

明:嬉しいです。けど彰さんの朗読は本当にスゴ過ぎました。一人で読んでいたときは「このセリフ言いにくいなぁ」と思っていたものが、彰さんがいてくれると、セリフがめちゃくちゃ言いやすいんですよ。僕の次の気持ちを引き出してくれる感覚がすごくて、ずっと勉強してしまいましたね。
公演の後半になってくるとだんだん客観的にも見られるようになってきて、「そうか、ここで気持ちを上げるためにこっちを落としてはんのか!」みたいなことも分かって。しかも彰さんはそれが毎度違うので、すごく楽しかったですね。


――ちなみに、明さんには井上さんという相方がいますが、彰さんはパートナーとしていかがでしたか?

彰:漫才と朗読では、やってることが全然違うと思いますよ。目的も違うし。

明:彰さんも井上も、音域は広くてそこは似ているんだけど、井上はセリフを音だけで言っちゃう感じなんです。それで成立するんだけど、それ以上の気持ちには踏み込まない。だから、しれっとツッコミができる。
でも、石田さんは音の幅も広いうえに、グッと力を入れたりと強弱やバリエーションも豊富で、「これができたらいろんなことやれるやろうなぁ!」って、そんなふうに見てました。

彰:ありがとうございます。でも、すごく居心地悪いです(笑)。
→次のページ:次回は朗読漫才企画!? 朗読と漫才の共通点とは


■次回は朗読漫才企画!? 朗読と漫才の共通点とは
――企画時、今回はおふたりで「朗読」と決められたそうですが、今後何かやる機会があればどんなことをやりたいですか?

明:何がしたいです?

彰:公演にあったセリフじゃないですけど、できることが限られているかなと。舞台もできないし、ましてや漫才的なことなんて絶対に無理だし。朗読劇くらいしかできないですよ。

明:あははは。じゃあ、“朗読漫才”なんてどうですか?

彰:朗読で漫才って成立しますか!?

明:僕もやったことないんで分からないです(笑)。けど、今回だって会話のやり取りだったじゃないですか。朗読劇と言ってしまうにはもったいない気がしたんですよ。手に持ってる台本を置いてこのまま動いたらもうお芝居やん、って。

――明さんから言わせると、朗読と漫才の違いと共通点とは何なのでしょう?

明:うーん……、今回の『USHIROMUKI』に限っては、すごく似ていますけどね。言い分がぶつかり合って目的に向かっていく点は同じだから、それがお笑いに寄っているかどうかの違いだけっていう。石田さんのテンションがバーッと振り切れるまで上がっていったらこっちは下がるしかないのも漫才と一緒やし。

なので、僕は言い合いのシーンは特に楽しかったです。エンジンかかりすぎて、石田さんのセリフを食っちゃうこともよくありましたね。


――彰さんは、普段の朗読よりも動きを多めに入れて演じられたんですよね。それにはどういった意図が?

彰:普段の朗読では、頭の中で映像のシミュレーションはしますが、動きは軽く目線を外すくらいで仕草をことさら分かりやすく表現することは抑えています。マイクに合わせないといけないし、舞台としての統一感も必要だからです。
役柄の影響もありますが、今回は自分の気分を乗せるためにわざと大げさにバタバタしてみました。演出さんから「抑えて」って言われないのをいいことに(笑)。言われるまではやっちゃおうとした結果、そのままになりました。

明:僕は朗読劇そのものが未経験で「どうやったらええんやろ?」って感じだったんですけど、初日が終わった後に撮影の方から「明さんは台本を読み過ぎです、もっと前を見てもらわないと映像が撮れないです! 彰さんを見習ってください!」と言われちゃって。
だから次から彰さんのマネをしてみたんですが……ボロボロになりました(苦笑)。

彰:そりゃあそうですよ。僕も過去に苦い経験があります。稽古では台本を見ながら演じていたのに、本番でお客さんに乗せられてつい興が乗ってしまい、台本から目線を外して大失敗したことがありますから。

明:そうなんですか!? 石田さんでもそんなこともあったんですか。

彰:そりゃあ、急にやったらなりますって(笑)。

明:たしかに、本番前に「今日は彰さんのマネしてやってみます」って相談したら、「絶対にやらないほうがいいですよ!」とおっしゃっていましたよね。稽古でやってないことやったら絶対ダメって言ってもらったのに、「いや、やる!」ってやったらほんまにボロッボロになって。「すいません!」って、後で平謝りでしたよ(笑)。

公演の模様
――そういうエピソードを知ったうえでDVDを見ると面白そうですね。見返すときに「ここを見てほしい」といった注目ポイントを教えてください。

彰:観客の皆さんがどこまで深読みされるのかは分からないですが、何度も繰り返し見ると「ここ焦ってるな」とかが見えてくるんじゃないかな、と……。見えちゃうことはしょうがないので、だったらそういう粗を探すのもひとつの楽しみにしてもらうのもいいかなぁって思います。2、3回くらいにとどめてくれれば、「いいものを見た」で終われるかな(笑)。

明:ちょうどそれくらいでね(笑)。3回以上見る方は、映像は見なくて声だけで楽しんでもらえたら。

彰:あはははは!

明:そしたら皆さんそこまで気にならないと思います! 映像を見るのは3回まで!

◆Wイシダ朗読劇「USHIROMUKI」パッケージ情報◆


<収録内容>
5月12日東京公演を収録

<特別収録>
舞台告知インタビュー(音声コメントノーカットバージョン)
5月12日のカーテンコールをマチネ・ソワレともに収録

<初回プレス盤限定特典>
縮刷版台本+特製スリーブケース

■本体価格:5,093円(税別)