2019年09月04日 18:52 弁護士ドットコム
技能実習の制度趣旨にそぐわない除染作業などをさせられたとして、元技能実習生のベトナム人3人が9月3日、受け入れ先だった建設会社(福島県郡山市)を相手取り、計約1230万円の損害賠償をもとめて、福島地裁郡山支部に提訴した。
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原告代理人と支援団体が9月4日、東京・霞が関の厚生労働記者クラブで会見を開いて、明らかにした。代理人によると、技能実習生の除染作業をめぐる訴訟は今回が初めて。
訴状などによると、原告のベトナム人3人は2015年7月、技能実習生として来日して、同8月から郡山市の建設会社で働きはじめた。3人は、技能実習計画や契約で、鉄筋施工や型枠施工の技能実習をすることになっていた。
ところが、3人は2016年3月から2018年3月にかけて、郡山市などの住宅地や森林で、福島第1原発にともなう除染作業や、当時避難指示区域内だった浪江町で、法令上の安全教育もないまま、下水配管工事の業務をさせられたという。
しかも、危険な作業であることを教えてもらえておらず、健康診断による被ばく線量測定の結果なども渡されていなかったという。会社側に謝罪や賠償をもとめたが、「危険な作業でなく、グレーゾーンだった」と応じてもらえなかったため、今回の提訴に踏み切った。
原告の1人、グェン・バ・コンさんは、代理人を通じて「いろいろちがうことをさせられました。とくに除染をたくさんやらされました。誰もいない立ち入り禁止の場所(なみえ)でも働きました。危険な仕事だとは知らされませんでした。将来、とても健康がしんぱいです。会社と交渉しましたが、会社は謝罪もしないし、補償もしません」とコメントした。
外国人技能実習生権利ネットワークの旗手明さんは会見で「技能実習の制度のからくりが一番ひどいかたちで暴露された。本来、技能移転という国際貢献のための制度のはずだ。原発のないベトナムで、除染作業はまったく必要な技能実習でない。技能実習が、日本サイドの必要に応じて、外国の労働者を都合よく使うものになっている」と指摘していた。
技能実習生による除染作業をめぐり、法務省は2018年10月、今回被告となった建設会社に対して、実習生の受け入れを3年間停止する処分を下している。