2019年09月04日 10:31 弁護士ドットコム
「毎日、お母さんにスマホの中身を見られ、GPSをつけられています。お母さんがとても怖いです」。インターネットのQ&Aサイトに、高校2年生の女性が相談を寄せている。
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投稿者は、中学2年生のころにスマホを買ってもらった。そのころから、母親は、毎日欠かさずに投稿者のスマホの中身(閲覧履歴やLINE、メールのやりとりなど)をチェックしているという。
さらに、投稿者が高校に進学後、母親は投稿者のスマホにGPSアプリをダウンロードし、位置情報を把握するようになったという。母親がLINEの会話内容を知っていることもあり、投稿者は恐怖を感じているようだ。
母親にやめてほしいと伝えると、母親は怒り、泣いてしまうという。「このままずっと何もかも見られているのが嫌な気持ちと、お母さんに怒られたくない気持ちと、泣かせたくない気持ちで頭がぐちゃぐちゃです」と投稿者は辛い気持ちを打ち明けている。
この投稿に対して、「子どものプライバシーを侵害するなんて」という母親に対する怒りの声も書き込まれている。
このように、親が子どものスマホの中身をチェックしたり、GPSで居場所を把握したりすることは「プライバシー権の侵害」にあたるのだろうか。浮田美穂弁護士に聞いた。
ーー親が子どものスマホの中身をチェックすることに問題はないのだろうか
「子どもは親の『親権』に服しなければなりません。親権とは子どもを監護・教育する権利ですが、それは親の義務でもあります。
いかがわしいサイトを見ていないか、あるいは何かの被害に遭っていないかを確認するためにスマホの中身をチェックすることは、親権に基づく親の権利であり、義務でもあります」
ーー「親権」を理由に、高校2年生の子どもに対して、GPSで居場所を確認したり、スマホの中身をチェックしたりしてもよいのだろうか
「『親権』があるからといって、何をしても良いというわけではありません。子どもの成長にとって、必要なことが適切になされるべきです。
親権の行使が不適当であり、子の利益を害するときは子ども自身や親族等の申立てにより親権が停止されることもあります。
GPSやスマホの中身のチェックについては、子どもの年齢やそれをする必要性(たとえば、子どもが不良交友をしているかどうかなど)に応じて、何をどこまですべきか、あるいはしてよいかが変わってくると思います。
高校2年生の子どものLINEの内容を全部閲覧する必要があるかどうかは疑問です」
ーーGPSで子どもの位置情報を把握することは、「プライバシー権の侵害」にあたるのだろうか
「小学生だと心配なので、GPSを持たせる方も多いですよね。中学生に持たせるのも同様です。
高校生となると、どうなのかなという年頃ですが、子どもがどこに行っているか心配ということで持たせるのは、プライバシー権の侵害とまではいえないと思います」
ーーでは、インターネットのサイトで何を見ているか、「閲覧履歴」をチェックしたり、「メールやLINE」をチェックしたりすることは、どうだろうか
「『閲覧履歴のチェック』と『メールやLINEのチェック』は、プライバシーの侵害度合いが違ってくると思います。
有害サイトにアクセスしていないかを確認するために『閲覧履歴のチェック』をしても、プライバシー権の侵害にあたらないでしょう。
『メールやLINEのチェック』も、中学生であれば、何か不適切なメールをしていないかチェックしてもプライバシーの侵害とはいえないと思います。しかし、高校2年生となると、そこまでしていいのかという問題はあると思います」
ーー親としては、子どもが有害サイトにアクセスしたり、犯罪に巻き込まれたりしないかという不安もあるようだ。子どもを守るための対策として、履歴のチェック以外にできることはあるのだろうか
「最初にするべきは、履歴チェックよりも、有害サイトにアクセスできないようにする『フィルタリング』でしょう。
『青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律』(2009年4月施行)でも、18歳未満の子どもが使うスマホ等の契約をする場合には、保護者はその旨を契約先に告げるよう定められています。
また、契約先は保護者から『フィルタリングサービスを利用しない』という申し出がない限り、フィルタリングサービスを付けることも義務付けられました。
ある程度は、このサービスで子どもを守れると思います」
ーー今回のケースでは、投稿者は高校2年生だ。もし、子どもが成人であった場合は、どうだろうか
「この法律は18歳で区切られていますので、18歳が1つの目安となりますが、やはり親子間の信頼関係が大事ですから、よく話し合って決めたほうがいいでしょう。
しかし、20歳を過ぎれば子は親の親権に服しませんので、親がスマホの中身をチェックすることはプライバシー権の侵害となりかねません。そもそも、子どもが自分で携帯電話の契約をすればよい年齢かと思います」
【取材協力弁護士】
浮田 美穂(うきた・みほ)弁護士
2002年、弁護士登録。2010年度金沢弁護士会副会長。著書に 「ママ弁護士の子どもを守る相談室」(2013年、一万年堂出版)。
事務所名:弁護士法人兼六法律事務所
事務所URL:http://kenroku.net/