2019年09月03日 11:02 弁護士ドットコム
「離婚をするなら、どんな手を使ってでもあなたの人生を滅茶苦茶にする」。このような言葉を姑に言われたという女性が弁護士ドットコムに相談を寄せている。
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相談者は夫との離婚を考えているという。しかし、離婚した後、姑に嫌がらせをされるのではないかと恐怖を感じているようだ。また、姑の発言について「迷惑なのでやめてほしい。姑を罪に問うことはできますか」と聞いている。
姑になんらかの法的制裁がくだされる可能性はあるのだろうか。
「あなたの人生を滅茶苦茶にする」と姑が発言したことは「脅迫罪」にあたるのだろうか。
脅迫罪は「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合、つまり、危害を加える意思を相手に知らせた場合に成立する(刑法222条1項)。脅迫とは「一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知」のことをいう。
実際に危害を加えようと思っていなくとも、害悪を加える旨を告知するということについて認識があれば、脅迫罪の故意は認められることになる。
問題は、「あなたの人生を滅茶苦茶にする」という姑の言葉が「一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知」といえるかどうかだ。人を「畏怖させる」程度には至っていないと判断されれば、脅迫罪は成立しないことになる。
「犯罪」にあたらなければ、姑を罪に問うことはできない。しかし、姑の言動によって精神的損害を受けたことを証明できれば、相談者は姑に慰謝料を請求することができる。
ただし、慰謝料が認められるには、姑の行為が違法な「不法行為」であることが前提となる。つまり、相談者自身が精神的な苦痛を感じているだけでは慰謝料は認められず、姑の行為が「不法行為」であると認められなければならない。
「不法行為」であると認められるためには、姑の行為が客観的にみて限度をこえている必要がある。もし、暴力があったり、追い出したりするなどの常識を逸脱した行為があれば、「不法行為」と認められる可能性はあるだろう。
一般的に、姑に対する慰謝料請求は難しいといわれている。しかし、過去の離婚や内縁の解消に伴う慰謝料請求の裁判で、夫や内縁の夫の言動のみならず、姑の言動も「不法行為」にあたり、夫や内縁の夫と姑による共同不法行為があったとして、姑に対しても慰謝料の支払いを認めたケースもある。
【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com