WEC世界耐久選手権は2019/2020年シーズン、最高峰カテゴリーであるLMP1クラスに導入する“サクセス・ハンディキャップ”のシステム概要を明らかにした。
LMP1車両間の技術的均衡を図るEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー)にプラスされるかたちで、今季から導入されることが決まったこのシステムは、獲得ポイント数の差に応じてランキング最下位のクルマを除く全車にハンデを負わせるもの。その主たる目的は、現状“トヨタ1強”となっている最高峰クラスに再び競争を生み出すことだ。
トヨタのTS050ハイブリッドとレベリオン・レーシングが走らせるレベリオンR13・ギブソン、チームLNTのジネッタG60-LT-P1・AERは、今後獲得した選手権ポイントを基に、以下に従ってハンデを受けることになる。
まず第一のポイントは、ハンディキャップシステムの基本値が1kmあたり0.008秒遅くするものであること。これに開催サーキットのコース全長ならびに、ポイント差などの補正係数をかけ合わせて、当該ラウンドのハンデ量が決定される。なお、7月末に行われたWECプロローグの時点では、この基本値が0.006秒/kmとされていた。
つまり、開幕戦シルバーストンで優勝した車両は、1位から6位までの獲得ポイント差が13点であることを考慮すると、次戦の富士スピードウェイでは1周あたり0.614秒遅くなると試算できる。
さらに、LMP1最後尾のクルマがフィニッシュできず、ポイントを獲得できなかった場合にはその差が25ポイントとなるため、開幕戦ウイナーは富士でラップあたり1.18秒ロスすることになる。
このハンディキャップはトヨタTS050ハイブリッド用に設定された6つのパラメータと、ノンハイブリッド車を走らせるプライベーター用の4つのパラメーターを調整することによって実現が図られる。
共通するパラメーターは、1)車両最低重量、2)最大燃料流量、3)最大搭載燃料量、4)給油リストリクター径の4項目。この他、ハイブリッド車のトヨタTS050ハイブリッドでは、ラップあたりの最大使用エネルギー量とハイブリッドエネルギーの最大使用エネルギーが管理され、それぞれメガジュール(MJ)で測定される。
なお、ハンディキャップが大きくなった場合であっても最低重量はノンハイブリッド車で870kg、ハイブリッド車ではシルバーストンで適用された932kgを超過することはないという。また、ポイント差が40ポイントを超えた場合、それ以上のハンディキャップを負うことはない。
レースごとにスポット参戦する車両について、WECは「(ハイブリッド、ノンハイブリッド+自然吸気エンジン、ノンハイブリッド+ターボエンジンという枠のなかで)同じ技術を使用して、もっとも重いペナルティを受けている車両と同等のハンデを適用する」とした。
10月4~6日に開催されるWEC第2戦富士スピードウェイ6時間レースで初適用されるLMP1のサクセス・ハンディキャップ。シリーズの“成功”が掛かるこの取り組みは、来年6月に行われるル・マン24時間レースを除くすべてのレースで実行される予定だ。