9月1日にインディカー・シリーズ第16戦ポートランドの決勝レースが開催。予選2番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が勝利し、今シーズン2勝目を挙げた。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、オープニングラップでのマルチクラッシュに巻き込まれ、マシン修復のため2周遅れとなり、15位でレースを終えた。
ポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が予選13番手、ランキング2位のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は予選18番手、ランキング3位のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は予選7番手と、チャンピオンシップ・コンテンダーたちが予選でほぼ全滅。ポイント4番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)だけがファイアストン・ファストシックスに残り、予選3番手となった。
一気にポイント差を詰める大きなチャンスを得たディクソンは、スタートで予選2番手だったウィル・パワーをパスし、ポールシッターのコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)も最初のスティントで抜いてトップに躍り出た。
シーズン2勝目に向けて快調に周回、3秒以上のリードを築き上げたディクソンだったが、突然の電気系トラブルで彼の6回目のタイトルという夢は潰えた。大事なレースでのメカニカルトラブルは名門チームのチップ・ガナッシ・レーシングらしくない。
ディクソンがピットに消えて、トップはパワーの元へと巡ってきた。このチャンスをパワーは手放さなかった。2度目のタイトル獲得はもう可能性が薄くなっていたが、彼は“シーズンの残りレースすべてで優勝”、あるいは“できる限り優勝回数を伸ばす”という目標に向かって邁進する決意していた。
そして、見事に今シースん2勝目、キャリア37勝目を挙げた。キャリア優勝回数はセバスチャン・ブルデーと並んでインディカー歴代6位タイになった。
ディクソンの後退後、チームメイトでルーキーのフェリックス・ローゼンクヴィストが奮闘。2番手に浮上してパワーを追い回した時も短時間だがあったが、結局パワーを抜くことは叶わず、逆に差を広げられてしまった。
それでもローゼンクヴィストは自己ベストに並ぶ2回目の2位フィニッシュを達成し、ルーキーポイントの座をサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)から奪い返した。しかも、彼のポイント・スタンディングはふたつアップの8番手となった。
パワーは優勝を喜び、「厳しいレースだった。ローゼンクヴィストからのプレッシャーもあった。終盤に少しずつ差を広げることができ、“いいぞ”と思っていたらフルコースコーションになった。それでも、勝つことに強く集中し続けた」と話した。
今年もポートランドはスタート直後に多重クラッシュが発生した。イン側に殺到したマシン群の中でグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)がザック・ビーチ(アンドレッティ・オートスポート)に後方からヒット。
スピンしたビーチのマシンがジェイムズ・ヒンチクリフとコナー・デイリー(ともにアロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)を巻き込み、スペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)、 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)らも被害を被った。
このアクシデントの恩恵を、予選順位の悪かったチャンピオンシップ・コンテンダーたちが受けることになった。ニューガーデンは最終的に8つもポジションを上げた5位でゴール。パジェノーは一旦最後尾まで落ちながらも、11ポジションもゲインしての7位となった。ロッシは7番手スタートから3位で表彰台に上がった。
■チャンピオン争いは三つ巴で最終戦へ
最終戦に向け、ニューガーデンのポイントリードは41点となった。2番手につけるのはパジェノーからロッシに変わっている。パジェノーのニューガーデンとのポイント差は42点と、ロッシとは1点差だ。
最終戦は3週間後、カリフォルニア州モントレーで開始される。ウェザーテック・レースウェイ・ラグナセカと名前を新たにしたコースで、インディカー・シリーズは2003年以来(当時のレースはチャンプカー・シリーズの1戦として開催)となるレースを行う。
そこでのレースはダブルポイントのため、ロッシとパジェノー、両方にニューガーデンを逆転してチャンピオンとなる可能性がある。ロッシはキャリア初、チーム・ペンスキーのふたりは共に2回目の王座を目指しての戦いを繰り広げる。
ニューガーデンは、「13番手スタートだったから、今回ぐらいのフィニッシュ(5位)を目指していた。スタート直後のターン1は危なかった。13番手ぐらいのポジションがいちばんリスクが大きい。あそこを幸運にも切り抜けられた」
「そこからはゲインあるのみだった。最終戦がダブルポイントじゃなかったらいいのに……。しかし、現実はダブルポイント。それは開幕前からわかっていること。最善を尽くすまで」
「ロッシかパジェノーが優勝した場合、僕は6位か7位にならないとチャンピオンになれない。その順位でゴールするのだって簡単じゃない。しかし、それを達成すべく全力で戦う」と意気込みを語った。
ロッシは、「自分がもっと多くのポイントを獲得したかった……のではなく、ポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデンがもっと少ないポイントしか獲得できないことを望んでいた」と話した。
ニューガーデンの予選順位は13番手と悪かったからだ。しかし、彼はスタート直後の混乱を潜り抜けた。
「7番手スタートから3位フィニッシュで表彰台。タイトルを争うライバル全員より前でゴールした。チームは頑張ってくれていた。最終戦ラグナセカでの週末は緊張感に溢れたものになる。そして、そういう戦いを自分はとても楽しみにしている」とロッシ。
パジェノーは、「ディクソンは以前に45点差を逆転してチャンピオンになった。私たちはそれより少ないポイント差で最終戦を迎える。ラグナセカにタイトルの可能性を持っていけるというのはエキサイティングだ。全力を出し切るよ」
「今日は18番手スタートで7位フィニッシュ。チャンピオン争いに踏みとどまることを目標にして、それを成し遂げた。可能性を残して最終戦を迎えられる。それが非常に大きい。いちばん大事なことだ。何が起こるかはわからないんだから」と話していた。
琢磨は15位でゴールし、「金曜のプラクティス、ウォームアップでマシンが良かったので、セッティングはそれとほぼ同じで、昨年と同じくウイングを寝かせるなどしていました」
「スタート直後のアクシデントに巻き込まれてしまったのは、本当に残念。コナー・デイリーとぶつかったようだった。避け切れたと思ったのに、あっちが動いてきていたみたいで……。アレでサイドポッドに大きなダメージを受け、トップスピードが大きく下がっていた」
「サスペンションのトウリンクも壊れていたので、その修理で2周遅れに陥っちゃいましたね。ここはコースが短いので、イエローでもすぐに1周してしまう。クルーたちは全力で修理をしてくれたけれど、周回遅れになった」
「ロードコースでは1周でも周回遅れの挽回は難しい。悔しいレースになりました。無事に1周目のターン1をクリアできていたら、シモン・パジェノーあたり……だから7位ぐらいにはなれていたんじゃないかな?」と琢磨は話した。