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DA PUMP、堂本剛=ENDRECHERIらの音楽支えるキーボーディスト Gakushiの存在感

2019年09月02日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『LIVE DA PUMP 2018 THANX!!!!!!! at 東京国際フォーラム ホールA』(DVD2枚組)

 昨年から今年にかけて行われたDA PUMPのツアー『LIVE DA PUMP 2018 THANX!!!!!!!』『LIVE DA PUMP 2019 THANX!!!!!!! FINAL』。「U.S.A」をきっかけにした再ブレイク以降のDA PUMPの集大成とも言えるこのライブで、“ただ一人のバックバンド”として彼らのパフォーマンスを支えていたのがGakushiだ。6台のキーボード(MODX7、MODX6、MONTAGE7×2、Nord Lead A1、Nord Electro5D61)、ドラムパッド、シンバルを駆使して全楽曲のサウンドを構築する彼のプレイ(ライブ中には約5分におよぶ即興演奏も!)はまさに圧巻。ステージ上でISSAがGakushiへの感謝を率直に述べていたことからもわかるように、彼の存在は現在のDA PUMPの音楽的な要だと言っても過言ではない。


(関連:DA PUMP、“U.S.A.ドリーム”後も止まらない勢い DPCに感謝伝えた16年ぶり武道館公演


 15歳の頃にキーボードを演奏しはじめ、18歳で上京。作曲家の住友紀人氏(サックス、ウインドシンセサイザー奏者/映画『ホワイトアウト』『沈まぬ太陽』『テルマエ・ロマエ』『ドラゴンボール』シリーズなど、劇伴作家としても知られる)に師事した後、23歳からプロのキーボーディスとして活動しはじめたGakushi。これまでに関わったアーティストは、m.c.A・T、DOUBLE、AI、BoA、May J.、Crystal Kay、加藤ミリヤ、DA PUMP、三浦大知、HOME MADE 家族、GAKU-MC、Skoop On Somebody、東方神起、JYJ、佐藤タイジ、RIRIなど多数。ファンク、ソウル、R&B、ヒップホップなどをルーツに持ち、アーティストの個性とスタイルを際立たせる彼の演奏は、多くのアーティストから絶大な信頼を得ている。2010年代に入ってからネオソウル、ファンクリバイバル、オルタナR&Bが世界的に大きな潮流となり、日本の音楽シーンにも大きな影響を与えているのは周知の通り。ブラックミュージックの素養はポップスに関わるうえで必要不可欠とも言えるが、Gakushiはまちがいなく、その条件を備えたプレイヤー/クリエイターの一人だ。


 久保田利伸の『L.O.K 』ツアー(2015年)、三浦大知の『FEVER』ツアー(2015年)、AIの『和と洋』ツアー(2017年)、加藤ミリヤの『BIRTHDAY BASH LIVE』( 2018年)、EXO-CBX の『MAGICAL CIRCUS』ツアー(2018年)など、ライブのサポートミュージシャンとしても存在感を発揮しているGakushi。特に久保田利伸ーー言うまでもなく、日本のポップスにブラックミュージックの要素を持ち込んだ最大の功労者だーーのツアーに参加したことは、Gakushiのキャリアにとっても大きな出来事だったはずだ。また、アレンジ能力、演奏力だけではなく、ステージ映えするパフォーマンスも多くのビッグアーティストから求められる理由だろう(前述したDA PUMPの“一人バックバンド”は、彼の音楽性とステージングが共存した、もっとも顕著な例だ)。


 堂本剛(ENDRECHERI)もまた、Gakushiに信頼を寄せるアーティストだ。Gakushiは昨年の『ENDRECHERI TSUYOSHI DOMOTO LIVE TOUR 2018』で初めて堂本のツアーに参加。オーセンティックなファンク、ソウルを軸にした彼の音楽性とGakushiのプレイスタイルはまさに相性抜群で、最新ツアー『ENDRECHERI TSUYOSHI DOMOTO』、『SUMMER SONIC 2019』(大阪)でも、濃密なファンクネスをたたえたバンドサウンドの中核を担っていた。また、アルバム『HYBRID FUNK』収録の「YOUR MOTHER SHIP」「舌(ベロ)VENOM」、シングル曲「one more purple funk…-硬命 katana-」、最新アルバム『NARALIEN』収録の「FUNK TRON」などのアレンジに関わるなど、いまや堂本の音楽制作に欠かせない存在となっている。Gakushiとはプリプロの段階から共同作業することも多いらしく、雑談や「こんなリズム良くない?」という何気ない会話が楽曲につながることも。Gakushiの自由な発想、音楽的な遊び心は、堂本の音楽に大きな刺激を与えているようだ。


 また、Gakushiのアレンジャーとしての仕事にも注目してほしい。まずは加藤ミリヤの「少年少女」。多感な時期の少年少女に対するメッセージを込めた楽曲なのだが、ギターと歌を中心としたフォーキーな佇まいのなかにソウルミュージック、ゴスペルの要素を取り入れ、豊かなグルーヴをたたえたサウンドに仕上げている。歌を中心に据えながら、ルーツミュージックのテイストを加えるアレンジは、Gakushiの真骨頂と言えるだろう。


 Charaの最新アルバム『Baby Bump』に収録された「Pink Cadillac」も、彼のサウンドプロデュースが光る楽曲だ。このコラボレーションのきっかけは、お互いのルーツであるファンクの話で盛り上がったことがきっかけ(参照)。アメリカンカルチャー、ピンクのキャデラックをモチーフにしたこの曲の軸になっているのも、P-FUNKを想起させる生々しいファンクサウンドだ。トーキング・モジュレーター、ウィスパーボイス、ラップなどを交えたボーカルのアレンジを含め、さまざまなアイデアを集約したアレンジとなっている。


 自身がリーダーをつとめるインストバンドGakushi Trio(メンバーは鍵盤のGakushiのほか、ドラマーの岸田容男、ベーシストの森多聞)では、ファンク、ソウル、ジャズなどを自由に行き来する音楽性を追求。プレイヤーとしての魅力を存分にアピールしている。ブラックミュージックを基盤に幅広いフィールドで活躍を続けるGakushiの存在は、今後も多くのミュージシャンから求められることになりそうだ。(森朋之)